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石渡嶺司「大学・キャリアのぶっちゃけ話」

就活後ろ倒し、どう対応?大学&就活否定論からの決別、抜け道活用…企業と大学への提言

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 「就活時期が変更になっても学生が勉強しない」というのも、独断と偏見による決めつけです。その通りだとしても、それは大学と学生の問題です。「大学の勉強は就活には無関係」というのも、「だからなんなんだ」という話。「就活には無関係だから、勉強なんかしないでベンチャー企業でのインターンシップなどをどんどんやるべき」と言う就活コンサルタントもいました。そこまで言うなら「大卒ではなく、高卒を採用したら」とご提案しておきます。詭弁を弄する就活コンサルタント、中には大学で講演をしたり、非常勤講師をやっている方もいるそうです。「大学の勉強は下らないし、学生も勉強しない」と主張されるということは、その方が出入りする(あるいは教えている)大学でも同じということでしょうか。

 これも後述しますが、大学の勉強をちゃんとできている学生は、そうでない学生に比べて、結果論から言えば内定を取りやすいです。勉強している分、教養も社会常識も備わっている学生が多いのです。

●大学に向けた提言

(1)下らない就活否定論から決別する

 先ほど、企業・採用担当者向けに、学業阻害否定論について厳しく非難をしました。実はこれ、大学関係者に対しても同じことが言えます。

今までは、何かにつけ、就活のせいで講義が成り立たない、などと批判することができました。しかし、後ろ倒しになると、今度はそうも言っていられません。大学には、大学が抱える問題を解決していく努力が求められるでしょう。また、大学教育を変えていけば、就職実績にもつながっていくことを理解して改革していくことも必要です。

 ベネッセ教育研究開発センター「企業人の大学新卒採用・育成に関する意識調査」(2013年)によると、「大学の講義の進め方:どう進めるのが組織に役立つか」について、採用担当者は以下のように回答しています。

 ・5~6人のグループでプロジェクトを組ませて、 プロジェクトの学習結果を報告
  ……とても役に立つ:21.2%、まあ役に立つ:53.7%

 ・周囲と円滑な意思疎通ができる姿勢の育成
  ……とても役に立つ:31.3%、まあ役に立つ:47.9%

 他にもありますが、少人数のゼミやプロジェクト学習のことです。ゼミ・プロジェクト学習をさらに充実させていけば、大学は大きく変わり、教育と就職支援、両面に貢献するのではないでしょうか。

(2)土日・平日夜に学内セミナーを開催できる体制を作る

 程度はともかく、「学業が疎外されている」という話が出るのはなぜでしょうか? こういう話をされる大学関係者は、企業のセミナーが平日の日中に開催されるせいで、学生が講義・ゼミに出席しなくなるとしています。

 確かにそういう例はあります。企業が社内で開催するセミナーについては、平日昼間はやめるよう依頼するしかありませんが、大学ができることはあります。学内セミナーを平日の夕方~夜、または土日に開催することです。それからカリキュラム編成のとき、3・4年生は平日の午後は就活で動きやすいように、単位の取りにくい講座を複数の曜日に設定しておくのも手です。

 こういう改革をすれば、学業と並立できてメリットは大きいはずです。というと、必ずと言っていいほど「夜や土日は教員も職員もいないから無理」などの反対論が出てきます。しかし、通年、夜・土日に働けと言っているのではなく、就活シーズンだけの話で、なぜ無理なのでしょうか? その期間だけでも教職員の負担が重くなるというのであれば、その期間だけ一部の教職員をフレックスタイムにして対応させる、あるいは、フレックスタイムのパート職員を採用する、などの方法があるはず。

 一方で学生がかわいそう云々と主張しておいて、いざ、我が身に面倒な話が出てくると「夜や土日に働くのは論外」「パートは人件費がかかる」など言い訳しては忌避するなんて通る話ではありません。

(3)3月広報開始以前の抜け道を多数用意する

 具体的には3月の採用広報開始以前、例えば、大学3年生10月前後から企業関係者を呼んで、学内セミナーを開催していくことです。1社のみではなく、複数社を一度に呼ぶとか、交流会形式にするのも手。対外的には、あくまでもキャリア支援のセミナーであり、企業広報ではない、とすることが重要です。

 もちろん、こういうのは抜け道との批判も出てくるでしょうけど、それを受けて流すのが度量というものです。この度量を持っている大学とそうでない大学、きれいに分かれます。ないところはとことん気にしますし、些細な批判も出ないよう大学3年3月広報開始以前は何もしないようにするでしょう。しかし、それでは学生は救われません。しかも、一部の学生は学外のセミナーで就職情報を得ようとするでしょうし、そうなると、結局は学業阻害、ということになってしまいます。それなら、多少の批判を受け流してでも、学内でやったほうがいいはず。

BusinessJournal編集部

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