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競馬大吟醸 -桜花賞な人々- 「仁川の桜は、トリコロールに染まる」

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keibadaiginjou.jpg「AC photo」より

 桜が本当に綺麗な季節がやってきた。

 つい先日も目黒川の桜祭りに足を伸ばし、川の両側から何百本という染井吉野(ソメイヨシノ)の枝花が作った天然のアーチを眺めながら、年甲斐もなく「風流だねえ」などと独りごちていたのが、今日はもう一段”階段”を飛び越えて代官山のカフェなんぞにいる。

 洒落た小窓から覗く街路樹の桜もまた、今まさに狂い咲きといった風体だが、桜花賞を彩る仁川・阪神競馬場の桜は今年も見事な桜雲を見せてくれるだろうか……。

 などと遠く離れた阪神競馬場に思いに馳せているのは、はっきり言って現実逃避したいからだろう。こうしてかれこれ30分も窓の外ばかりを見ているのは、昼間から春休みを謳歌する若者で埋まったカフェに居場所を見つけられずにいるせいもある。

 ただそれ以上に、目の前の席に座っている年頃の娘とまともに目を合わせられないからだ。

 もう何年も前の話だが、若い頃はとにかくギャンブルに狂っていた時期があった。競馬にパチンコ、競艇に麻雀……賭け事という賭け事は大方やりつくしたし、若い分いくら負けても「頑張って働けば、すぐに取り返せる」という根拠のない自信もあった。

「大学は、順調か?」

 目の前の実娘は今年で二十歳になり、1月には成人式を行ったそうだ。会うのは、レッツゴードンキが勝った去年の桜花賞以来だ。

 毎日毎日、それこそ仕事かギャンブルかという生活を何年も続けた結果、失ったものは金だけではなかったということだ。無論、心から反省したが、生まれ変わるつもりで決意しても”一度失ったもの”が戻ってくることはなかった。

「無理に話題を作らなくていいよ……」

 会ってから会話らしい会話もなく、痺れを切らして話を振ってみたが、いつものようにむげなく返されてしまう。別に嫌われているわけではないらしい。彼女としても、前の父親との距離の取り方がわからないのだ。

 妻と離婚した当初、年に一度だけ娘と会うのは高校を卒業するまでとの約束だった。しかし、それから2年、大学に通うようになった今でも娘は私と会うことをやめていない。

 こうしてほとんど満足に話もできないが、彼女の中で何かしらこの時間に重きを置く理由があるのかもしれない。それとも単に”情けない独り身の親父”に同情してくれているだけなのか。いずれにせよ、私にとっては本当に心救われるし、多くの意味で重要な時間だ。

「バイトがあるから、もう行かなくちゃ」

 やがて、スマートフォンを見ながら立ち上がる娘を呼び止めて「今日はありがとう」と告げ、別れ際に「最後に教えてほしいんだけど」と前置きして娘が飼っている犬の首輪の色を聞く。

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