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急速に息吹き返す商船三井、純利益656%増の理由…非・海運事業に果敢に進出

文=真壁昭夫/多摩大学特別招聘教授
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 具体的には、表層の海水の熱を利用してアンモニアなどの液体(作動流体)を蒸発させ、その蒸気を用いて発電を行う。タービンから排出された蒸気は深層水で冷却されて液体に戻る。海水の温度は変動が少なく、季節変動の予測も行いやすいと考えられている。そのため、経済と社会への計画的かつ持続的な電源として世界的に注目が高まっている。商船三井は養殖に使われる取水管を利用することによって海洋温度差発電のコストを引き下げ、実用化を目指す。

海運事業で得られたノウハウと脱炭素の結合加速

 以上の取り組みを別の目線から考えると、商船三井の経営陣は加速化する世界経済の変化に対応するために、海運ビジネスで得た経験や専門技術と、脱炭素との結合を加速させてようとしているようだ。脱炭素ビジネスの強化は、商船三井にとって主要な成長戦略に位置付けられる。それによって商船三井はビジネスチャンスを増やそうとしている。その取り組みは大きく2つに分けて考えると良いだろう。

 一つ目が、海洋再生可能エネルギーの利用技術の創出だ。商船三井は海洋温度差発電以外にも複数の取り組みを進めている。検討レベルのものも含め主な事業として、世界各国で導入が加速している洋上の風力発電がある。また、波の力を利用して発電を行う波力発電の分野で商船三井は英国の波力発電装置メーカーであるボンボラウェイブパワーに出資した。

 海洋温度差発電と波力発電に共通するのは、洋上風力発電に比べて事業化が遅れていることだ。商船三井は脱炭素の切り札である洋上風力に加えて、競争が激化していない(コスト面を中心に実用化へのハードルが高い)海洋再生エネルギーの実用化を確立することによって、社会インフラ企業としての地位を確立しようとしている。今後は、潮流発電、海流発電の分野でも商船三井が他の企業との合弁事業やメーカーへの出資を行う展開が予想される。

 もう一つの分野が、船舶分野での脱炭素の取り組み強化だ。同社は次世代バイオディーゼルを用いたフェリーの実証試験航海を実施した。それに加えて、タンカーなど船舶の燃料切り替えが加速している。燃焼時に二酸化炭素の排出が少ない液化天然ガス(LNG)を燃料に用いたタンカー、あるいは燃焼時に二酸化炭素を発生しないアンモニアや水素を用いた船舶の運航が目指されている。そのためにも、商船三井は海洋再生エネルギーの利用技術の実現を急ぐだろう。それは、港湾施設の脱炭素推進にも大きく影響する。

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