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「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(3月第1週)

ソニー・アリコの保険をゴリ押し 急増する来店型保険ショップの実態

ほけんの窓口(「ほけんの窓口HP」より)
毎日の仕事に忙殺されて雑誌を読む間もないビジネスマン必読! 2大週刊経済誌「週刊東洋経済」(東洋経済新報社)と「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)の中から、今回は「週刊ダイヤモンド」の特集をピックアップし、最新の経済動向を紹介します。

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「週刊ダイヤモンド 2013/3/9号」の特集は『もう騙されない保険選び』だ。

 この時期恒例の保険特集だが、今年は例年と異なる2つのタイムリーさがある。

 ひとつは、全国で急速に増えている来店型の保険ショップ。相談は無料、複数の商品からぴったりの保険を販売するというのが売りだが、その代表的な「ほけんの窓口」に身売り説が飛び交っているためだ(記事『Part1 保険ショップにご用心』)。

 もうひとつは、生命保険会社が積み立てる「責任準備金」の計算用の利率(標準金利)の引き下げを金融庁が決めた(1・5%から1・0%へ)。責任準備金を積み増すために、4月以降は全社ほぼ保険料の値上げが決まったためだ(記事『Part2 保険料12年ぶりの激変』)。責任準備金が大きい貯蓄性商品(終身保険、養老保険、こども・学資保険、個人年金保険)ほど、値上げ圧力も高くなる。5~10%の値上げが見込まれ、また一時払い商品の中には30%超の値上げをするものも出てくるという。値上げ対象は4月以降の新規加入分だ。3月中に駆け込み加入ができるか注意が必要だ。

 読者が知っておきたいのは、来店型の保険ショップの真実だ。今や全国360店余りの拠点を構え、中堅生命保険会社を脅かすまでに拡大した「ほけんの窓口」だが、社長の資産管理団体の不動産取引をめぐる脱税の疑いで、国税庁の査察を受けた。起訴されればこれまでのような拡大にストップがかかる。このため、ヤフーや楽天への身売り説が飛び交い始めたのだ。

 戦々恐々とし始めたのは、高い手数料とさらに上乗せのインセンティブを用意して「保険の窓口」で大量販売していた保険会社だ。とくにソニー生命は「ほけんの窓口」社長の出身会社で、ソニー生命が優秀な成績を収めた代理店を表彰する会(SPC)のうち、「ほけんの窓口」関連グループ(ほけんの窓口グループ、ライフプラザパートナーズ、ライフプラザ横浜、LPHライフコンサルタント)で35.1%のシェアを占めているのだ。

 さらに、代理店に対する高額な手数料とインセンティブを武器に、希望する商品を薦めさせている企業として、メットライフアリコがある。一定の条件をクリアした代理店の店主だけが手にする裏のインセンティブ=「マッチング・ファンド」と呼ばれる退職金制度もあり、「地方の老舗代理店の店主の退職金は2億円に上った」(同社元幹部)と明かしている。

 これら保険代理店のスタッフが、ソニー生命やメットライフを推奨したくなるようなインセンティブが用意されていて、「保険を見直すと、家族は強くなる」と消費者の味方、中立・公平のように見えた来店型の保険ショップの真実が見えてくるのだ。

 これまでも、保険を売ることが目的の乗り合い代理店が中立であることは難しく、手数料が多かったり、ノルマが設定されたりしている商品を顧客に勧めている可能性があると指摘されてきたが、独立系保険コンサルタントの後藤亨氏は「(来店型保険ショップのスタッフは)1家族あたり、1カ月に5万円の保険料を支払うように提案すること――ある来店型保険ショップでは日頃からこうした指導が行なわれている」と指摘する。

 もっとも、こうした手数料で儲ける手口は来店型の保険ショップだけではない。銀行もFP(ファイナンシャルプランナー)も同様だ。「無料」で資産運用や年金関連のセミナーを開催し、相談に乗り、自らが代理店となっている保険会社の商品を「イチ推し」するビジネスモデルだ。こういったサービスが「無料」なのは保険会社から手数料が出るためだ。

 一方、おトクな保険は積極的にセールスされずに、保険会社の社員がこっそり入ってしまう。

「あんなに良い保険はいまだかつて見たことがない」と業界で言われているのが、プルデンシャル生命保険の「米国ドル建リタイアメント・インカム」という商品だ。この保険は養老保険に終身年金を組み込んだような複雑な商品で月額2万~3万円の保険料を65歳まで振り込めば、その後、終身で年金として受け取ることができる。20年後に一括して受け取る返戻率は最大で160%近くで、これほど高い返戻率は他社にないと、関係者は舌を巻き、この保険にプルデンシャル生命の実に9割の社員が加入しているといわれている。ただし、一般人には難解な設計で当然ながら為替リスクを受けるため、十分な検討が必要だ。  

 また「各社の医療保険のいいとこ取りをしたような商品。利益を出そうとすれば、ここまでの保障を付けるのは難しいのではないか」と関係者が語るのは、ライフネット生命保険の定期療養保険「じぶんへの保険プラス」だ。がんと診断されれば、一時金100万円が受け取れる。その後も、治療を継続すれば1年ごとに毎年100万円が支払われる。また、治療を目的とした1泊以上の入院費用のうち、自己負担相当分が支給されるという商品だ(記事『保険会社の社員がこっそり入る “超”お得な保険を大公開!』)。

 保険会社から勧められるがまま加入するのではなく、自分で見きわめる必要がありそうだ。
(文=松井克明/CFP)

BusinessJournal編集部

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『週刊 ダイヤモンド 2013年 3/9号』 ただより高いものはない。 amazon_associate_logo.jpg

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