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今さら聞けない「東電問題」の基本

ゴーマン東電「電気料金」の仕組み

文=山川修平/ジャーナリスト
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ゴーマン東電「電気料金」の仕組みの画像1枝野経産相は、東電の公的資金投入を強く主張(「同氏公式サイト」より)
 東京電力が7月から企業向け電気料金値上げの方針を打ち出した。その理由について同社は、「原発の再稼働ができず、火力発電の燃料費負担が増大したため」と説明している。しかし、これは表向きの理由だ。経産省OB・A氏によると、値上げの真の狙いは、公的資金の注入を減らし、政府による3分の2の議決権取得をなんとしてでも阻止することにある。つまり、枝野幸男経済産業相の狙う国有化を阻みたいとの思惑である。

 電気料金の値上げは、電気事業法に基づく「総括原価方式」によるもので、法律改正しない限り、この方式を崩すことはできない。実は、この総括原価方式が電気料金の値上げを容易にしてきた元凶であり、原発推進の原動力ともなってきたのである。「電気料金値上げをストップさせるには、総括原価方式の抜本的見直しと、この方式によって温存されてきた東電の高コスト体質の洗い直しが不可欠」と、A氏は語る。

 電気事業法は、電力業界においては「憲法」と呼ばれる、絶対的不可侵な存在だ。なぜなら総括原価方式によって、この業界の収益の安定性が確保されているからである。経産省は、「この方式は電気の安定供給に不可欠の制度」という。しかし、この方式が逆に、電力会社の競争を阻み、高コストを助長してきたことを見逃せない。

 総括原価方式では、「発電・送電などに要する電力会社の適正な費用に、公正な報酬を上乗せしたものを総括原価とみなす」とされている。前出のA氏によると、この「適正な費用と、公正な報酬」にこそ、電力会社が思うがままに電力値上げを推し進められる理由が、隠されているという。

 まず、適正な費用とは、燃料費や営業費、人件費、原価償却費、諸税などをいう。例えば人件費に関しては、東電の場合、有価証券報告書から計算すると、社員ひとり当たりの平均年収は約760万円。国内全企業の平均年収約350万円の2倍以上である。40歳の社員では、1000万円の年収をもらうのが普通という。そして役員の報酬は、なんと7000万円。先ごろ国民の厳しい批判から、50%カットを発表したが、それでもなお3500万円の年収である。

 公正な報酬については、各電力会社は一切公表していないが、「事業資産の3.5%相当額が報酬」(経産省OB・B氏)とみられている。この事業資産というのがポイントである。最も大きい資産は原子力発電所で、1プラント3000億円~5000億円である。東電の場合、福島第一、第二で計10基、柏崎刈羽で7基の計17基保有している。そのほか、火力/水力発電所があり、事業資産は巨額にのぼる。3.5%とみられる報酬率は、銀行金利を下回らない水準ということで定められている。つまり、人件費が高額で、原子力発電プラントが増えれば増えるほど、総括原価は増える仕組みだ。総括原価をまかなうのが電気料金収入となるわけだから、どんな形であれ、原価が増えれば料金を値上げすることになる。これでは、東電に「コストカット」という意識がないのも当然だろう。

 また、不動産などの資産に関しては、先ごろ、東電は4000億円程度の売却方針を明らかにしたが、東電全体の総資産は約14兆円といわれている。このうち不動産は、東京都内の一等地の施設だけでも1兆2000億円にのぼる。これは全く手付かずのままだ。
 前出のB氏はこう指摘する。

「総括原価方式を前提とする限り、料金値上げは避けられない。料金値上げによる収入は約1兆円とみられ、これは、公的資金の注入額とほぼ同じである。公的資金の注入を避けるには、値上げしかないというのが東電の思惑である」

 同氏によれば、現在経産省は本方式に対する世論からの批判を受け、見直し作業を進めているが、あくまで部分的な見直しにとどまっているのに加え、着地時期も見えない。よって、早ければ7月からの値上げは、避けられない見通しだという。
(文=山川修平/ジャーナリスト)

山川修平/ジャーナリスト

山川修平/ジャーナリスト

大学卒業後出版社勤務を経て独立、異色の専門誌『著者と編集者』等発刊。その後、ハウスメーカーに勤務。営業企画を担当。停年退職後、住宅産業ジャーナリストとして執筆活動開始。

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