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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

無音で音楽の授業という奇妙な光景…コロナ禍での教育現場の混乱

文=篠崎靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師
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 大学で指揮を勉強している時代には、ほかの学生が指揮をしているのを見ながら、自分も指揮の動作をしていました。ヨーロッパでは音楽大学を出たばかりの若者を集めて、夏に講習会が行われることがよくあり、もちろん指揮のコースもあります。20人くらいの生徒が、ほかの生徒の指揮を見ながら、同時に指揮の動作をしているのは不思議な光景です。若い指揮者の卵たちにとっては、とにかく指揮をしたくて仕方がないものの、オーケストラで振る機会がほとんどないので、我慢できなくなって指揮の動作をしてしまうのです。

 僕が音大を出たばかりの頃、初めて行ったオーストリア・ウィーンの指揮講習会では、ほとんどがドイツ人とイタリア人の学生のなか、僕だけが日本人でした。ドイツ人学生は少し難しそうな顔をして軽く手を動かしている程度なのですが、太陽の国イタリアの学生はさすがです。まるで100人のオーケストラを目の前にしているかのように、ほかの生徒の指揮を見ながら、「自分のほうが上手く指揮できる」とでも言いたげな様子で、表現豊かに指揮の動作をしていました。

 この時、僕も楽しくなって一緒に大きく指揮をしていたら、ほかの生徒をレッスンしていた先生が急に僕を指さして、「君、そこの指揮は違う!」と叱られてしまいました。こっちとしては、ただ気持ちよく指揮動作をしているだけでしたが、気を抜けないのでした。

 ちなみに、その先生には、僕のレッスンの番でもガミガミと怒られました。それでも、優秀な生徒6名によるオーケストラ・コンサートの指揮者に選んでくれただけでなく、大トリの大役を与えていただきました。そこから、僕は指揮者としてスタートしたように思います。

(文=篠崎靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師)

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●篠﨑靖男
 桐朋学園大学卒業。1993年ペドロッティ国際指揮者コンクール最高位。ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクールで第2位を受賞し、ヘルシンキ・フィルを指揮してヨーロッパにデビュー。 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後ロンドンに本拠を移し、ロンドン・フィル、BBCフィル、フランクフルト放送響、ボーンマス響、フィンランド放送響、スウェーデン放送響、ドイツ・マグデブルク・フィル、南アフリカ共和国のKZNフィル、ヨハネスブルグ・フィル、ケープタウン・フィルなど、日本国内はもとより各国の主要オーケストラを指揮。2007年から2014年7月に勇退するまで7年半、フィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者としてオーケストラの目覚しい発展を支え、2014年9月から2018年3月まで静岡響のミュージック・アドバイザーと常任指揮者を務めるなど、国内外で活躍を続けている。現在、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師(指揮専攻)として後進の指導に当たっている。エガミ・アートオフィス所属
オフィシャル・ホームページ http://www.yasuoshinozaki.com/

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