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パナ・富士通半導体事業統合へ最終調整 “発案者”ルネサスは離脱で再建策に誤算も

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パナ・富士通半導体事業統合へ最終調整 “発案者”ルネサスは離脱で再建策に誤算もの画像1ルネサスエレクトロニクス本社が所在する
日本ビル(東京)(「Wikipedia」より)
 昨日2月1日、NHKなど一部メディアが、富士通とパナソニックがシステムLSI事業の統合で最終調整に入ったと報じた。デジタル家電などに使う半導体であるシステムLSIの設計開発部門を統合し、新会社を設立する方針だ。ルネサスエレクトロニクスは交渉に当初から加わっていたものの、統合から外れた。資金繰りの苦しむルネサスは、産業革新機構(以下、産革機構)が出資することで経営危機を脱するが、長年の課題であるシステムLSI事業の切り離しが頓挫すれば、再建の枠組み自体が揺らぐことになる。

 富士通とパナソニックは、新会社を設立して、富士通の主力工場である三重工場(三重県桑名市)は世界最大の受託製造(ファウンドリ)・台湾TSMCに売却する方向で交渉する。そのため、日本政策投資銀行にも出資を打診しているという。

 再編の枠組み自体は業界では自然の流れだ。日立製作所元幹部は、「半導体業界では2000年前後から、一部の製品を除き、開発に特化して生産はファウンドリに任せるのが潮流になった。ところが、自社生産にこだわった日本は完全に世界に取り残されていた」(日立製作所元幹部)。

 日本勢は自前で設備投資を続けたが、顧客である日本の家電各社が競争力を失ったことで受注が落ち込み、稼働率が低下。生産設備の過剰感が膨らんだ。統合を契機に設計開発型のビジネスモデルへの転換を図ったわけだ。

 注目すべきは、統合にルネサスが加わらなかった点。半導体業界関係者の多くが、「統合交渉自体はそもそもルネサスが働きかけた。それだけに意外」と語る。

 ルネサスは、自動車のエンジン制御などに使うマイコンでは一ケタ台後半の営業利益率をたたき出すが、同程度の売上高であるシステムLSI事業は常に赤字。同事業の主力工場の鶴岡工場(山形県鶴岡市)売却と設計部門の別会社化は、2010年のルネサス発足以来の課題だった。

 11年秋には、同じくシステムLSI事業の不振に苦しむ東芝との事業統合を模索。ただ、「ルネサスは業績悪化で統合を急いでいたが、東芝は事業部門と経営陣の考え方の違いもあり、交渉がなかなか進展しなかった」(ルネサス関係者)という。

●重なったルネサスの誤算

 焦ったルネサスは交渉相手を東芝から富士通、パナソニックに変えた。交渉が表面化したのは約1年前だが、交渉過程ではいくつかの誤算が重なった。

 2012年2月末にはエルピーダメモリが経営破たん。経産省関係者によれば、「国費を投じたエルピーダが破たんしたことで、国が批判の矢面に立たされた。3社統合では、政府系ファンドの産革機構からカネを引き出す計画があったが、状況的に無理となった。そこで1度、交渉は中断した」という。

 また、当事者の1社であるルネサスの経営悪化が、想定以上のスピードで進んだのも影響した。富士通関係者は、次のように話す。

「ルネサスが資金繰りの問題から身動きがとれなくなり、統合どころではなくなった。おまけに産革機構や自動車メーカーがルネサスに出資したことで、『自動車向けシステムLSI事業は別会社化しない』などの統合の前提が二転三転した」

●交渉離脱の主因は「工場の問題」?

 ただ、こうした問題はルネサスの交渉離脱の本質ではないという。半導体業界に詳しい証券アナリストは「工場の問題」と言い切る。

 各社のシステムLSI事業は生産設備が過剰で、固定費をいかに下げるかが課題だった。ただ、雇用の問題などから簡単には工場を閉鎖できない。ルネサスは鶴岡工場、富士通は三重工場をそれぞれ売却したいと考えて台湾TSMCと交渉を進めたが、現在も決定には至っていない。 

BusinessJournal編集部

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