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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第33回

あの新聞界のドンと社長の不倫スキャンダルが、大手新聞合併の妨げに!? 

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「君の言いたいことはわかった。だがな、合併交渉というのは元々、ごく限られた者で進めるものだろう。当然、我々4人も“絶対口外しない”という意識を持っている。記者としての能力はともかく、我々4人はそういう常識はあるから、今の立場にいるんじゃないか。それなのに、“念には念を押す”と言われれば、かちんとくるぞ。そうは思わんか」

「それは先輩のおっしゃる通りです。でも、私は“小心者”なもんで、国民新聞が不気味なんですよ。国民新聞の動向に細心の注意を払うべきだ、ということも4人で共有しておきたかったんですよ」

「君の趣旨はよくわかったが、そんなに国民新聞を警戒することはないぞ。うちと日亜が合併して、断トツの日本一の部数になることは止めようがない。何かやれることでもあるかね」

「いや、どんな反撃を仕掛けてくるか、具体的には思い浮かばないんですけど……。だから、“念には念を”と言ったんです…」

 村尾はここまで言うと、口ごもった。それを見ていた北川が隣の松野を疑うように口を開いた。

「社長、国民新聞がうちと日亜さんの合併を独禁法違反だって公取委に合併差し止めを求めるようなことは心配しなくてもいいんでしょうか……」

「おい、北川、君はなにもわかっとらんな。日本の新聞発行部数は全体で5000万部くらいあるんだぞ。合併後もその4分の1程度の部数だ。独禁法で問題になるようなことはありえない」

「いや、三杯(盛泰)という、今の国民新聞社長は販売部門出身ですよね。販売出身の社長は新聞業界では珍しいので、公取委との関係も深いんじゃないか、と思ったもので……。頓珍漢なことを言ってすいません」

「北川君。僕が心配しているのは三杯社長じゃないよ。その上だよ。うちの業界のドンだよ」

 村尾が口を挟んだ。

「太郎丸(嘉一)さんのことですか」

「そうだよ。彼は我々と違って、政界はもちろん、経済界にも相当な人脈を持っているでしょ。その人脈を使って何か仕掛けてきはしないかと心配なんです。嫌がらせも含めてね。先輩、どうでしょうか?」

「なんだよ。そんなことを心配しているのか。君な、太郎丸なんて、もう過去の人だ。うちの烏山(凱忠=よしただ)相談役と似たり寄ったりさ。もう政治力なんてないぞ。いくら太郎丸ごときが蠢いても、俺がなんとかするから、心配するな。まさか君たち、俺を侮っているんじゃないだろうな」

 “バンケント社長”と陰口を叩かれていることからわかるように、松野は経済界はもちろん、政治家のパーティーにも小まめに出席しており、自信満々なのである。

「先輩、侮るなんて、滅相もありません。“引き籠り社長”なんて揶揄されている私とは違って、今や、政官財では先輩のほうが圧倒的に影響力があるのはわかっています。でも、張り子の虎っていうんでしょうか。太郎丸さんの一昔前の評判が頭にこびりついているもんですから…」

 松野に見つめられた村尾は、頭に手をやって火消しに躍起になった。すると、3人のやりとりを黙って聞いていた小山が突然、村尾に追従し始めた。

「そうです。政治力という点ではもう太郎丸さんは過去の人だし、うちの村尾も僕もこちらに松野社長がいるんで鬼に金棒だと思っています。ねえ、そうですよね」

「ふむ」

 村尾が頷くと、わが意を得たりと、小山が調子に乗った。

BusinessJournal編集部

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