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大蔵官僚から和歌山県警本部長へキャリア組の華麗なる経歴

ALSOK青山新社長と、ある怪死事件をつなぐもの

文=編集部
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post_83.jpg新社長もこのALSOK体操できるんですかね?(「同社HP」より)

 綜合警備保障(ALSOK)・青山幸恭新社長(4月1日付)は東大法学部卒の大蔵省(現・財務省)キャリア組出身だ。2006年に関税局長を最後に退官して、08年にALSOKに天下った。同社はセコムに次ぎ警備サービス業界第2位。金融機関向けの常駐警備に強みを発揮している。

 青山氏は10年6月、同社代表取締役副社長となり、同社のオーナーで代表取締役の村井温(あつし)氏が兼務してきた営業本部長のポストを引き継ぎ、11年から最高執行責任者(COO)を務めた。そして今回、社長兼COOに昇格する格好となる。

 この青山新社長と、15年以上前に和歌山市を舞台に繰り広げられた暴力団への不正融資事件、そして銀行元頭取の不可解な死が、一本の線でつながっていることは、あまり知られていない。

 和歌山市に本店を置く阪和銀行(第2地銀)は96年11月21日、大蔵省から業務停止命令を受けた。同行は戦後初めて倒産した銀行として、その名前を金融史上にとどめることになった。阪和銀行の元頭取・橋本竹治(たけじ)氏は97年11月3日、商法の特別背任の容疑で逮捕され、破綻の経営責任を刑事裁判で問われた。そして99年3月30日、和歌山地裁(小川育央裁判長)は「暴力団組長への不正融資は銀行の公共性に反する悪質な犯行」として、懲役2年、執行猶予3年(求刑では懲役2年)を言い渡した。公判で橋本元頭取は「融資は小山友三郎副頭取が主導したもので、自己保身の認識はなく、銀行のためにやったもの」と主張した。橋本元頭取は執行猶予付き判決だったこともあって控訴せず、刑は確定した。銀行のトップが、自分の疑惑を晴らそうとせず、地裁の判決に従うこと自体、非常に珍しいことだった。

 ちなみに小山副頭取は、93年8月5日午前7時50分、銀行に向かう乗用車に乗り込んだところ、白いヘルメットとサングラスの中年男性に短銃で射殺された。犯人は、いまだに捕まっていない。

 ここからが本題である。橋本元頭取逮捕にあたって和歌山県警は「破綻した金融機関の経営陣に刑事責任を問うという我々の執念が実った」とのコメントを出した。地方の県警が、なぜ、こんな高度の問題意識を持って行動できたのだろうか?

 なぜなら、当時の和歌山県警本部長が青山幸恭氏だったからである。大蔵省のバリバリのキャリア組が、知事より強力な権限と情報を持つといわれる県警本部長(出向)として、和歌山県にはるばるやって来たのだ。当時関西の有力地銀の幹部は「和歌山(の銀行)で何かが起こる」と予言した。大蔵省のキャリア組が県警本部長になるケースは唯一、「県下の金融機関に重大な犯罪(の疑い)がある」ときだけだからだ。実際に阪和銀行は潰れ、元頭取が逮捕された。

「橋本元頭取の逮捕は、大蔵省の阪和銀行への業務停止命令が絶対に正しかったことを証明するために、”大蔵省一家”が総がかりで動いた結果だ。銀行がヤクザに情実融資をしていた例など、当時の関西の銀行(特に第2地銀)にはいくらでもあった」(阪和銀行の元支店長経験者)

 橋本元頭取の逮捕の真の狙いは、小山副頭取射殺事件の真相解明と和歌山県版・イトマン事件といわれた、和興開発の不正融資の全容を明らかにすることだったといわれている。阪和銀行は和歌山県の指定金融機関、紀陽銀行の別動隊として和興開発や関連会社(ヤクザ・カンパニー)に融資していたし、関西の経済ヤクザ絡みの取引に深入りしていた。例えば和興開発が行った大規模開発・フォレストシティがらみで、300億円が闇に消えているが、紀陽銀の元頭取とその周辺が関与したものと大阪地検特捜部はみており、地元選出の元国会議員も絡んだ一大疑獄事件といわれていた。

 青山氏は97年1月末、大蔵省検査部の接待汚職事件の摘発を受け、急遽、省内に創設された金融服務監査官室の初代室長のポストに就いた。青山氏を指名した理由を大蔵省の首脳(当時)は「和歌山県警本部長時代に脱税や贈収賄事件を摘発してきたから(経験豊富)だ」と述べており、この疑獄事件摘発に青山氏が大きく関与したことがうかがえる。

 橋本元頭取は05年1月27日に急死した。享年77歳だった。風呂場に続く炊事場で丸裸(実際は上半身裸だったと関係者は証言している)で倒れているところを使用人が発見し、救急車を呼んだが、すでに死亡していたという。元頭取の死にもかかわらず、大阪・和歌山の新聞(全国・地方版)に1行の死亡記事も載らなかった。変死なのに検視はされておらず、単なる病死として扱われた。

 青山氏のように大蔵省のキャリア組が、経済規模の大きくない和歌山のような県の県警本部長になるケースはそうは多くない。彼は見事にその職責を果たし、今回、ついに上場企業のトップの座を射止めたのだ。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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