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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

片頭痛に悩む患者に朗報?20年ぶりの新薬「レイボー」を使うべき人とは

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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片頭痛に悩む患者に朗報?20年ぶりの新薬「レイボー」
片頭痛に悩む方の光明となるか(「Getty Images」より)

 片頭痛に悩む患者は非常に多く、全国で約840万人と推定されている。片頭痛のコントロールは非常に難しく、一度、症状が出始めると、日常生活に支障が出る人も少なくない。しかし、片頭痛の苦しみは、周囲には理解されにくく、つらい思いをする患者も多い。

 そんな片頭痛の患者に朗報となる片頭痛の新薬、レイボーが発売された。片頭痛治療としては20年ぶりの新薬であり、期待が集まっている。片頭痛とレイボーについて、千葉市らいむらクリニック院長、來村昌紀医師に話を聞いた。

「片頭痛は、脳の疲れと興奮から来る、一定のリズムでズキンズキンとする頭痛です。片頭痛の症状が始まると日常的な動作で悪化し、吐き気や嘔吐などの症状が出る人や、光や音、匂いに過敏になる人もいて、日常生活に支障が出てしまう人が多くいます」

 片頭痛が起きる原因は明らかになっていないが、ストレス、睡眠不足、空腹、生理、カフェインの過剰摂取などが誘発因子になるといわれている。

「さまざまな刺激によって脳の中に痛みや炎症を起こす原因物質が出て、その原因物質によって神経や血管の周りに神経原性炎症という炎症が起き、それに伴って頭痛が起きるといわれています。また、片頭痛は10〜50代の女性に多く、エストロゲンというホルモンが片頭痛に影響しています」

 また、片頭痛患者の約20%に、なんらかの前兆的症状が現れるといわれ、そのなかでも閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれる症状が20分程度続き、症状が治まった後に片頭痛が起きるというケースが多い。閃輝暗点とは、ギザギザ、チカチカした光が見えたり、視野の一部が欠けたりする症状をいい、若い患者ほど頻度が多く出現するといわれる。閃輝暗点後に強い頭痛に襲われるのが片頭痛の一つのタイプではあるが、閃輝暗点がなく片頭痛が起きるタイプもあり、適切な予防や治療のためには片頭痛のタイプを知ることが重要といえる。

従来の片頭痛治療薬

 従来の片頭痛治療薬トリプタン製剤は、飲むタイミングによっては効果が思うように発揮されず、効果には個人差がある。また、疾患等によっては服用できない場合もある。

「トリプタン製剤は、脳の神経や血管のセロトニン受容体というところに働いて頭痛を引き起こす原因物質が出るのを抑える薬です。しかし、この血管への作用は、脳だけではなく血管を収縮させる作用もあり、狭心症のように胸が苦しくなる副作用が出てしまうことがあります。また、もともと狭心症のような心臓の病気がある患者さんや妊婦さんには使用できません」

 そんななかで開発された新薬、レイボーとはどのようなものか。

「20年ぶりに発売されたレイボーは、トリプタン製剤と同様にセロトニン受容体に働きますが、脳に特化して作用するため、心臓や他の臓器の血管に影響がなく、胸が苦しくなるような副作用が起きないことが特徴です。狭心症や心臓に持病がある患者さんも飲める薬です。適用は成人の片頭痛となっているため、18歳以上の患者さんに処方することができます。また、妊婦さんへの服用は、有益性が上回る場合は注意して使用できます」

 レイボーの効果の発現も、トリプタン製剤とは大きく異なる。

「トリプタン製剤は頭痛を悪化させないようにすることが主な作用で、頭痛が起きたらすぐに飲まないと思うような効果が得られず、飲むタイミングが難しい薬でした。これに対しレイボーは、頭が痛くなってから飲んでも効くので、多少タイミングが遅れても効果があり、そうした点でも使いやすい薬だと思います」

 トリプタン製剤は、頭痛の改善度を見た試験で評価されているが、レイボーは改善度ではなく、頭痛の消失度を見た試験で評価されており、トリプタン製剤に比べて頭痛が消失する可能性が高いといえる。こういった効果の違いから、レイボーが使いやすい薬とも感じるが、新薬であるため、副作用にも注意すべきだと言う。

「レイボーの副作用としては、眠気やめまいが報告されています。レイボーは血管への副作用が少ない比較的安全な薬ですが、脳の興奮を抑え、休ませて痛みをとる薬なので眠気が出る傾向にあり、注意が必要です」

 新薬であるため、これから使用者が増えるのに伴い、データを集積し、有害事象の報告が追加されていくことになるが、片頭痛の治療が広がることは、患者にとって大きな希望となるだろう。

「私は、トリプタン製剤の副作用や心臓疾患などによって使えなかった患者さんや、トリプタンを服用してもあまり効果がなかったという患者さんに処方をしていくのがよいと考えています」

 今まで片頭痛に悩まされながら、トリプタン製剤が体に合わなかった方などにとって、これが改善に寄与するものであることを願う。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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