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垣田達哉「もうダマされない」

免税事業者は収入減?個人事業主を痛めつけるインボイス制度の恐ろしさ

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表

領収書を発行する飲食店や個人タクシー、文具店も要注意

 課税事業者になるか免税事業者になるのかの踏み絵を突き付けられる個人事業主は、フリーランス、演劇・映画・音楽・出版関係等、ライター、脚本家、構成作家、カメラマン、エンジニア、プログラマー、コンサルタント、カウンセラー、デザイナー、Webデザイナー、建設業関係の一人親方、スポーツ選手、学習塾、料理・ヨガ・音楽・英語教室等、生命保険・損害保険・モバイル関連の代理店等、多種多様な分野に及びます。

 その他、注意しなければならない業種として、顧客である会社に対し、経費の証明として領収書を発行する飲食店や個人タクシー、文具店、雑貨店などがあります。会社の経費で処理する場合も、インボイス制度が大きく関係してきます。

 課税事業者である企業の社員が経費を使った場合、会計処理上必ず領収書が必要になりますが、購入先の事業者が課税事業者なのか免税事業者なのかを明確にしなければなりません。インボイス制度がスタートすると、領収書発行者が課税事業者か免税事業者なのかで、会計処理が変わってきます。例えば、飲食店が免税事業者の場合、領収書を受け取った企業は、飲食店が支払う消費税分を立て替えて国に納めなければなりません。

 そうなると、課税事業者である企業は、経費を使用する事業者が免税事業者であるよりは課税事業者のほうが負担は少なくなります。つまり「課税事業者の店で使った経費しか認めない」ということになりかねません。課税事業者かどうかは、領収書や請求書に登録番号が記載されているかどうかで判断できます。登録番号の記載がなければ免税事業者になります。

 インボイス制度で打撃を受けるのは、フリーランスだけではありません。商品を販売する、サービスを提供する、技術・才能を提供するなど、何らかの形で収入を得ている人・中小企業すべてに影響するのです。

最悪の時期に弱者に増税

 インボイス制度がスタートすると、多くの免税事業者が来年10月以降は課税事業者になると思われています。免税事業者の数について、麻生太郎財務大臣(当時)は19年の国会で「推計488万社で、サービス業関係が35%、農林水産業関係が18%、建設業関係が13%、小売業関係が10%と試算している」と答えています。

 財務省は、以前から「インボイス制度がスタートすると年間2480億円の増収になる」と予測をしていますが、ほとんどの免税事業者が課税事業者に移行するので、実際は3000億円以上の増収になるかもしれません。逆に、個人事業主の収入は全体で3,000億円も減少するのです。

 個人事業主にとっては、不景気で収入減、物価高騰・円安に加え、インボイス制度によるさらなる収入減と、まさに三重苦に見舞われようとしています。そんな時期の参議院選挙です。インボイス制度の是非も有権者の投票の判断材料の一つになるでしょう。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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