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日本車にはハイブリッド技術があった
ディーゼルに替わる解決策はガソリンハイブリッドであった。21世紀直前にこの技術を完成させていたトヨタ自動車とホンダは、ハイブリッドで欧州マーケットに打って出た。迎え撃つ欧州勢は、ディーゼルで応えるしかなかった。欧州メーカーには、「悔しいハイブリッド」だったに違いなかった。
ハイブリッドは、特にトヨタのそれは日本のお家芸である組み合わせ調整型の技術の最たるものである。デジタル技術をアナログ的に使うので阿吽の呼吸を必要とする。欧米が苦手とする技術だ。
欧州勢はディーゼルを諦めると、ハイブリッドも諦めて、一気にEVにシフトした。そして返す刀で、自動車のゼロ・エミッション化を掲げ、ハイブリッドでもクリアできない排ガスとCO2の厳しい規制に打って出た。自動車の大革命の始まりである。
結論は
排ガス偽装の背景を追うと、欧州の自動車メーカーの苦しい台所事情が見えてくる。しかし、排ガスだけではなくCO2もゼロにして地球温暖・気候変動を止められる自動車でなければ21世紀に生き残れない。
だからといって水素燃料車やバイオ燃料車に勝ち目があるかというと、EVは30年には21年の7.6倍の3544万台になるというから(英LMCオートモーティブ)、とても勝ち目はない。ついてこられないメーカーを置き去りにして、流れは一気にEVにシフトしたのである。ディーゼルにこだわる時代は終わった。
売れるからとディーゼルにこだわったことで、欧州のメーカーは手痛い目にあった。一方、一瞬は欧州勢に勝ったかに見えた日本のハイブリッドも、売れるからとこだわったがゆえにEVシフトに乗り遅れている。資本主義時代の技術には日々の革新が求められる。昨日の技術にこだわると「イノベーションのジレンマ」(クレイトン・クリステンセン)に陥り、それまでの成功を捨てることになる。排ガスもCO2もゼロでなければ自動車は生き残れないのだ。
(文=舘内端/自動車評論家)