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未完の大器・アンビシャスを先行馬に変えた「天才」横山典弘騎手。大胆不敵な奇策の「原点」は宝塚記念に

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「僕が今でもジョッキーでいられるのは、ライアンがいてくれたからこそ。これだけのファンがいる馬に携われたことを誇りに思うし、感謝したい」

 今月20日、この日もやはり雨が降っていた。時折雨脚が強まる中、北海道洞爺湖町の旧メジロ牧場・レイクヴィラファームに横山典弘騎手の姿があった。

 老衰のため、今年3月17日に29歳で亡くなったメジロライアンの葬儀並びに納骨式。現役時代に主戦を務めた横山典騎手や奥平真治元調教師ら関係者を始め、数多くのファンが詰め掛け、真新しい墓石に手を合わせた。

 競走馬メジロライアンの名が全国に知れ渡ったのは1990年の春のことだった。そして、その日も雨が降っていた。

 不良馬場の中で行われた皐月賞トライアルの弥生賞(G2)。単勝1.9倍の2歳王者(旧齢3歳)アイネスフウジンを押し退けて、クラシック戦線の主役に躍り出たのが若き横山典弘とメジロライアンだった。

「ゴールの瞬間、この先が全部見えた気がしましたね。皐月賞も、ダービーも」

 騎手4年目を迎えて初めて出会ったクラシック候補。若手だった横山典騎手は当然ながら自分と、そして相棒の明るい未来に期待せずにはいられなかった。

 だが、その年のクラシックで彼らに主役の座は巡ってこなかった。

 クラシック初戦の皐月賞(G1)では後方から追い込んだものの、行き場を失う不利があって3着。続く日本ダービー(G1)では1番人気に支持されながらも、アイネスフウジンの渾身の逃げ切りに屈した。

 当時の観客動員記録を更新した東京競馬場は、アイネスフウジンの主戦・中野栄治騎手を称える『ナカノコール』に包まれた。その一方、1番人気で敗れるという、絵に描いたような”脇役”は、祝福に包まれた輝かしい光景をただ茫然と眺めているしかなかった。

 残された最後の一冠・菊花賞(G1)へ向けて、当然ながら期するものがあった。

 皐月賞馬ハクタイセイも、ダービー馬アイネスフウジンも不在。前哨戦の京都新聞杯(G2)をレコードで制していたメジロライアンは、単勝2.2倍というダービーを超える支持を集め、堂々と最後の一冠に臨んだ。だが……。

『”メジロ”でもマックイーンの方だ! 内田浩一ガッツポーズ! メジロマックイーン!兄弟制覇です! メジロマックイーンです!』

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