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ブラック企業アナリスト・新田龍「あの企業の裏側」第7回

強制わいせつ事件で、東京地裁裁判官が被害者女性を“脅迫”疑惑?

新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト
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 これでは、まともに裁判資料を読む時間など裁判官にはない。しかも裁判官の人事評価は公務員としては特殊で、人事院ではなく最高裁判所の事務局が行っており、前述の通り、その評価基準は裁判をこなした「数」だ。資料を読むのも判決を書くのも時間がかかる裁判官の中には、裁判資料はもちろん、訴状すら読まずに裁判を担当することさえある。

 必然的に、判決を書かなくてもよい「和解」や「取り下げ」によって、無理やりにでも目の前の裁判を終わらせようと、あの手この手で圧力をかける裁判官も出てくることになる。特に、裁判所で言うところの「非公開法廷」では、脅迫めいた恫喝で和解を迫る事件が頻発しているのだ。

 そして、大手法律事務所でも一部の悪質な弁護士は、その実態を「悪用」する。

 大手法律事務所が仮に「長い主張」を書いて、法廷に出してきたとする。判決の段になって大手法律事務所を負けさせるためには、「その長い主張を全部否定する判決文を書く」必要が出てくる。裁判官にとってはそれが面倒だから、やりたがらなくなるのだ。一方、和解であれば、和解文書を作成するだけで済んでしまう。しかも和解文書を作成するのは書記官の仕事のため、裁判官としては仕事をする必要がなくなる。

 加えて、大手法律事務所は、裁判官にとっては「退官後の天下り先」になり得る。裁判官は検察などと異なり、辞めた後に弁護士となっても、なかなかやっていける人は少ない。したがって、天下り先の確保のために、大手法律事務所に有利な状況へと持っていく可能性も出てくるわけだ。

 さらに裁判官の視点で見れば、大手企業や大手法律事務所の書面なら「ある程度まともに書いてあるはずだ」という先入観を持ちやすい。それを否定するのは裁判官にとって勇気もいる。つまり、裁判官の「怠慢」と「人事評価を上げるため」に、裁判官は企図せずして恫喝訴訟に協力し、被害者を恫喝してでも和解を強要するなんてことになってしまうのだ。

●裁判官が被害者女性に和解を強制?

 実際、裁判官が当事者に「あなた、裁判に負けるよ!」「マスコミに出たらどうするんだ!?」などと言ったり、恫喝まがいのことをして和解を強要する事件は、一部の裁判官の行為とはいえ、裁判所内で聞かれるようになってきた。

 例えば、裁判所のひどいやりとりの実態が露呈した、とある性犯罪事件を紹介しよう。当該事件において、性犯罪加害者側が被害者女性に対して、誠意のかけらもない和解案を出してきた。そこで被害者側が当然ながら断ったところ、裁判官が「せっかくこの和解案をつくらせたのに、これじゃあ(加害者側に)説明ができないじゃないか!」「和解しなければ、被害者女性を本人尋問で何度も法廷に呼び出すぞ。長時間の尋問になるだろう」といったかたちで、本人尋問を利用して個人を恫喝する趣旨の発言を行ったのである。この発言の事実は裁判書面で公開されている。

 本人尋問とは、本人を法廷に呼び出して質問をすることで、証拠としての必要性を裁判所が認める限りにおいて、真実の確認のために行われるものだが、性犯罪被害については被害者や関係者の人権に配慮し、かつ弱者救済の原則を守って裁判所が判断するべきものである。

 本人尋問を悪用して被害者を恫喝し、和解を強要する発言を非公開法廷で裁判官が行うなど、司法の根幹を揺るがすほどの事態なはずなのだが……。 

 これは、裁判官による脅迫罪や人権侵害にならないのだろうか?

 実は最高裁判例により、脅迫罪は法廷での発言に対してはまず適用されない。理由は
「裁判で自由に主張、立証する事を妨げないように」という趣旨の最高裁判例なのだが、それを裁判官が悪用している実態があるのだ。

 しかし、今回のようなケースは、脅迫罪とまでは至らなくとも、人権侵害や不適切な対応には当たらないのか? 裁判所としては、この裁判官の行動が適切だと認識しているのか? 

 筆者は早速、法務省、東京地裁所長に取材依頼を送付し、見解を求めた。しかしながら、回答期限を過ぎても、なんらコメントはない状況である。

 断っておくが、裁判所の裁判官や書記官の大多数は、真面目に誠実に社会のために職務をこなしているのであり、一部の裁判官に不適切な行為があっても、それをもって裁判官全体への不信と考えるべきではない。

 しかし、一部の裁判官による不適切な行為を自浄することができなければ、さらに大きな社会問題となってしまうし、ますます恫喝訴訟が広がってしまう。この問題については、さらに取材を進め、続報をお届けする予定である。読者の方々には、ぜひとも本稿で紹介した実態を踏まえ、対応できる力をつけていただきたい。

新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

労働環境改善による企業価値向上支援、ビジネスと労務関連のこじれたトラブル解決支援、炎上予防とレピュテーション改善支援を手がける。労働問題・パワハラ・クビ・炎上トラブル解決の専門家。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。著書25冊。

Twitter:@nittaryo

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