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住銀のドン磯田一郎会長の「裏カード」

西貞三郎元住友銀行副頭取死去で、イトマン事件を想う

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 そういう磯田さんに、父親として娘の事業を後押ししたい気持ちがなかったわけではない。磯田さんが溺愛していることを知って、イトマンの河村社長も伊藤(寿永光)常務も彼女の面倒をよく見ていたようだ。人間として、あるいはバンカーとして磯田さんは素晴らしいと思う。しかし、長女の存在が磯田さんの判断を決定的に狂わせた>

 伊藤寿永光氏や許永中氏が闇の世界とつながりがあることは、住銀の役員ならずとも、皆、わかっていた。イトマン問題の始末をつけるのには、磯田会長の退任が不可欠だった。常務企画部長だった西川氏は行動を起こす。秘密保持のため、当時の企画部次長に20数人いた本店の部長全員に電話させ、用件は何も言わずに緊急部長会を招集すると通知した。再び引用。

<(一九九〇年)一〇月一三日、土曜日。結婚式などでどうしても都合がつかなかった二、三人を除く部長全員が東京の信濃町にある住友銀行会館に顔を揃えた。皆の前で私はこう言った。「現在のイトマン問題と磯田さんのことをあなた方はどうお考えですか。お一人一人意見を聞かせて下さい」

 朝の一〇時から午後の二時頃までかかっただろうか。全員からたっぷり意見を聞いた。実に多様な意見があった。しかし共通して出たのは、磯田会長は口先だけでなく早期に辞めるべきだ。それを巽(外夫)頭取から磯田会長に言ってもらわなければならないということだった>

 部長会が退任要望書を提出した3日後の10月16日、住友銀行東京本部で開かれた経営会議で磯田会長が取締役相談役に退くことが決められた。同時に西副頭取も辞任することになった。

 イトマン事件の本質は、イトマン・住友銀行事件だった。イトマンの河村社長は絵画にとどまらず、リゾート、ゴルフ場開発など、バブル時代のあらゆる投機物件に手を出した。イトマンの負債総額1兆2000億円のうち、3000億円とも6000億円ともいう巨額の資金が闇の世界に流れたといわれている。イトマンに資金を融資したのは、磯田一郎会長が率いる住友銀行だった。
(文=編集部)

【注1】イトマン事件とは、日本の総合商社・伊藤萬株式会社(のちのイトマン株式会社)をめぐって発生した、商法上の特別背任事件。戦後最大の不正経理事件といわれている。

BusinessJournal編集部

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