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博士号取得でも人文系は2割の人が年収200万円未満?悲観論の嘘と現実

取材・文=文月/A4studio
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博士人材を上手く活用していくためのトリガーは産業界?

 そんな博士人材の就職問題も影響してか、日本は博士号取得者が減少傾向にあるといわれているが、事実なのだろうか。

「たしかに2008年のリーマンショックまで日本の博士号取得者の数は減っていましたが、ここ5、6年は横ばいであり、減少傾向にあるとは言い切れません。これはイギリスやフランス、ドイツも同じで、実は日本のみ博士号取得者を増やせていないわけではないんです。

 おそらく日本の博士号取得者が減っていると騒がれているのは、中国とアメリカの存在が大きいでしょう。この2カ国はここ数年で爆発的に博士号取得者を出しており、日本に比べれば研究予算も潤沢にあります。この2カ国と比べると、日本では基礎研究にかける予算が少なく、代わりに成長を見込める特定分野に資金が集中してしまっています。」(同)

 このまま国が研究への投資における「選択と集中」を続けることで、研究分野の多様性が失われるだけではなく、博士課程に進学したいと考える人が減っていく可能性もあるかもしれない。では博士人材に対して産業界はどのような動きをみせているのだろうか。

「博士課程の入学者数は2003年度をピークに減少傾向にありますが、一方で社会人入学者の割合は03年の21.7%から20年の43.2%と増えてきています。これまでの日本企業では、諸外国に比べ役職に対する博士号取得者の割合が低すぎるという傾向がありました。これは、産業界側の博士号取得者や専門性に対する理解が乏しく、適切に評価・活用できてこなかった歴史によるものです。ただし、情報系などの一部の分野において大学と産業界の流動性が高まっており、博士号取得者でありながら民間企業に置いて役職を務める人も増え始めています。

 現在大学や行政による支援は続けられていますが、こうした産業界の動きのように、博士号を取得することによるメリットを提示していくことが、博士号取得数の増加につながると考えられます。産学官が連携して政策を後押ししていく必要があるでしょう」(同)

 民間企業や行政の間で着々と支援はされているものの、現状、大学院の博士課程が抱える課題は山積みだ。将来、誕生するかもしれない優秀な人材を生み出すために博士課程の院生を経済的に、キャリア的に支援する体制の構築が必要になってくるだろう。

(取材・文=文月/A4studio)

(出典)文部科学省 科学技術・学術政策研究所、科学技術指標2021、調査資料-311、2021年8月

 

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