スクワット時の股関節の違和感、実は中殿筋が原因かも
こんにちは! 関西で、痛み、動作改善をメインにボディワーカー、パーソナルトレーナーとして活動しているだーまえです。
さて今回は、中殿筋の機能解剖を中心に解説していきます。
・ スクワットをするときに股関節が詰まって痛みや違和感がある
・そのせいでトレーニングに集中できずに腹が立つ
・膝の外側が痛い、腸脛靭帯炎なのだけど、いくらマッサージしても痛みがとれない
という方に必見の内容です。
目次
・中殿筋の基本的な解剖学
・中殿筋の機能低下の原因
・中殿筋の機能低下の際に見られる動き
・詰まりや痛みの原因は大腿筋膜張筋の過緊張
・中殿筋が使えているかの簡単なチェック方法
・中殿筋のケアやトレーニング
中殿筋の基本的な解剖学
中殿筋はお尻の表面の大きな筋肉(大殿筋)の奥側にあります。
※水色の一番表面にあるのが大殿筋で、線で囲っているのが中殿筋です。
働きとしては、股関節の外転、外旋、伸展という動きを担っています。
このうち、股関節を外転する働きは一番強く、立った状態でお尻の横側を手で押さえながら、股関節を外に開いていくと中殿筋が盛り上がりながら動いているのが感じられると思います。
中殿筋の動きをコントロールしているのは、下の画像に示した上殿神経(じょうでんしんけい)という神経です。
この神経は腰椎の4番目〜仙骨1番から出て、中殿筋のほか小殿筋、大腿筋膜張筋を支配しています。
中殿筋の機能低下の原因
1.上殿神経の絞扼による機能低下
中殿筋の機能低下にはいくつかの原因がありますが、その中の一つに上殿神経の絞扼(こうやく)が考えられます。
絞扼とは、神経が圧迫されること。運動神経が圧迫されることにより、動いてほしい筋肉への信号がうまく届かず機能低下が生じてしまうということです。
上に示した上殿神経のルートを見てみると
・神経の始まりである腰椎などの背骨自体のねじれ
・腰椎周囲の筋肉、例えば多裂筋などの過緊張
・中殿筋と小殿筋の間での癒着
などがこの神経を圧迫し、結果、中殿筋の機能を低下させているのではないかという可能性が考えられますね。
2.大殿筋との癒着によって生じる機能低下
中殿筋の機能が低下してしまう2つ目の原因として、大殿筋との癒着(ゆちゃく)が考えられます。
癒着とは筋肉同士がベタッとくっついてしまい、動きが悪くなってしまうこと。
中殿筋のすぐ上には大殿筋が乗っかっているため、お互いにくっつきやすいです。
この筋肉同士のくっつきを取り、中殿筋を動きやすい状態にしてあげることが機能改善のためには大切です。
中殿筋の機能低下の際に見られる動き
では、中殿筋の機能が低下するとどのような現象が見られるのでしょうか?
先に挙げた以外の中殿筋の重要な役割として、「片足で立ったときに骨盤を水平に保つ」というものがあります。
ですので、中殿筋が弱くなると片脚で立った時に、浮かしている足側の骨盤がぐにゃっと下に傾いてしまう現象が起きます。
トレンデレンブルグ兆候ってやつですね。
街中を歩いていると、上半身を左右に揺らしながら歩くおばあちゃんなどを見ることがあると思います。
あれはまさしく中殿筋の機能が低下してしまい、骨盤が傾き、その上の上半身も左右に揺れ動いてしまうときにみられる歩き方です。
また、アスリートレベルでこの現象を見てみると、走っている際にトレンデレンブルグ兆候が起こってしまうと、片脚で立ってる側の膝が内に入ってしまいます。
サッカーやアメフトなどコンタクトスポーツの選手がこの状態でタックルなど受けてしまえば、膝の靭帯を痛めてしまうリスクも上がってしまいます。
このように中殿筋の機能低下は、競技生命を短くするリスクも高めてしまう、とても厄介なものなのです。
詰まりや痛みの原因は大腿筋膜張筋の過緊張
では、なぜ中殿筋の機能が低下すると股関節の詰まりを生じさせてしまうのでしょうか。
これはぜひ覚えておいてもらいたいことなのですが、僕たちの身体は機能低下が生じその動きを担う筋肉の働きが落ちると、別の筋肉を使い、無理矢理にでもその動きをしようとします。
これを「代償」というのですが、多くの場合、働きの似た筋肉が代わりに使われます。
そして、中殿筋の主な働きである股関節の外転は多くの場合、下の画像で示した大腿筋膜張筋で代償されます。
この大腿筋膜張筋は骨盤の前側から腸脛靭帯を介して膝関節の外側に付着している筋肉で、働きとしては股関節の外転、内旋、屈曲を担っています。
中殿筋と比較すると、屈曲、内旋は逆ですが、外転の働きがある点は同じです。
大殿筋も中殿筋と癒着など起こし機能が低下している場合、
中殿筋機能低下→大腿筋膜張筋で代償
というパターンはとても多いです。
そして、このような状態でスクワットをすると、
股関節の外旋筋である中殿筋の筋力低下
↓
内旋を担う筋膜張筋で動きを代償
↓
使われ過ぎにより過緊張を起こしているため、しゃがみ込む局面で股関節が内に入る
↓
詰まりやそれに伴う痛みが出てきてしまう
ということが生じてしまうわけです。
また、大腿筋膜張筋は腸脛靭帯を通して膝の外側に付着しているので、固くなると腸脛靭帯炎(膝の外側に生じる痛み)のリスクも上がるので、早めのケアが必要ですね。
中殿筋が使えているかの簡単なチェック方法
ではこの2つの筋肉の働きの違いを考慮しながら、中殿筋がちゃんと使えているかをチェックする方法をご紹介します。
最も簡単な見分け方として、ヒップアブダクションがあります。
チェックの手順
① まず、マットなどの上に横向きに寝転ぶ
② 下側の股関節は軽く曲げ、膝も90°程度曲げる
③ その状態から上側の股関節を真上に上げていく(外転する)
この動きをしてみたときに「股関節を屈曲、もしくは内旋しながら外転」していたら、中殿筋ではなく大腿筋膜張筋を使いながら外転しているということになります。
ですので、そのような場合は、
① まずはしっかりと股関節を伸展、外旋しながら外転するようにフォームをを修正する
② そしてそのときに、お尻の横側の中殿筋がしっかりと効いているか確認する
ことが中殿筋を使えるようにするファーストステップになります。
この動作の練習をするだけで股関節の痛みや詰まりが軽減する場合もあります!
しっかりと中殿筋に効いている感じが出てきたらもう一度スクワットを行い、確認してみるとよいでしょう!
中殿筋のケアやトレーニング
1.ケアは指やフォームローラーを使って
では、もしこのようにフォームを修正してみても股関節の詰まりや痛みが改善しない場合はどのようにケアすればよいのでしょうか。
簡単なセルフケアとしては、自分の指やフォームローラーなどで中殿筋周りの筋膜を緩めるという方法があります。
先に述べたように、中殿筋はその上に覆いかぶさるようにある大殿筋と癒着(ゆちゃく)していることが多いです。
ですので、下の画像の緑色のライン付近を自分の指やフォームローラーなどでほぐしていくことでスクワット時の股関節の詰まりを軽減することが出来ます。
また、中殿筋と小殿筋の間で神経が絞扼を受けている場合は、よりお尻の横側をケアするとよいでしょう!
マッサージ、フォームローラーを行うときは、あくまでゆっくり丁寧に、やさしく動かしていくのがポイントになります。
初めはかなり痛みを伴うと思いますが、あくまでイタ気持ちいい範囲でゆっくりケアしていくと痛みが減ってくると思います。
痛みが半分よりもマシになったら先ほどのヒップアブダクションをしてみて、動作の軌道はどうか、中殿筋あたりがしんどくなってきているかを再確認してみるとよいでしょう。
感覚にかなりの違いが出てくる場合もあります。
2.トレーニングは片脚ずつ行うものがオススメ
機能が改善した中殿筋の筋力を高めるトレーニングとしては、ヒップアブダクションで追い込んでもよいのですが、最も重要な骨盤を水平に保つ筋力強化のためにはシングルレッグスクワットやブルガリアンスクワットなど、片脚のトレーニングを行うとよいです。
初めのうちは動作も安定せず苦労すると思いますが、しっかりとお尻の部分に効いているかを確認しながら片脚10回程度行うことで、とても効果のあるメニューになるでしょう。
そして上記メニューをしっかりやり込めば、股関節の痛みや詰まり感に悩まされることはだいぶ少なくなるはずです!
まとめ
股関節の詰まりが生じるメカニズムとして、
背骨、お尻部分の問題により中殿筋の機能低下
↓
大腿筋膜張筋で代わりに動作する
↓
大腿筋膜張筋緊張
↓
スクワットなどで股関節を曲げるときに股関節内旋が生じる
↓
詰まりや痛みの原因になる
が考えられます。
トレーニング時に股関節の痛みや詰まりに悩まされている方、もしくは腸脛靭帯炎など膝の外側の痛みでお悩みの方は、今回ご紹介したケアやトレーニングを行なうと症状が軽減されるかもしれません。
是非試してみてください!
だーまえ
関西にてフリーランスのパーソナルトレーナーとして活動中。整骨院→大手パーソナルジム→京都大学・甲南大学→某相撲部屋、プロサッカー選手へのトレーニング指導。一般の方からプロ選手まで指導してきた経験から、身体のことを分かりやすく解説、サポートしていきます。好きなもの→酒、お寿司、フットボール
note→https://note.com/pep0405
お仕事などのご依頼→ daa.mae0405@gmail.com