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ドコモファミリーの終焉? NECのスマホ撤退の衝撃に見る、国内携帯メーカーの苦境

文=blueprint
ドコモファミリーの終焉? NECのスマホ撤退の衝撃に見る、国内携帯メーカーの苦境の画像1NTTドコモ代々木ビル
「Wikipedia」より/0607crp)

 NECのスマートフォン(スマホ)事業からの撤退が、連日各メディアで報じられている。NECのスマホ事業撤退は、これまでにも7月17日付日本経済新聞電子版、7月30日付毎日新聞、同読売新聞などでも報じられていたが、同社はいずれも否定するコメントを即日公表していた。

 しかし、7月31日に東京都内で開かれた2013年4~6月期決算の記者会見で、同社取締役執行役員兼CFOの川島勇氏が撤退を正式発表。8月1日付朝日新聞によると、携帯電話事業を中国のレノボ・グループに売却する計画だったが交渉が難航し、29日に断られたために、このタイミングでの正式発表に至ったようだ。

 8月1日付日本経済新聞によると、01年度に国内携帯電話市場の27%超を占めていたNECだが、スマホへの切り替えが遅れ、米アップルのiPhoneなど、海外のスマホメーカーに押されて苦戦が続いていたという。NECにとって最大の取引先であるNTTドコモも、13年4~6月期の契約純増数(新規契約から解約を差し引いたもの)は8万7000件と、前年同期の3分の1に低迷している。

 経営コンサルタントの渡部弘毅氏は7月29日、オンラインビジネス情報誌「INSIGHT NOW!」に寄稿したコラムで「携帯電話メーカーと一体となって巨大市場を育ててきたかつての蜜月関係からドコモの戦略転換により携帯事業の大幅縮小を余議なくされるNECの姿は『ドコモファミリー』の終焉(しゅうえん)を象徴しています」とコメントしている。

 NECのスマホ事業撤退に大きく影響したと見られるのが、ドコモが今年5月に始めた「ツートップ戦略」だ。ソニーとサムスン電子の機種だけを大幅値下げしたことで、NECはじめ、他社は軒並み販売が低迷した。一方、従来型携帯電話(フィーチャーフォン)は「開発費用が安く、年数十万台の需要があれば収益が見込める」(8月1日付日本経済新聞)とし、NEC埼玉での生産を継続するという。しかし、「全てをスパッとやめたいのが本音だが、ドコモは極めて重要な取引先。こっちの意向だけでは決められない」との同社幹部のコメントが朝日新聞に掲載されている。携帯事業以外でも大きな顧客であるドコモの顔色を伺わざるを得ないのが実情のようだ。

 MSN産経ニュースは7月31日配信記事で、国内メーカーの販売低迷の要因に、日本のガラケー文化が影響していると分析している。NECやパナソニック、富士通などの日本勢はこれまで、世界から「ガラパゴス」と揶揄されていた国内市場を狙った機種やサービスを生み出してきた。しかし、スマホの競争に国境はなく、開発費がガラケーに比べて格段にかさむ。開発費の回収や捻出のためには、世界市場でのシェア確保が必要だが、「2強がシェアを拡大させるにつれ、日本勢は開発負担も重くなるという悪循環」(業界関係者)に陥っているというのだ。

 RBB TODAYの8月1日配信記事に掲載された、記者会見での川島氏と報道関係者のやりとりでも、

「具体的な数字は申し上げられないが、毎年かなりの開発費がかかっていた」
「業績的にみて昨年200億円をこえる赤字」

と、スマホ事業への投資の負担が語られている。後発で新規開発の体力もないとなれば、撤退も致し方ないということだろう。

 かねてから噂されているように、今後、ドコモからiPhoneが販売されるようなことになれば、日本の携帯電話メーカーにとって状況はさらに悪化するだろう。前出の朝日新聞の記事によると、日本勢の多くはドコモが最大の納品先であり、電機大手幹部からは「ドコモがiPhoneを扱えば、ほとんどのメーカーが撤退に追い込まれる」というコメントすら飛び出している。このままイノベーションが起きなければ、数年後には日本メーカー製の携帯電話がなくなっているかもしれない。
(文=blueprint)

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総合カルチャーサイト「Real Sound(音楽・映画・テック・ブック)」の運営や、書籍や写真集の発行、オウンドメディアの制作支援など“編集”を起点に様々な事業を行っている。
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