【上腕二頭筋】に効かせるアームカールは?
上腕二頭筋の代表的なトレーニング種目といえば、アームカールが思い浮かぶと思います。
アームカールには様々なバリエーションがあり、実際に何が違うのか疑問を抱くところもあるかと思います。
今回は解剖学的観点とバイオメカニクスを踏まえて、そんな疑問にお答えしていきます。
上腕二頭筋の解剖学
まずは、基本である上腕二頭筋がどのように付着しているのかを抑えましょう。
上腕二頭筋は名前の通り内側の短頭と外側の長頭の2つに分かれます。
●上腕二頭筋“短頭”
起始:肩骨の烏口突起
停止:橈骨粗面
●上腕二頭筋“長頭”
起始:肩甲骨の関節上結節
停止:橈骨粗面及び上腕二頭筋腱膜
※起始停止とは、筋肉が収縮する時に動きが小さい方の付着部を起始、動きが大きい方の付着部を停止と言います。簡単に言えば、上下肢では身体の中心(体幹)に近い方が起始、遠い方が停止になります。体幹の筋群は少し変則的なものもあります。
上腕二頭筋は起始停止が肩関節と肘関節の2つの関節をまたぎます。この2つの関節をまたぐというところが重要なポイントです。
上腕二頭筋のトレーニングと言えば、肘の屈曲をする動作はイメージ出来ますが、肩関節もまたぐことから、どうやら、肩関節の屈曲も関係してきそうですよね。
筋トレをするときに、抑えるべきポイントとして、筋肉の起始停止が向き合うように筋肉を収縮させることです。
上腕二頭筋のトレーニングでは手のひらと肩前面が向き合う形になることが前提になります。
ここで除外されるのがハンマーカールやリバースカールといった腕のトレーニングになります。
これらの種目は上腕二頭筋のトレーニングとして非効率的です。
上記のポイントを踏まえると、上腕二頭筋のトレーニングは少なくとも2つに細かく分類して行えることが予想されます。
それが近位と遠位(肩寄りと肘寄り)でのトレーニング選択になります。
近位と遠位(肩付近と肘付近)による種目の違い
では、実際にどのようなトレーニングになるのか。
まずは近位、つまり、肩関節よりの上腕二頭筋のトレーニングについてご紹介します。
上腕二頭筋は二関節筋であり、肩関節もまたいでいるため、肩関節の屈曲にも作用します。
近位のトレーニングのキーワードは肩関節の屈曲です。
肩関節の屈曲が可動域が取れるトレーニングはインクライン・アームカールです。
実際に、インクライン・アームカールを行っている人、行ったことがある人は多くいると思いますが、ほとんどの人が非常に非効率的で勿体無いことをしています。
せっかく肩関節の伸展可動域を確保しているのに、肘の屈曲のみを行ってしまっているのです。
ベクトルのことを考えれば、ピークの位置が変わるので全くもって意味がないとは言いませんが、効率的ではありません。
インクライン・アームカールは手のひらを正面に向けた状態(解剖学的肢位)で肩関節の屈曲も行うことが理想的です。また、伸展ROM(可動域)が確保できているため、最大のエキセントリック(伸張)種目になります。
ちなみに、立位で同じ動きを行うコンセントリック(短縮)種目になります。
※注意点は手のひらが正面を向いている姿勢であるということです。手の甲が向いているとフロントレイズ(三角筋前部のトレーニング)になります。
遠位のトレーニングは、スタンダードなアーム・カール(バイセップス・カール)や肩関節屈曲位で行うプリーチャー・カールなどになります。
肘関節は180°以上の伸展ROMは取れないのでエキセントリック(伸張)種目はあまり考えなくても良いでしょう。
コンセントリック(短縮)種目は重量が扱えるという点でも、プリーチャー・カールがおすすめです。
台に腕を乗せて肩関節が予め屈曲しているため、遠位にかかる負荷が大きくなります。
補足ですが、上腕二頭筋には回外、つまり手を外側の捻る作用もあるため、スピネイト・カールもトレーニング選択として考えられます。ただし、回内位からの回外になるため、手のひらが正面を向いた状態からさらに外側に捻ってもほとんど意味がないですし、ベクトルのことを考えても収縮した状態でダンベルを捻っても重力方向に逆らっているわけではないので、そちらについてもあまり意味がありません。
上腕筋については肘の屈曲に対して全て作用するので、基本的には分けて考える必要はありませんが、消去法で言うならば、回内位で行うことで上腕二頭筋の作用が弱まるので、リバースカールなんかが適しています。
ぜひ、今後のトレーニングでご活用ください!
鈴木寛太(KANTA SUZUKI)
パーソナルトレーナー。活動地域:愛知県。
本来あるべき機能を取り戻すことこそ“ストレスから解放されるカギ”をモットーに日々活動中。動かしやすい身体は人生を豊かなものにしてくれます。皆様に身体づくりのヒントをお伝えできたらと思っております。