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ソフトバンク、世界一への切り札と、立ちはだかるジンクス…狙う米第三勢力の結集

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ソフトバンク、世界一への切り札と、立ちはだかるジンクス…狙う米第三勢力の結集の画像1ソフトバンク本社機能が所在する
東京汐留ビルディング
「Wikipedia」より/Itoshin87)
 ソフトバンクの孫正義社長は7月23日の講演で、「日本は少子高齢化で人口が減っていくので、世界に打って出るのは必要不可欠だ」と述べた。「買収したスプリントは世界30カ国に通信の拠点があり、ネットワークが165カ国につながっている強みがある」「挑戦する者のみに未来は開かれている。これから大きく世界に羽ばたいていきたい」と決意を語った。

 この孫社長の決意表明を受けて、ソフトバンクの株価は上昇した。7月23日の東京株式市場、ソフトバンク株は続伸し、前日比330円(5%)高の6820円で引けた。時価総額は8兆1885億円。ITバブルが崩壊した2000年以降で初めて8兆円の大台に乗せた。海外事業の拡大を軸に中長期の成長への期待が一段と高まっている。米スプリント・ネクステルの買収を完了した7月11日からの上昇率は2割に達する。スプリント・ネクステルの買収について孫社長は「(米衛星放送大手・ディッシュネットワークとの買収合戦などで)すったもんだがあり、少し高くついたが、ようやく予定通りにいった」と述べた。

 スプリントの買収に伴い、ソフトバンクの連結ベースの有利子負債は6兆円を超える見通し。2012年度の3倍の6兆7300億円という数字もある。財務の悪化懸念からスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)やムーディーズ・ジャパンはソフトバンクの格付けを「投機的」とされる水準まで下げている。

 7月23日のソフトバンク株上昇の直接のきっかけは、中国のグループ企業の上場観測だ。ソフトバンクが36.7%出資している中国最大の電子商取引運営会社、アリババグループが年内の新規株式公開に向けて準備を進めているが、「香港証券取引所に新規上場を申請した模様」と現地紙が同日報じた。ソフトバンクの保有株の含み益が膨らむとの思惑から株価が上昇した。野村證券はソフトバンクの目標株価を6430円から7370円に引き上げ、7月25日には7010円と年初来の高値を更新した。それにより、東証1部の時価総額ランキングは、次のようになり、三菱UFJとソフトバンクの差が縮まっている。

 順位 企業名     時価総額(億円)
 1  トヨタ        223,430
 2  三菱UFJ       94,874
 3  ソフトバンク     81,885
 4  JT          73,900
 5  ホンダ        70,826

 ソフトバンクは、「米国の携帯電話市場に進出した外国企業で、成功を収めた例はない」というジンクスに挑む。

 ドイツテレコムは01年に米携帯大手を5兆5000億円で買収したが、現状はシェア4位で苦戦中だ。

 NTTドコモは00年前後にAT&Tワイヤレスなどに合計2兆円出資したが、1兆円以上の損失を出して撤退している。

 全米第3位のスプリントの契約数は5500万件。トップのベライゾン・ワイヤレスは1億1600万件。2位のAT&Tは1億700万件。上位2社との差はかなり大きい。ソフトバンクは初の成功者になれるのだろうか。

●今後の展開

 ソフトバンクの携帯電話事業の売上高は日米を合わせて5兆円を超え、世界第4位グループに浮上した。今後は米国で高速通信網の整備を急ぎ、2年間で160億ドル(1兆6000億円)の設備投資を行う。全米でもトップクラスの高速通信サービスのインフラを整備し、先行するベライゾン・ワイヤレス、AT&Tの2強に対抗する。

 さらに、ソフトバンクはスプリントと共同でシリコンバレーに研究開発(R&D)拠点を年内にも開設する。「インターネット技術の中心であるシリコンバレーで、新しい技術を生み出す」と孫社長は意気込みを語っている。

 新スプリントの取締役会は10人前後で構成。孫社長が会長に就任したほか、ソフトバンクの米国事業を統括するロナルド・フィッシャー取締役が副会長に就く。ダン・ヘッセ最高経営責任者(CEO)を含むスプリントの4人の取締役は新会社に残留した。

 スプリントが完全子会社にした米無線通信会社、クリアワイヤの存在が大きい。孫社長はクリアワイヤを米国市場殴り込みの切り札と考えている。というのも、クリアワイヤは最大160メガヘルツ幅の周波数を持っている。これを活用すれば、LTE網の整備を加速できる。

 もう1つは、米携帯電話4位のTモバイルUSの争奪戦だ。孫社長は2強に対抗できる「第三勢力」の結集を考えている。スプリントとTモバイルUSを合わせれば契約は9800万件となり、2強に肩を並べることができる。ソフトバンクによるTモバイルUS買収という話に発展すれば、孫社長の悲願である「世界一」に一歩近づくことになるかもしれない。

●競争激化は間違いない

 米携帯電話2位のAT&Tは7月12日、プリペイド(料金前払い)方式の格安携帯電話会社、リープ・ワイヤレス・インターナショナルを買収することで合意した。買収額は12億ドル(約1190億円)。リープが保有する周波数を獲得するとともに、低料金の携帯サービスを拡充し、スプリントなどの攻勢に備える。米携帯業界では5月に、4位のTモバイルUSAが5位のメトロPCSコミュニケーションを買収した。

 ソフトバンク傘下のスプリントは7月12日、スマートフォンの通信料を従来より3割安い新料金プランを発表した。データ通信や通話などを無制限で利用できる「使い放題サービス」を月80ドル(約8000円)と値下げした。上位2強は「使い放題の」サービスをすでに廃止している。ヘッセCEOは「スプリントの顧客は請求書で悩む必要がなくなる」と強調した。高速通信「LTE」が主戦場になることは間違いない。米連邦通信委員会(FCC)はソフトバンクの参入を承認した際、「消費者の選択と技術改革、値下げの促進」に期待を表明したが、今のところ期待通りの展開になっている。

 首位のベライゾンは「他社の発表にはコメントしない」としているが、なんらかのスプリント対抗策を講じることになる。ソフトバンク=スプリント連合は、次々と新たなサービスを打ち出すだろう。

 米国の携帯電話業界は、ソフトバンクの参入で戦国時代に突入した。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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