NEW

オーケストラ楽員、聴覚だけでなく嗅覚も超優秀?初訪問の街で穴場の店を見つける才能

文=篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師
【この記事のキーワード】, ,

 特にトランペットのような金管楽器は、酒も肴も好きという奏者が多く、アルコール自体、音楽大学時代から鍛えに鍛えられています。音楽系のなかでもっとも体育会系ということもあり、上下関係もしっかりしているので、リハーサルが終わると、すでに若手奏者がお店を予約しているといった話も耳に入ってきます。若手楽員は、先輩楽員の「ここはうまいと思うよ」という店選びを見ながら、演奏だけでなく演奏後のお店探しの嗅覚も順調に成長を遂げていくのです。ただ、今回の新型コロナウイルス感染症が始まってからは、このような会食が控えられているので、若手の経験不足が心配されます。

旅先でのオーケストラ楽員たちの食事

 旅先で公演を控えるオーケストラ楽員にとって、朝食はリハーサル前なので、とにかくサッと食べておくだけですし、昼食はコンビニ弁当やサンドイッチを食べることも多いため、やはり夕食は最重要課題となります。夜は自家用車で帰宅したり、長時間電車に揺られて帰る必要もないので、ゆっくりと地元も酒や肴に舌鼓を打つことができます。満腹になれば、歩いてホテルに帰るだけです。リハーサルや本番の緊張から解き放たれた、かけがえのない楽しい時間であり、同僚の演奏家との大切な情報交換の機会でもあります。

 もちろん、オーケストラの楽員にも、さまざまなリハーサル後の過ごし方があります。たとえば、仲良しの女性奏者グループのうち一人が、現地に住む元同級生から評判のイタリアンレストランを聞いておいて、その元同級生も含めて優雅に食事をすることもあるでしょうし、コンビニでおにぎりを2つだけ買って、ホテルの部屋で練習にいそしむ方もいるでしょう。

 一方、指揮者は、主催者から「スポンサーと一緒にお食事を」と社交的な夕食会に招かれ、同様にお誘いを受けたソリストと一緒に、地元の高級店で最高の料理を頂くことも多くあります。そこでは、すばらしい料理が並びますが、とにかく粗相のないように気を配りながら頂くフォーマルな食事なので、味わうよりもしっかりと前を向いて会話をすることに専念します。もちろん、相手が旧知の方や気楽な方なら楽しく過ごせますが、多くの場合は食事のあと、ホテルの部屋に帰ってから、もう一杯ビールを飲んでホッと一息となります。

 地元の高級店の見事に飾り付けられた八寸、そしてごま油でカラリと揚げられた最高級の魚の天ぷらも良いのですが、楽員が見つけた、古くさい店のお通しのマグロの山かけで中ジョッキのビールを飲みながら、熱々の肉じゃがコロッケとだし巻き卵を注文しているのが、僕は性に合っているだけなのかもしれません。

(文=篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師)

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

 桐朋学園大学卒業。1993年ペドロッティ国際指揮者コンクール最高位。ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクールで第2位を受賞し、ヘルシンキ・フィルを指揮してヨーロッパにデビュー。 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後ロンドンに本拠を移し、ロンドン・フィル、BBCフィル、フランクフルト放送響、ボーンマス響、フィンランド放送響、スウェーデン放送響、ドイツ・マグデブルク・フィル、南アフリカ共和国のKZNフィル、ヨハネスブルグ・フィル、ケープタウン・フィルなど、日本国内はもとより各国の主要オーケストラを指揮。2007年から2014年7月に勇退するまで7年半、フィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者としてオーケストラの目覚しい発展を支え、2014年9月から2018年3月まで静岡響のミュージック・アドバイザーと常任指揮者を務めるなど、国内外で活躍を続けている。現在、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師(指揮専攻)として後進の指導に当たっている。エガミ・アートオフィス所属

●オフィシャル・ホームページ
http://www.yasuoshinozaki.com/f
●Facebook
https://www.facebook.com/yasuo.shinozaki.3

情報提供はこちら

RANKING

17:30更新
  • 連載
  • ビジネス
  • 総合