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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第24回

大手新聞社長、不倫もみ消すために海外へ飛ばした愛人帰国で戦々恐々!?

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 「学生時代からいつも俺の傍には女がいた。由利菜がニューヨークに転勤して1カ月も経つと、我慢できなくなった。それで、昔の彼女に声を掛けた。そうしたら、週1回か2回は俺のマンションに来て泊まるようになったんだ」

 ドンファンにはプライドがある。いくら日照りが続いても、水商売の女には逃げ込まない。それが美学なのだ。いくら美学でも、日照り続きには耐えられない。それが村尾のようなドンファンの性である。

●昔の女

 昔の彼女というのは、日本ジャーナリズム研究所(ジャナ研)会長秘書の杉田玲子である。由利菜の前の愛人だ。上背が160cm前後、少し大柄だったが、清楚な雰囲気の美人だった。

 玲子は昭和34年(1959年)生まれで、村尾より13歳年下、由利菜の4歳年上だった。昭和56年にジャナ研に入社、大手新聞3社の若手記者とジャナ研勤務の女性職員の合コンで村尾と知り合った。

 村尾がジャナ研に出向していたのは、昭和52年春から3年間だ。玲子の入社する1年前に日亜に戻っていたが、戻った後も2年間、合コンの幹事を続けた。このため、月に1回開かれていた合コンには必ず出席、新人職員として参加した玲子を見初めたのだ。

 村尾にとって女子大を卒業したばかりの22歳の女を落とすことなど、お手の物だった。半年も経たないうち、合コンの席で出会うと、1時間もすると村尾が玲子に目配せし、用事があるとか言って別々に退席した。そして、2人でラブホテルにしけこむようになった。

 もちろん、合コンに出席している連中には「2人ができている」とわかったが、お互い、下心があって出席していることもあり、仲間内で時たま話題になるくらいだった。若い記者の不倫など、世間を騒がせるトラブルにならない限り、日常茶飯事で話題性もなかった。

 「玲子は都合のいい女で、ドンファンとしては名折れだけど、リスクはなかったな」

 村尾が90年春にロンドンに転勤するまでの約9年間、2人の関係は続いた。最初は村尾が借りた広尾の賃貸マンションを玲子が時々訪れて、密かに逢瀬を楽しむ関係だった。妻との関係がぎくしゃくし始めた頃で、村尾が妻の目を気にしていたためだった。しかし、時が経つにつれ、妻との関係は冷え切り、玲子が広尾のマンションを訪れる頻度も増えた。それでも、同棲はしなかった。玲子が都内の実家からジャナ研に通っていたからだ。

 それに、玲子の淡白な性格も関係していたのかもしれない。村尾がロンドンに旅立つ時、玲子は「東京に帰ってきた時、連絡してね」と言っただけだった。ロンドンから帰国した93年春以降も、村尾に呼ばれて2回、市谷仲之町のマンションを訪ねてきただけだった。半年後に新しい愛人、由利菜が仲之町に押しかけ、同棲生活を始めると、玲子との関係は織姫星と夏彦星のような関係になった。

 「元々、俺は一人の女とずっと一緒というのは嫌なんだ」

 由利菜との同棲生活に倦むと、村尾は玲子を呼び出した。玲子は何も言わずに、村尾と一夜をともにした。しかし、その逢瀬は由利菜に悟られるわけにはいかない。玲子は村尾のような男にとって、欲しい時だけ会えばいい、都合の良い女で、村尾は「玲子は俺にべた惚れだ」と信じ込んでいた。

●2人の女

 08年春に由利菜がニューヨーク特派員になると、焼け木杭に火が付くように、女なしには生きられない村尾のほうが燃え盛った。49歳の玲子はすでに実家から独立し、かつて村尾との逢瀬を楽しんだ広尾にマンションを購入、一人暮らしをしていた。だから、村尾に言われるままに神楽坂の高級賃貸マンションで半同棲生活を送ることになったのだ。

 「俺が玲子にもう一緒に住むのをやめようと言えば、黙って出ていくのはわかっていた。でも、そこにまたニューヨークから戻る由利菜が入れば、大騒ぎになる……」

BusinessJournal編集部

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