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「初音ミク」創作活動の中から、新ビジネス発見&育成?クリプトン社の“怖い”戦略

【この記事のキーワード】,

(1)PCL規約の遵守の担保

 1円以上の価格のついた同人誌をPCLは保護せず、すべて著作権違反の対象となることが、確認されることになります。

(2)「実費程度」のあいまいさに対する牽制

「実費」というのは難しい概念です。例えば、紙やインクの値段を言うのか、印刷会社に発注した金額を言うのか、あるいは同人誌サークルの打ち上げ費用も含むのか—などと考え始めたらキリがありません。

 非常識な価格のついた「初音ミク」の同人誌は、その購入者からの報告によって、QRコードで追跡可能な状態となります。これによりクリプトン社は、実費と認められない範囲と認めた部分については、損害賠償請求が可能となります。現実にはこのような請求をしなくとも、「初音ミク」の同人誌は、常に適正な価格に市場を流通させなければならないという威嚇力を発揮することになります。

(3)優れたコンテンツの発掘

「創作ツリー」と同様に、優れたコンテンツを早い段階で発見して、クリプトン社のビジネスとして取り込む、というコンテンツビジネス戦略に因るものと考えています。

●クリプトン社のライセンス戦略のまとめ

 では、これまでの連載の内容より、クリプトン社のライセンス戦略をまとめます。

(1)「初音ミク」を提供するクリプトン社は、複雑で難しい著作権の問題を逆手に取って、

・著作権の保護と利用の利害関係を調整するライセンス(PCL)
・創作者に、大量の著作物の利用環境と新しい創作意欲を促す場(ピアプロ)

という「初音ミク」に関する著作物保護の2本の柱をつくりました。

(2)さらに、これら2本の柱を補助する「創作ツリー」「ピアプロリンク」等の新しい仕組みを考案しました。

(3)クリプトン社は、上記(1)(2)の運用を行うことにより、二次創作者の創作意欲を喚起する環境を整えつつ、同時に「初音ミク」の商品化への販促を促すビジネスモデルを確立しました。

●「同人誌’」問題解決への提言

 では、これまでの「初音ミクと著作権シリーズ」の取材や執筆を通じて、私なりに考えた「同人誌’」問題解決への提言をさせていただきたいと思います。ここで、「同人誌’」とは、「他人の著作物に依拠して創作された著作物のうち、当該他人の許諾を得ていないもの」と定義して、検証させていただきます。

 今回の連載中に、コミックマーケット(コミケ)のスタッフをしているXさん(仮名)へ、インタビューを行いました。Xさんは、「同人誌の多くは、『同人誌’』の違法状態である」との認識をされておられました。

 私は、「それなら、『同人誌’』はつくらないほうが安全なのではないですか」と尋ねました。そのような巨大なリスクを知りながら同人誌をつくることは、私から見れば、いつ「前科者」の履歴がつくかもしれない巨大なリスクに思えるからです(このインタビューの内容については、別の機会に整理します)。

 私はここで、「同人誌の活動は(『同人誌’』も含めて)保護していく必要がある」という仮説を(無理矢理)立てさせて、論じさせていただきます。

(1)結局、最後は「愛と誠」

 斜に構えて見てみると、ピアプロがうまく回っている理由は、「原作者と交渉するのが面倒、苦手」と感じる創作者が多いからである、とも解釈できます。基本的に「人と話すのが面倒」「閉じた世界で絵だけを描いていたい」という気持ちを、私はよく理解できます。私も、「金(研究費)は出してほしいが、口(研究方針)は出してほしくない)」と考える、一企業の研究員でもあるからです。

 しかし、ある世界をつくった人(例えば、著作権者になっているマンガ家)が許してくれないことは、やってはならないのです。その人は、マンガの世界をゼロからつくり上げた人なのですから、最大級の敬意を払うべきです(明示的な許諾と黙示的な許諾については、別の機会に書かせていただきます)。

 その世界を利用した作品をつくりたいのであれば、そのマンガ家に、「泣いて」「すがって」「土下座して」お願いをするのが筋です。

 それができないのであれば、やはり「同人誌’」の創作はやめるべきです。法律うんぬん以前に、二次著作の世界は、創作者と二次創作者の相思相愛で成立すると考えるからです。片思いでは駄目なのは、ストーカーが駄目なのと同じことです。そこで「創作の自由だ!」と叫ぶことは、ストーカーが「これは愛だ!」と叫ぶのと同じくらい歪(いびつ)な話だと思います。

 それでもなお、「同人誌の活動は保護していく必要がある」という仮説を貫くのであれば、以下の、2つの方向が考えられると思います。

BusinessJournal編集部

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