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故郷が震災に遭い、厩舎を支えた唯一無二の存在が他界……「壮絶」の一言に尽きる松永幹夫調教師の米三冠挑戦<後編>

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 世界の頂点を目指したラニの北米クラシック挑戦は、ベルモントSの3着という結果で幕を閉じた。残念ながらクラシック制覇には至らなかったが、その可能性を示した挑戦には日本の誰もが手放しで拍手を送っている。

 貴賓席の両陛下への最敬礼から始まった松永幹夫とヘヴンリーロマンスの関係、奇跡のUAEダービー出走、故郷熊本の震災、最愛のレッドディザイアの死……今回は松永幹夫調教師がラニと歩んだ、この半年間を師の言葉を掲載しながら振り返ってみた。(前編はコチラ

 ラニ陣営の最大の目標となる「北米クラシック」参戦。

 その第一弾にして最高峰のケンタッキーダービー(G1)には出走するための条件が定められており、それがUAEダービーを始めとした前哨戦で高い成績を残すことだったが、ラニは堂々とケンタッキーダービーの出走権を得て、ダート競馬世界最高峰のクラシックへ参加が決まった。

 しかし、歓喜のUAEダービー制覇からわずか半月後の4月14日。熊本地震が発生。被災地の熊本は松永幹夫調教師の故郷だった。

「とにかく大変な状況ですので、軽々しいことは言えません」

 日本とアメリカの往復を続けながら数多くの言葉と気持ちを飲み込み、目の前に尽力した松永調教師。弟から余震が続く現地の情報を得ながら、日本馬のケンタッキーダービー出走という21年ぶりの偉業に向かって全力を注いだ。

 それからさらに半月後の5月7日。象徴といえる『マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム』が響き渡る大観衆の中で発走を迎えたケンタッキーダービー。スタートで遅れたラニは後方からの競馬となったが、最後の直線で追い上げて20頭中の9着だった。

 初のアメリカでの競馬に全米の強豪が集った中での9着。結果こそ惨敗だが、そこには日本競馬の大きな前進を示すポジティブな要素に溢れていた。特にラニが最後の直線で見せた末脚は際立っており、今後の戦いに希望を抱くには十分なパフォーマンスだった。

 本来であれば、すぐにでも日本に、熊本に帰りたかったであろう松永調教師。だが、世界一過酷な北米クラシックの第2戦プリークネスSが、もう21日に迫っていた。2日前の19日には、ラニと共にピムリコ競馬場に向かう。

 そんな一行に「レッドディザイアの訃報」が届いたのは、レース当日になってからだった。

 気持ちの整理が着くわけがないまま迎えたプリークネスS。だが、ラニはここでも進化を示す5着と結果を残し、クラシック最終戦となるベルモントS(G1)に向けて陣営に勇気と希望を与えた。

「ケンタッキーダービー、プリークネスSは、ラニにとっては少し窮屈なコースでしたが、今度のベルモントパーク競馬場はアメリカでも最も大きなコース。距離も2414mと最も長くなりますから、個人的にも最も楽しみにしていたレースです」
 
 そう武豊騎手がオフィシャルサイトに綴っているように、このベルモントSは北米クラシック挑戦が決まった時から「最大のチャンス」とされてきたレースだった。

 ラニのアメリカ競馬に対する慣れという点ではもちろん、スタートが悪いラニが最も影響を受けない2400mの長距離戦。さらに後方から競馬をする馬にとって、広いベルモントパーク競馬場はレースがしやすいと考えられていた。

 だからこそ松永調教師もベルモントSにピークが来るように、ここまで逆算してラニを調整してきた。その結果、「予定通りのいい追い切りができ、準備は整いました。3冠の中で最も良い状態でレースに臨めると思います」と胸を張って送り出すことができた。

 無論、この成果はチーム・ラニ全体の力であることは確かだ。

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