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日本の重電の雄・三菱重工の強烈な危機感、脱・重電で変貌…「脱炭素」に巨額投資

文=真壁昭夫/多摩大学特別招聘教授
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 その上にコロナ禍が発生し、三菱重工の収益構造は不安定化した。国境をまたいだ人の移動は大きく減少し、航空機、およびジェットエンジンなどの需要は大きく落ち込んだ。2020年秋に同社はMSJの事業化を凍結した。それは、自前でモノを設計し、生産、販売、メンテナンスを一手に手掛ける発想では生き残ること自体が難しくなるという三菱重工経営陣の危機感を内外に示したといえる。

脱炭素や物流分野でのビジネスチャンス拡大

 MSJの事業凍結が発表されたのち、三菱重工は事業ポートフォリオの入れ替えを加速させている。その一つとして、MSJ関連の資産が売却された。2016年から稼働開始したMSJの部品工場は売却された。また、2022年3月末には米国のMSJ試験拠点(モーゼスレイク・フライトテスト・センター)が閉鎖された。それに加えて、三菱重工は三菱重工工作機械と海外子会社を日本電産に売却するなどした。

 得られた資金が再配分されている主な分野が、脱炭素や物流関連の分野だ。経営陣は収益化が難しい航空機ビジネスへの取り組みをいったんは減速させ、加速度的な需要の増加が期待される世界経済の先端分野での取り組みを強化しなければならないと組織内外に意思を表明している。

 その一つとして同社は2030年度までに脱炭素関連分野に2兆円の資金を投じる。脱炭素関連の事業運営の効率性を高めるために、三菱重工は風力発電設備の世界最大手企業であるデンマークのヴェスタスと折半出資で設立した会社を解消した。当初、三菱重工は大型風車の製造を得意とするヴェスタスとの合同事業によって自社の風車製造能力を強化しようとしたが、実績が上がらなかった。その反省から今後はヴェスタスが開発した風車などを国内およびアジア新興国向けに販売することに集中する。

 また、物流関連の分野でも新しい取り組みが増えている。具体的にはフォークリフトなど同社が強みを発揮してきたモノの製造に加えて、倉庫内の無人化システムの提供など物流分野でのIoT導入の増加に対応した取り組みが強化されている。世界経済のデジタル化によって物流分野は大忙しの状況にある。ドライバーなど人手不足は深刻だ。米アマゾンで労働組合が結成されるなど、物流施設の労働環境は過酷だ。そうした問題を解決するために、物流分野でのデジタル技術導入は加速するだろう。このように考えると、三菱重工の事業運営の発想は、自前主義に基づくハード重視から他社との連携強化によるハードとソフトの融合へ、徐々に変化しているように見える。

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