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アートディレクター佐藤可士和が語る「一流になるための“条件”」

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佐藤 アートディレクターという仕事の本質を、なかなか理解できなかったのです。学生の頃から、「デザイナーとかアートディレクターというのはアーティストのような存在で、商品に自分のイメージやアートワークを加えて表現を作る仕事」だと思っていました。「アイデアが出なくなったら」とか、「自分のコンセプトが社会のニーズとずれていたら」とか、今思えばまったくわかっていなかったのですが(笑)、不安要因がすごくたくさんあったのですね。

 そういう考えのまま入社して、5年目くらいに「ホンダ ステップワゴン」(本田技研工業)の広告キャンペーンを担当することになったのですが、その頃、自分がつくる作品の結果にすごくムラがあることに悩んでいました。つまり、前回は作品の評判も良かったし、商品も売れたけれども、今回は広告も話題にならず、クライアントもあまり喜んでいない。自分のやり方は前回も今回も同じだし、どちらかというと、自分では今回のほうがいい作品に仕上がったと自負している。なのになぜ? と、それがわからなかったのです。

ーーその答えは、どのようにして見つけたのですか?

佐藤 そんな時、尊敬するアートディレクターの大貫卓也さんと一緒に仕事をさせていただく機会があり、大貫さんの仕事ぶりを見て、自分は間違っていたと気づいたのです。

 気づいてみれば当たり前のことなのですが、自分のイメージを考えるのではなく、クライアントが求めるイメージを引き出すことが広告を作る上で最も重要なことだということがわかったのです。つまり、答えは相手の中にあり、その相手は目の前にいたわけですね。クライアントの求めるものを的確につかんで、それを実現するためのアイデアを出すのが自分の仕事だと気づいた。一見同じようなことをやっていたけれども、実は考え方がまったく違ったわけですね。

 そこで、「ステップワゴン」の仕事ですぐ実行したところ、すごくうまくいって、車は売れ、広告も評判になり、おまけにずっとほしいと思っていて手が届かなかったADC賞もとれて、いいことずくめでした。

●プレゼンは「なんでもあり」

ーーお客様の要求を的確につかむということは、いいプレゼンをするために必要だと思いますが、プレゼンで心がけていることはありますか?

佐藤 「プレゼンとはこうあるべきだ」というハウツーが、いろいろありますよね。でも、なんのためにプレゼンをするのかを考えたら、最適なやり方はその時々でさまざまではないかと思います。大事なのは、こちらの意図が伝わることでしょう。パワーポイントを使ってもこちらの意図が伝わらないのでは、使う意味はありませんね。もちろん、パワーポイントを使うことが伝えるために効果的ならば、使えばいいと思います。また、手ぶらでしゃべってもいいし、いきなり商品や看板のようなものをつくって持っていってもいい。なんでもありですよ。

 僕は、案件に合わせて毎回変えています。その案件に最もしっくりくるやり方で、すごく素直にやっています。

ーー例えば、どのようなプレゼンをされるのですか?

佐藤 プレゼンの際には、「その表現が実際にはどう見えるのか?」という点を重視します。例えば新聞15段の広告をプレゼンテーションする時に、最低でも原寸でつくってお見せするのは当たり前です。A4くらいのサイズに縮小してデザイン案をつくる方もいるようですが、仮に同じビジュアルだったとしても、リアリティーの強さは全然違ってきます。実際の広告では新聞一面の大きさで掲載されるわけですからそれと同じ条件で見せなければ判断は難しいでしょう。あとは、実際に新聞に挟んで持っていく場合もあります。そして、読者が実際に見るように、ページをめくっていって見てもらうとか。雑誌広告の場合は、雑誌に挟んでいって、「このように掲載されます」と提示したりなど。男性誌か女性誌に掲載されるかでは、イメージも全然変わってきますからね。

BusinessJournal編集部

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