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「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(12月第4週)

少子化対策もたらい回し 経済誌が予測するどん底の日本の実態

シェールガス今そこにある問題が満載の日本。(「Thinkstock」より)
毎日の仕事に忙殺されて雑誌を読む間もないビジネスマン必読! 2大週刊経済誌「週刊東洋経済」と「週刊ダイヤモンド」を比べ読み。小難しい特集を裏読みしつつツッコミを入れ、最新の経済動向をピックアップする。

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「週刊東洋経済 2012/12/29・2013/01/05新年合併号特大号」の大特集は『2013年大予測&2050年未来予測』だ。新年の予測モノは新年合併号の定番だが、今年は「エコノミスト」誌(毎日新聞社)の未来予測本『2050年の世界』が売れ行き好調だったということもあって、その流れに乗って、今回の特集では『2050年の世界と日本』を占っている。

 50年の世界人口は93億人。米国、中国、インドの3カ国が世界経済をけん引。21世紀後半はアフリカの人口が世界の35%を占めるようになり、「アフリカの世紀」を迎えるようになる。人口大国として台頭するのはナイジェリア、タンザニア、コンゴといった国々だ。

 一方の日本は、12年4月に日本経済団体連合会が公表した“グローバルJAPAN—2050年 シミュレーションと総合戦略”によると、生産性が先進国の平均並みで推移する「基本シナリオ」では、10年に世界3位のGDPが4位に転落。財政が悪化し成長率が下振れると想定した「悲観シナリオ」では、世界9位にまで落ち込むと予想。

 さらに「少子高齢化の影響が大きく、30年代以降の成長率はマイナスになる」「15年度までに消費税率を10%に引き上げても、50年の政府債務残高は対GDP比で約600%に達する」といった陰鬱な未来が描かれている。しかし、こうした未来は、私たちが現実を見据え、問題に取り組むことで、変化させることができるはずだ。

 50年までの日本の大きな問題はいくつか提示されているが、重要なのは「人口」と「エネルギー」の2点だ。

 まずは「人口」。日本の人口は、今後100年間で明治時代の水準に回帰するーー。国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の人口は04年にピークを迎えた後、30年には1億1522万人にまで減少。50年には1億人を切り、2100年には、現在の3分の1となる4771万人にまで減少することが予想されている。明治維新以降、近代化の過程で4倍に増えた人口は、ほぼ同じ年数をかけて元の水準に戻っていく。世界でもまれに見る人口の増減ぶりだ。

 しかも、人口減少は高齢化や少子化をともないつつ、やってくる。15歳から64歳までの生産年齢人口は05年の8442万人から、およそ半世紀後には5000万人を切る水準にまで減少する。半世紀後には生産年齢1.3人で1人のお年寄りを支えることになる。

 国連の長期予測でも先進国で目を引くのは、米国が依然として人口大国であり続ける点だ。特集記事ではここまでしか書かれていないが、米国のケースを見ても、日本にとっては人口減少の対策として、移民政策を採用するか、少子高齢化対策を充実させるかの、どちらかを選ぶ分水嶺に立っているのが現実だ。しかし、日本の政治はまったく旗を明らかにしない。

 たとえば、内閣府特命担当大臣(少子化対策担当) は、06年の安倍政権以来14人が就任しており、たらいまわし状態だ。首相が兼任するぐらいの重要な役職だと思うのだが、政治家たちに長期的な視点がないことの証左だろう。

 そしてもうひとつ大事なのが「エネルギー」問題だ。

●今後の世界を左右するシェールエネルギーとは?

 12年11月にIEA(国際エネルギー機関)は「世界のエネルギー見通し2012」を公表。その中心シナリオによると世界全体の1次エネルギー需要は対10年比で35年までに年率1.2%で増え、約172億・石油換算トンになる。

 需要の伸びは先進国と新興国で対照的だ。伸びの中心を占めるのは中国、インド、中東でこれらの地域で需要の伸びの6割を説明できる。これに対し、先進国であるOECD諸国の需要はほとんど変わらない。伸び率が最も高いのがイラク(年5.9%)、中国(年3.2%)、ブラジル(年2.1%)、インド(年1.9%)と続く。

 エネルギー源別に見ると、1次エネルギー消費の中で、最大のシェアを占めるのは依然として石油だ。発電の構成を見ても、石炭火力が39%、天然ガス火力が24%を占め、35年においても化石燃料がエネルギーの主役を担い続ける。再生可能エネルギーのシェアは4%から9%に高まり、原子力は11%にシェアを落とす。

 今後20年間でこれまでのエネルギー地図を塗り替えそうなのが、米国の動向だ。地下深くのシェール層に含まれているシェールガス(天然ガス)とシェールオイル(原油)の存在は約30年前から知られていたが、3年ほど前に米国のベンチャー企業がシェールガスの回収技術を確立して生産量が急増、10年には米国はシェールガス生産量で世界のトップに躍り出た。11年にはさらに生産量が倍増し、北米市場の天然ガス価格が08年の価格水準の6分の1にまで下落したほどだ。20年半ばまでに米国はサウジアラビアを抜いて世界最大の石油生産国となり、30年頃には石油の純輸出国になるという。これにともない、世界の石油供給基地だった中東のプレゼンスが低下する。

 シェールガスに関してはもうひとつの経済誌「エコノミスト 1/1・8迎春合併号 2013年世界と日本大予測」でも、『シェールガスが変える世界力学 米国の中東関与が希薄に 問われる日本のエネルギー戦略』という日本総合研究所理事長・寺島実郎氏へのインタビューが掲載されているが、この記事によれば、シェールガスの登場で、米国の中東への存在感が希薄化。一方、液化天然ガス(LNG)の輸出で大きな影響力を持っていたロシアもLNG価格の下落で戦略の見直しが迫られており、供給先の軸足を欧州から極東に移そうとしている。プーチン大統領は「ユーラシア国家」という言葉を使い、供給先を確保するのに懸命だという。

「週刊東洋経済」の今号記事『シェールガスの対日輸出実現か 輸出認可へ米国前向き 既存交渉にも好影響』によれば、米国は戦略的にシェールガスの輸出先を決めているという。米国政府は現状で、自由貿易協定(FTA)を結んでいない国に対しては、シェールガスの輸出の認可にストップをかけている。日本と米国とのFTAといえば、現在、国論を二分しているTPP(環太平洋経済連携協定)だ。この多国間FTAともいえるTPPに参加しなければ、米国からのシェールガス輸入においても後回しにされる可能性が高いのだという。

 日本は原発事故後、輸入原油価格に連動したLNG輸入価格の高騰に加え、原発の停止による代替火力発電燃料のLNG輸入量急増により、貿易赤字に転落し、電力料金値上げを強いられている。米国からのシェールガスが輸入できれば、このコストは大きく削減する。しかし、そのためには米国とのTPPの交渉を加速させる必要がある。

「人口」問題にしても「エネルギー問題」にしても、なんと米国は戦略的で、一方の日本は行き当たりばったりの選択しかしていないというガク然たる事実がわかるのだ。
(松井克明/CFP)

BusinessJournal編集部

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『週刊 東洋経済 2013年 1/5号』 地獄に落ちるわよ。 amazon_associate_logo.jpg

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