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IGPIパートナー塩野誠「The Critical Success Factors Vol.3」

経営者がいくら払っても欲しい、今、一番高く売れる人材とは?

文=塩野誠
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 ここまで読んだ方は「高い給料がもらえる人材の話はどうなったんだ?」と思われたかもしれませんが、昔からそうだったとも言えますが、先述のJVをつくれるような人材、つまり

「海外に“一人で”出かけていって、事業・資本提携をまとめてきてくれる社員」

というのが、企業の規模にかかわらず、圧倒的に不足しているのです。人員に余裕のある優良大企業であれば、事業、財務、法務といった機能ごとに専門家がいて、JVプロジェクトを共同して進められるかもしれませんが、そんなに余裕のある会社ばかりではないですし、最近は人員削減もされています。さまざまな知識を持つコントロールタワーとなるプロジェクト責任者は、やっぱり必要です。

中途採用のプロ社員を殺すのは、社内の暗黙知

 企業の役員と話していると「海外提携をビシバシ決めてきてくれるようなヤツ、育てられないかね」という話を聞きますが、こうした人はなかなかいないですし、一方でこうした人材が経営に与えるインパクトも大きいです。

 以前、某有名企業が「グローバルでアライアンスできる人材を求む、年俸600万円程度、MBA、弁護士資格保有者尚可」的な求人を出しており、ツイッターで「このスペックでこの年俸はないだろ」や「600万円で3人採るより、1800万円出して本当のプロを1人採るべき」といったコメントが出ていたのを記憶していますが、これは本当にその通りだと思います。そこそこの人材をたくさん採用しても仕方ありません。日本企業の競合である多国籍企業は、本物のプロフェッショナルを一本釣りして社員にしているのですから。

 プロフェッショナルサービスなら、社外の弁護士や投資銀行を使えばよいのでは? という意見もありますが、その場合でも事業の話を外部専門家に翻訳していく人間が必要です。また、よくあるのはプロを外部から採用しても、社内の暗黙知やお作法が多過ぎて、活躍できない例です。なので、社内では事業・資本提携のプロセスを形式知化して、入社したプロをすぐに本質的な問題に集中させることです。でなければ、いつまでも「この前、入社した弁護士が、社内のことわかんなくてさー」ということになってしまいます。これでは最近、市場に出ているロースクール卒人材もなかなか活用できません。

ある種の人材が経営に与えるインパクトが大き過ぎる

 現在は、日本の大手企業が、アジアの新興企業のお金を引っ張ってこないと生き残れない時代であり、「海外で事業・資本提携をまとめてきてくれる社員」が「新興国のお金持ち企業からの我が社への巨額の投資をまとめてきてくれる社員」になっているともいえます。ここでやっている仕事は、本質的にはJV設立と変わりません。

 すでに手垢にまみれた感のある「グローバル人材」ですが、実務的知識と交渉力を駆使してグローバルな提携をまとめられるような人のことなのでしょう。業績不振で将来もわからない企業の中で、一社員が海外からの投資話をまとめてきたらヒーローでしょう、取り急ぎNHKから取材依頼が来るのは確実です。

 ビジネスがわかってファイナンスや法務の知識もある語学堪能なハード・ネゴシエイター(交渉人)、どんな人かといえば、実務的には海外JV的業務を全部こなせる人。そんな人が一番高く売れます。経営へのインパクトを考えたら、2~3人分の給与を払っても安いことでしょう。

 企業も不思議な平等主義はやめて、そんな人材を育てたり採用することに、お金をたくさん使うことを考えてみてはいかがでしょうか。

※本稿は筆者個人の意見であり、所属する団体等の見解ではないことをご了承ください。

塩野誠

塩野誠

経営共創基盤 パートナー/マネージングディレクター

ゴールドマン・サックス証券を経て、評価サイト会社を起業、戦略系コンサルティング会社のベイン&カンパニーを経た後、ライブドアにてベンチャーキャピタル業務・M&Aを担当し、ライブドア証券取締役副社長に就任。現在は経営共創基盤(IGPI)にて大企業からスタートアップまで、テクノロジーセクターの事業開発、M&Aアドバイザリーに従事。著書に『プロ脳のつくり方』(ダイヤモンド社)、『リアルスタートアップ』(集英社)がある。慶応義塾大学法学部卒、ワシントン大学ロースクール法学修士。

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