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成馬零一「ドラマ探訪記」

『ナンバMG5』の“魅力であり欠点”とは?フジテレビの計算と成功の理由

文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家
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「ナンバMG5 - フジテレビ」より
ナンバMG5 – フジテレビ」より

 水曜夜10時からフジテレビ系で放送されている『ナンバMG5』が、今夜最終回を迎える。

 本作は、筋金入りのヤンキー一家の次男・難破剛(間宮祥太朗)が主人公の物語だ。剛は中学まではケンカに明け暮れるヤンキーだったが、高校では心機一転し普通の生徒として白百合高校に通い、美術部で絵を描く青春を謳歌していた。しかし、両親には不良校として知られる市松高校に通いながら、全国制覇のためにケンカに明け暮れる日々を過ごしていると嘘をついており、その二重生活に苦しんでいた。

 物語は、普通の高校生として日常を過ごしたい剛が、さまざまな事件に巻き込まれる中で、特攻服を着た謎のヤンキーとして戦う姿を描いた一話完結のドラマとなっている。

 原作は「週刊少年チャンピオン」で小沢としおが連載していた『ナンバMG5』と、その続編にあたる『ナンバデッドエンド』(ともに秋田書店)。

 仲間を助けるため、時代錯誤な白の特攻服と「殺」と書かれたマスクを身にまとい、不良たちをなぎ倒す剛は、『ウルトラマン』や『スパイダーマン』のような正体を隠して戦う謎のヒーローのようで、本作がヒーローモノとして作られていることがよくわかる。

 本作が放送されている水曜夜10時枠は、フジテレビが新たにスタートしたドラマ枠で、『ナンバMG5』はその第一弾作品となる。

 チーフ演出には『踊る大捜査線』(フジテレビ系)シリーズで知られる本広克行監督が起用されており、細部まで作り込まれたクオリティの高いドラマを、民放地上波のプライムタイムで作りたいというフジテレビの意気込みは、放送前から伝わってきた。

 同じ時間帯には日本テレビ系の水曜ドラマ枠があり、『悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?』のような、働く女性を主人公にした女性向けのドラマが多数作られている。

 水曜ドラマとの差別化は一番の課題だったと思うのだが、そこでヤンキーが主人公の学園ドラマを持ってきたのは、なかなかうまい選択だったと思う。

 ヤンキーモノは漫画では昔から定番化しているジャンルで、実写映画でも『クローズZERO』や『東京リベンジャーズ』といった漫画原作のものや、EXILE HIROが総合プロデュースする『HiGH&LOW』シリーズといったヒット作が次々と登場している。

 テレビドラマでは漫画原作の『今日から俺は!!』(日本テレビ系)のヒットが記憶に新しいが、ヤンキーのケンカを激しいアクションシーンとして描けるのが、このジャンルの強みだ。高校生が主人公なので、今のテレビに求められている若い視聴者の獲得にもつながる。

 そういった計算もあっての今回のドラマ化なのだろう。その試みはある程度成功したのではないかと、9話まで観て感じた。

“ごった煮感”が魅力であり欠点にも

 本作は『踊る大捜査線』の本広監督らしいドラマで、コメディあり、アクションあり、感動あり、とさまざまな要素がごった煮となった作品だ。このごった煮感は、本作の大きな魅力であると同時に欠点でもある。コメディからシリアスへの流れが唐突で、あまりきれいにつながっておらず、犬がしゃべるといったギャグパートは上滑りしているように感じた。

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