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ビスワスらはさらに、値引き額を推定してもらう実験も行っており、30%の値引きでは、値引き額は右側表示では正確に推定されるのに対し、左側表示では小さく感じさせることを明らかにしています。ビスワスらは、この結果について、消費者は右側表示にすると引き算を容易に感じて値引き額を計算するものの、左側表示にすると計算を避けてよくある値引き額(10~12%程度)で捉えてしまうので、値引き額を小さく感じるのだと説明しています。
ビスワスらはさらに別の実験を行い、値引きがかなり小さい場合(4%引きなど)には左側表示にした方が、値引き額が計算されずによくある値引き額(10~12%程度)で捉えられるため、値引きを実際よりも大きく感じさせられることを確認しています。
値引きが30%のようにある程度大きい場合には、値引きの大きさをより正確に理解してもらうためにも、通常価格の右側に表示したほうがよいということになります。
以上の研究からは、セールの広告で通常価格と値引き価格の両方を表示する場合には、値引きの大きさだけでなく、それらのフォントサイズ、位置、および差の計算しやすさを考慮することにより、消費者の値引き評価を改善させられることがわかりました。値引きを行う際には値引きの表示方法を工夫されるといいかもしれません。
(文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授)
【参考文献】
【註1】Schwartz, N. (2004). Metacognitive experiences in consumer judgement and decision making, Journal of Consumer Psychology, 14 (4), pp. 332-348.
【註2】Coulter, K. S. and R. A. Coulter (2005). Size does matter: The effects of magnitude representation congruency on price perceptions and purchase likelihood, Journal of Consumer Psychology, 15 (1), pp.64-76.
【註3】Coulter, K. S. and P. A. Norberg (2009). The effects of physical distance between regular and sale prices on numerical difference perceptions, Journal of Consumer Psychology, 19 (2), pp. 144-157.
【註4】Biswas, A., S. Bhowmick, A. Guha and D. Grewal (2013). Consumer evaluations of sale prices: Role of the subtraction principle, Journal of Marketing, 77 (4), pp. 49-66.