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【パーソナルトレーナー名鑑④】現役パワーリフター/女性専門パーソナルトレーナー田中亜弥さん

 ここ数年、フィットネス業界でトレンドとなっている、パーソナルトレーニング。Withコロナ時代、これまで以上に人々の健康に対する意識が高まり、ますます需要は拡大していくと予想されるが、利用者はいったい何を基準にトレーナーを選べばいいのか? そのひとつの指標となる、トレーナーの経歴や素顔に迫る――。

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体形へのコンプレックスから、摂食障害に

 パーソナルトレーナーが増えたとはいえ、まだまだ女性トレーナーの数は少ない。しかし、「男性相手では、女性特有の体の悩みやコンプレックスを気軽に相談できない」という女性トレーニーや、「マッチョなトレーナーでは気後れしてしまう」という男性トレーニーにとって、女性トレーナー需要は高い。

 パワーリフティングの現役選手で女性専門パーソナルトレーナーの田中亜弥さんは大学在籍中の20歳から芸能活動を始め、歌手や女優、タレントとして活躍。人前に出るという仕事柄のため、「痩せなきゃ」と強く思うようになる一方で、自分の体形に対するコンプレックスから、拒食症や過食症といった摂食障害に陥った。

「摂食障害の時は、とにかくカロリーを減らさなければ、という思いがあって、それなら有酸素運動だと思い、仕事場まで自転車で行ったり、ランニングをしていました。月100㎞くらい走っていたんですが、食事をまともに摂っていなかったので、体はずっと飢餓状態。そのため、足の甲が疲労骨折寸前となり、病院でみてもらうと、先生に『筋肉もしっかりつけなきゃダメだよ』と言われて…。それが25~26歳くらいのときです。そこで、まずは市営ジムに通い始め、筋トレをやっている友達に教えてもらいながらトレーニングしていたんですが、結局、20分筋トレしたら、あとはひたすらランニングマシーンで走っていました(苦笑)。どこかで、苦しい思いをしたほうが、効果があるんじゃないかと思っていたんです。つらいからこそやる、みたいな」

 自己流のトレーニングでは体やメンタルは思うように変化せず、芸能の仕事にも限界を感じていたことから、「やるんだったら本格的なジムで刺激を受けたほうがいい」という友人のアドバイスに従い、中野のゴールドジムに通い始めた田中さん。

「中野のゴールドジムって、ボディービルダーやパワーリフターをはじめ、男女問わず本格的なトレーニングをしている方が多いコアなジムなんです。ボディビルのシーズンである夏に向けて、自分より年上の方たちの体がみるみる変わっていくのを間近で見て、『私の体が変わらないのは、メンタルが弱いからなのかな?』と悩んだ時期もあったんですが、先輩トレーニーに『大会がなかったらこんなに頑張れないよ』って言われ、『じゃあ、私も自分に負荷をかけるために大会に出よう』と思ったんです。ジムの店長がパワーリフティングの選手だったこともあって、勧められるがまま、パワーリフティングの練習を始めました」

 パワーリフティングとは、筋トレにおいて重要なスクワット・ベンチプレス・デッドリフトの3種目の合計挙上重量を競うスポーツだ。「最初はウエイトを使うのも嫌だった」という田中さんだが…。

 

パワーリフティングを始めてわずか1年で都大会優勝

「それまでまったくパワーリフティングなんてまったく知らなかったんですが、今までコンプレックスに感じていた背か低いこと、骨格ががっしりしていること、筋肉質なことが、すべてプラスに働く競技だったんです。デットリフトも、練習を始めてすぐに100kgぐらい挙がるようになって、トレーナーの方に『向いてると思うよ』と言われて乗せられた部分もありますね(笑)」

 田中さんはみるみる才能を開花させ、1年後の2018年には「東京都春季パワーリフティング選手権大会」52kg級で優勝。昨年の「ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会」52kg級(全国大会)では、5位入賞を果たしている。

 筋トレや競技を通じて、メンタル面や食事に対する意識が180度変わった田中さん。摂食障害に悩んでいた当時は正しい知識を教えてくれる人が周りにいなかったことから、自分の身体を変えたいと思っている人やコンプレックスを抱えている人に、自分が経験してきたことを少しでも還元できればと、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会認定パーソナルトレーナー)を取得。パーソナルトレーナーとしての道を歩みだした。

 “女性専門パーソナルトレーナー”をうたう田中さんが指導する上で特に心がけているのが、トレーニーの悩みとライフスタイルに寄り添ったトレーニングや食事指導だ。

「お客様は30~40代の方が多いんですが、この世代の方はみなさん、忙しいんですよね。子育て中の方はトレーニングの時間がなかなか取れなかったり、食事の内容を子どもに合わせないといけない。あるいはキャリアウーマンの方だったら、職場の付き合いで飲み会が多かったり。私は、生活をよりよく、健康的に、快活に動けるようにするためにトレーニングがあると思っています。ですから、いかにライフスタイルに寄り添って、長く続ける、トレーニング習慣を身に着けてもらうかというのを、常に意識しています。例えば、すごくお酒が好きな人がお酒をゼロにして痩せる、運動嫌いな人に追い込みをやらせるというのは、すごくストレスですよね? ですから、ストレスをあまりためないような、その人の生活に合ったトレーニングプランを提案させていただいています」

 また「女性がダイエットやトレーニングする上で、生理の話とは切り離せない」と、田中さんは指摘する。

「女性の生理周期は人それぞれ違うので、トレーナーがそこを把握してあげることも大切です。生理前に食欲が増える方もいれば、あまり増えない人もいる。また、炭水化物でスイッチが入ってしまうという人もいます。そういう面でも一度、生理周期と向き合って自分を知る、というのが重要。これは体形にも言えることで、すごくしっかりした骨格な人が華奢な体形を目指すのには無理があります。自分の長所を受け入れて伸ばす、どうしようもないと割り切る――。私もそうですが、一度こじらせると、そこから抜けるのは本当に大変なんですよ。

 無理して短期間で10㎏落とすことはできるけど、ダイエットってもともと“日々の食事”って意味ですし、続けていくもの。一生続けられない食事を短期的にやっても元に戻ってしまいますし、むしろストレスになる。私は摂食障害の時に1年半くらい生理が止まってしまって、それを戻すためにピルなども飲みましたが、副作用がひどかったですし、一度ホルモンバランスを崩すと身も心もボロボロになる。それを、身をもって経験している。過食気味な人も痩せすぎな人も、だいたい生理周期がまばらというケースが多いんです。生理の教育ってタブーにされがちですが、自分の体と向き合っていかないと、将来的には妊娠力にも関係してくる。食事が大事なんだよ、というのを伝えていきたいですね」

 

同じ摂食障害に悩むお客様との出会いが、トレーナーとしての自信に

 摂食障害を経験した田中さんだからこその説得力のある言葉だが、パーソナルトレーナーを自身の天職だと痛感した出会いがあった。

「トレーナーになりたての頃から1年半くらいみているお客様で、過食症の方がいらっしゃるんです。最初の数カ月で体重は落ちましたが、その後、3~4回、過食を繰り返してリバウンド。ストレスから自暴自棄になって、私の言葉がまったく耳に届かない時期がきてしまうんです。『人を変えるっていうのは、やっぱり無理なのかな』と自分の無力さを感じましたが、私が摂食障害の時に周りの人たちが根気強く向き合ってくれたので、私も彼女と根気強く向き合おうと。コロナの自粛期間中にさらに10㎏増えてしまったんですが、いま一番絞れていて、12~13㎏落としました。『亜弥さんに出会えなかったら、ここまでできなかった』とまで言ってくださって、胸が熱くなりましたね。言葉が届かなかったときには本当に心が折れそうになりましたが、本気で向き合えば、必ず相手にも伝わるということを教えてくれた。この経験が、トレーナーとしての自信にもなりました」

 トレーナーの仕事はトレーニングや食事指導だけでなく、メンタル面のサポートも重要だ。「どれだけトレーニング知識があっても伝わらない時は伝わらないし、それを伝えるだけの技術も必要。いかに寄り添えるかが大切ですね」と田中さん。

「『なんで摂食障害になってしまったんだろう』と長年悩んでいたんですが、今ここにいるためなんだろうなと思うくらい、今までの経験もすべて無駄じゃなかったんだなって。摂食障害って、私にとって人生初めての挫折だったんですが、人の気持ち、痛みがわかるようになった。トレーナーをやるために必要な経験だったとすら思いますね」

 そんな田中さんの夢は、自分のジムを持つことと、パワーリフティングで日本一になることだ。

「託児所付きのジムを作って、ママたちが安心してトレーニングできる環境を作りたいですね。パワーリフティングでは、コーチから『数年後には日本一になる素質がある』と言われているので、届かないところではないと思っています。今年はコロナの影響で大会がなくなってしまいましたが、今はそこを目指して頑張っています。日々、自分の限界に向き合ってトレーニングしている、という面では私もお客様と同じ。階級制の競技なので、体重をキープするため、食事管理も徹底していますし、現役選手としてのキャリアは、お客様を指導する上でも、とても役立っています」

「自分がチャレンジすることで周りの人に元気を与えたい」という思いは、芸能活動をしていたころから変わらない。“小さな巨人”田中亜弥さんの、今後の活躍に期待したい。
(取材・文=編集部)

 

●田中亜弥(たなか・あや)
早稲田大学社会科学部卒。NESTA公認トレーナー、現役52kg級パワーリフター(東京チャンピオン)。女性が心身ともに健康で理想的な体を手に入れられるよう、サポートしている。

HP→https://tanakaaya81.wixsite.com/mysite
Twitter→@AyaTanaka81
Instagram→https://www.instagram.com/tanakaaya81/

 

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