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東証のプロ向け株式市場、プロ不在の低調で曲がり角に…上場企業わずか2社

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東証のプロ向け株式市場、プロ不在の低調で曲がり角に…上場企業わずか2社の画像1東京証券取引所
(「Wikipedia」より)
 3月下旬、東京証券取引所傘下のプロ向け株式市場である「TOKYO PRO Market」に上場している創薬ベンチャーのメビオファームが上場廃止を申請すると発表した。5月10日に臨時株主総会を開催して上場廃止を決議し、計画通りに進めば6月7日に上場廃止となる見通し。

 東証のプロ向け市場の存在意義が、あらためて問われている。プロ向け市場は当初、東証とロンドン証券取引所の共同出資で、2009年6月に「TOKYO AIM取引所」として開設された経緯がある。取引参加者を機関投資家や一部の個人富裕層などに限定。従来の上場市場に比べて上場基準を緩くすることで、企業の上場を促進する一方、参加者をリスクが取れて市場に精通しているプロに限るというコンセプトだった。

 しかし、開設以来、上場する企業が不在の状況が続いた。上場企業の幹事証券に相当するJ-Nomad(指定アドバイザリー)が、その企業の「品質」を保証する制度となっている。一般市場への上場は取引所が審査するが、プロ向け市場では証券会社の責任が重くなることで、敬遠された面がある。

 AIMは、サントリーなど著名オーナー企業の一部株式流通市場としての役割を担うことも想定していたと見られているが、これも頓挫したとの見方が一般的。その後、12年からは東証の単独運営になり、名称を変更した。

 こうした中、メビオファームはAIMの第1号として11年7月に上場した。指定アドバイザリーはアジア系のフィリップ証券が務めている。1号案件となったメビオファームだが、当初予定していた公募増資は実施しなかった。直前に中国企業とのライセンス契約の合意があり、会社側はこの契約が公開価格決定に与える影響を考慮したとしていた。創薬には多額の資金が必要で、IPOは資金調達の好機に違いない。その意味では異例のことといえる。

●プロが買わないプロ向け市場

 上場は7月11日で、この日は900円売り気配のまま取引を終えた。2日目以降も売り注文が殺到し、値段がつかない状況が続いた。会社側では上場前年の10年8月に第3者割当増資で3億円を調達している。今となっては推測するしかないが、増資に払い込んだ投資家の売りが出ていたものと見られる。それ以外に売る投資家が考えにくいためである。上場5日目にようやく286円という初値をつけた。当日の出来高は37万株あまり。プロ向け市場なのに、そのプロが買わない状況を露呈している。その後は、商いが成立する日が珍しい状況。13年は約定したのが2営業日だけ(4月3日現在)で、12年は13日にとどまっている。最後に値がついた3月21日の価格は50円。

 今回の上場廃止についてメビオファームは、発表資料では「(事業を)発展させるために事業提携を進めるが、非上場化したうえで、事業を自由に展開するのが望ましいと考えた」旨の説明をしている。資金調達もせず、日々の流動性に乏しい中での上場廃止申請。IPOの意義が問われるが、それでも同社の場合は、1号案件としてマスコミなどに取り上げられ、知名度の向上などの効果はあったと見られる。

 メビオファームが上場廃止となれば、TOKYO PRO Marketに上場するのは産業廃棄物処理の新東京グループ、冷凍スイーツなどの五洋食品産業の2社のみとなる。こうした中、沖縄では、地元ベンチャー支援の「OKINAWA J-Adviser」が指定アドバイザーとなり、地元企業の発掘を実施するなどの動きはある。

 ただ、以前ほどの知名度を得られず、流動性に不安があるとすれば、市場活性化は難しいと見られる。企業がもう一歩成長した時点での、マザーズやジャスダック上場を目指すほうが投資家の利便性は高い。今後、プロ向け市場のあり方がさらに問われることも予想される。
(文=和島英樹/ラジオNIKKEI記者)

BusinessJournal編集部

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