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故郷が震災に遭い、厩舎を支えた唯一無二の存在が他界……「壮絶」の一言に尽きる松永幹夫調教師の米三冠挑戦<前編>

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 世界の頂点を目指したラニの北米クラシック挑戦は、ベルモントSの3着という結果で幕を閉じた。残念ながらクラシック制覇には至らなかったが、その可能性を示した挑戦には日本の誰もが手放しで拍手を送っている。

 貴賓席の両陛下への最敬礼から始まった松永幹夫とヘヴンリーロマンスの関係、奇跡のUAEダービー出走、故郷熊本の震災、最愛のレッドディザイアの死……今回は松永幹夫調教師がラニと歩んだ、この半年間を師の言葉を掲載しながら振り返ってみた。

 1905年に天皇陛下から賞品を下賜されるレースとして創設された「帝室御賞典」を起源としている「天皇賞」が100周年を迎えた2005年の秋。

「エンペラーズカップ100年記念」の副題が掲げられた第132回天皇賞は、史上初めて今上天皇による”天覧競馬”として開催された。

 そして、そのレースを制したのが騎手・松永幹夫と、まさにこの日に相応しい「天上の愛」という名を持つヘヴンリーロマンスだった。ラニの母である。

 レース後、スタンド前に戻ってきたヘヴンリーロマンスの馬上から貴賓席の両陛下に最敬礼する松永騎手の気品に満ちた立ち振る舞いは、競馬を単なるギャンブルではなく、精神性の高いスポーツ競技へと世間の見方を昇華させた瞬間でもあり、今も競馬ファンの間では語り草となっている。

 そして、翌年の2006年にムチを置いた松永幹夫という「騎手」にとって、これが最後のG1制覇だった。

 引退した翌年から調教師としてキャリアを再スタートさせた松永調教師は、いきなりレッドディザイアという名牝に巡り合う。騎手時代のG1勝ち6勝すべてが牝馬によるものだっただけに、調教師としても牝馬には人知を超えた”縁”があるようだ。

 レッドディザイアはG1こそ秋華賞の1勝に終わったが、史上最強クラスの名牝ブエナビスタのライバルとして実績以上のインパクトを残した。松永厩舎の初期を支えた馬であることに間違いなく、同時にドバイやアメリカへの海外遠征を敢行するなど、調教師・松永幹夫に極めて貴重で大きな経験、財産をもたらしたことは述べるまでもない。

 そして、偉大なる名牝レッドディザイアがターフを去った後は、ヘヴンリーロマンスの仔らが松永厩舎を支える。

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