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「膨大な資料を作成しては何度も提出しなおしたり、社内の業務プロセスや規則を見直して整備したりと、上場準備というのは経験した人じゃないと分からない想像を絶する苦労がある。“上場なんて二度としたくない”という経営者もいるほど。そして晴れて上場した後も4半期ごとに決算を公開したり、株主からは絶え間ないプレッシャーを受けたりと、経営の自由度は格段に落ちる。株主からは短期的な利益を求められるし、常に株価を意識しないといけないため、長期的な視野で必要だと考える投資ができなくなるなど、思うような経営を許されなくなる場面も出てくる。
一方、社員からしても、創業当初からいるメンバーなどで株を持たせてもらっていた社員は上場でそれなりの恩恵を受けるかもしれないが、そもそも経営陣が広く社員に株やストックオプションを持たせていないケースもあり、その場合は一部の経営陣だけがうまい汁を吸い、社員は上場の苦労だけを味わうことになる。以前では個人商店的なノリでいろいろと自由に仕事できていたのが、上場後は“縛り”が多くなってそうもいかなくなったり、上場したからといって給料が上がるとも限らない。経営陣にとっても社員にとっても、果たして上場にどれだけメリットがあるのかは、難しいところだと感じる」
実際にサントリーホールディングスやロッテホールディングス、竹中工務店など、戦略的に非上場を貫いている有名大企業は存在する。また、2020年にはソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が決算発表会見で「一時私自身も、もう株式を非公開化して、自分個人の会社にしてしまおうかと真剣に思ったこともある」と発言し話題になったが、ソフトバンクGが以前から上場廃止を検討していることは市場関係者の間では知られた話だ。
いずれにしても、“上場ドリーム”は一筋縄ではいかないようだ。
(文=Business Journal編集部)