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白井美由里「消費者行動のインサイト」

通常価格より値引き価格の表示のほうが小さいと効果大?値引き価格は右側が効果的?

文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授
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値引き価格と通常価格の位置は離すべきか、近づけるべきか

 値引き価格通常価格を表示する位置間の距離も影響します。コールターとノルベルグが行った研究がそのことを実証しています【註3】。値引き価格は通常価格のすぐ側に示すのが一般的ですが、彼らは2つの価格の表示位置を離したほうが、消費者はそれらの価格の違いをよりスムーズに理解できるので、それらの差(値引き額)をより大きく感じると提案しました。

 次のような実験でこの仮説を検証しています。アイクスクリームスクープとピザカッターを対象とし、通常価格を7ドル、値引き価格を5ドル(約29%引き)か6.75ドル(約4%引き)にした広告を作成し、被験者に評価してもらいました。値引き価格と通常価格の距離は、長い場合が4.2インチ(約11 cm)、短い場合が1.8インチ(約5 cm)で、それらを水平に表示しました。その結果、値引きの大きさに関係なく、距離が長い方が値引きの評価と商品の購買意図が高くなることを見出しています。彼らはさらに、2つの価格を水平に表示した広告と垂直に表示した広告を比較する実験も行っており、水平に表示したときに距離の影響が見られることも確認しています。

 広告では通常価格と値引き価格の距離を少し離して水平に表示することで、値引きをより魅力的に見せることができるということになります。

値引き価格は、通常価格の右側と左側のどちらに表示するべきか

 それでは、値引き価格と通常価格を並べて表示する場合に、どちらを左側に提示したらよいでしょうか。この疑問に焦点を当てたのがビスワスらの研究です【註4】。引き算の問題をイメージするとわかりやすいのですが、一般に、大きい数字は左側、小さい数字は右側にあったほうが、それらが逆になっている場合と比べてずっと計算しやすいです。値引きも同じで、数値の大きい通常価格を左側、数値の小さい値引き価格を右側に表示したほうがそれらの差の計算が容易になるため、消費者が値引きの大きさをよりスムーズに理解できると予想しました。

 この仮説は次の実験で確認しています。通常価格を329.99ドル、値引き価格を230.99ドル(30%引き)か296.99ドル(10%引き)とするブルーレイプレーヤーの広告を作成し、値引き価格を通常価格の左側に表示した場合(左側表示)と通常価格の右側に表示した場合(右側表示)とで、被験者の評価を比較しました。その結果、10%では違いは見られなかったのですが、30%引きのときに、右側表示のほうが左側表示よりも値引きの評価と商品の購買意図が高くなりました。

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23:30更新
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