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ヴィトンなど高級海外ブランド値上げのワケと、M&A攻勢でトラブル続出の業界の舞台裏

文=編集部
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ヴィトンなど高級海外ブランド値上げのワケと、M&A攻勢でトラブル続出の業界の舞台裏の画像1フランス・パリのルイ・ヴィトン本店(「Wikipedia」より/Sparkx 11)
 仏LVMHモエへネシー・ルイヴィトン(以下LVMH)の日本法人、LVJグループ(東京・港)は7月1日から、日本で販売する革製品を8%値上げした。円安・ユーロ高基調が続いており、輸入コストの上昇分を価格に転嫁する。

 ルイ・ヴィトンは今年2月、「品質維持やサービス向上」を理由にアクセサリーなどを平均で12%と過去最大の値上げをしたばかり。今回対象となるのは旅行かばん、財布などの主力製品だ。エルメスも7月1日から一部商品を値上げした。

 今春、海外高級ブランドの値上げが相次いだ。仏シャネルは3月に一部宝飾品を平均で5~6%、仏カルティエも宝飾品や腕時計などを平均10%値上げした。米ティファニーは4月に宝飾品などを約10%上げた。伊ヴァレンティノ、米ハリー・ウィンストンも続いた。超円高の時には、知らん顔で値下げをしなかった高級ブランドが、円安に振れた途端、輸入コストの上昇を理由に一斉に値上げすることに批判的な声も多い。

 今回も値上げの先陣を切ったのはルイ・ヴィトンである。フランスの親会社・LVMHのベルナール・アルノー最高経営責任者(CEO)は2012年12月期決算発表の席上、「日本で販売する製品価格を2月15日に引き上げる」と宣言した。

 ユーロ相場は昨年、欧州債務危機のあおりで大幅に下落。一方、12年後半に1ドル=80円台だった円相場はアベノミクスへの期待から、年明けには一気に90円台前半まで円安が進んだ。百戦錬磨の経営者であるアルノー氏は、さらに円安・ユーロ高が進行すると判断。ここが勝負どころとみて、製品価格を一気に引き上げた。

 その読みは当たり、日本銀行の黒田東彦・新総裁の「異次元の金融緩和」で円安が進み、1ドル=100円台に突入した。アベノミクスによる株高を受けた資産効果と、14年4月の消費税率の引き上げのダブル効果で、高級ブランド品の駆け込み需要が発生した。大手百貨店では、宝飾品や腕時計などの高額品の売り場に活気が戻ってきた。ルイ・ヴィトンは先行値上げによって駆け込み需要の大きな果実を手に入れ、主力の革製品の再値上げで、さらに利益が膨らむ。

 アルノーCEOの究極の経営手法は、値上げはするが値下げは絶対にしない。値下げしないことでブランドの価値を高めることだ。セールもないし、百貨店のポイントもつかない。従業員向けの特別価格も存在しない。外商も日本ではやらない。直営店以外で商品を買うことも、事実上できない。

高級ブランドの買収で急成長したLVMH

 ルイ・ヴィトンが今日のような驚異的なブランド力を持つようになったのは、現在のCEOのアルノー氏が1989年にLVMHを買収してからだ。アルノー氏はフランス最高峰の理工系大学であるエコール・ポリテクニークの出身。日産自動車のカルロス・ゴーン氏も同校の卒業生だ。25歳で家業の建設会社を継いだ彼は、不動産開発に事業を拡大していった。

 建設・不動産とはまったく畑違いの高級ブランドに目をつけたのは、ニューヨークのタクシーの運転手が「フランス大統領の名前は知らないが、クリスチャン・ディオールなら知っている」と語ったことにインスピレーションを得たからだという。

 84年のクリスチャン・ディオールの買収が最初。89年にはスペインのコニャックメーカー、モエ・へネシーとルイ・ヴィトンが合併したLVMHを買収。以後、高級シャンペン“ドンぺリ”で有名なドン・ペリニヨンをはじめファッション、革製品、香水、腕時計、ジュエリーの一流ブランドを取り込んでいった。

 現在ではルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオール、ジバンシィ、フェンディ、セリーヌ、ベルルッティ、ダナ・キャラン、ケンゾーなど60以上のブランドを抱える。11年にはイタリアのブルガリをグループに組み込み、話題になった。13年7月には高級ニットで有名なイタリアのロロ・ピアーナ社の株式80%を20億ユーロ(約2600億円)で買収すると発表した。12年12月期の売上高は、281億ユーロ(約3兆6000億円)に上り、この業界の世界最大手と位置づけられている。

 LVMHを通じて高級ファッションブランドを次々と手中に収めたことから、アルノー氏は「ファッション界の帝王」の異名を持つ。

相次ぐM&Aでトラブルも

 当然のことながら、M&Aをめぐってトラブルも起きた。仏金融市場庁(AMF)は7月1日、LVMHに史上最高額となる800万ユーロ(約10億4100万円)の罰金を科した。高級バッグや革製品をエルメスブランドで展開している仏エルメス・インターナショナルの株式を大量に買い集めていたにもかかわらず、それを公表しなかったことが問題視された。

 13年7月2日付ウォール・ストリート・ジャーナル日本版によると、LVMHは02年にエルメスの株式を購入し始めた。仏の市場規則は、投資家が一企業の株式の5%以上を購入した際には、その事実を公表するよう義務付けている。LVMHは数年間にわたってルクセンブルクや香港にある子会社経由で、株式スワップという複雑な金融派生商品(デリバティブ)を使ってエルメス株式を間接的に買い増し、「5%ルール」をすり抜けた。10年にエルメス株式の取得を公表した時の持ち株比率は17.1%に達していた。

 エルメスの提訴を受けて経緯を審査していたAMFは、LVMHがたびたびエルメス株式を買い増していたにもかかわらず、その事実を隠していたことは情報公開義務に違反したとして罰金を科した。LVMHはパリ控訴院に提訴すると表明した。

 ひそかに株を買い占められていたエルメス側は「会社の乗っ取りだ」と猛反発。エルメスの創業者一族は11年12月、持ち株会社をつくり、議決権ベースで7割強の株式を確保。経営権を奪われないように買収の対抗策を講じた。LVMHの12年末時点のエルメス株式の持ち株比率は22.3%に高まっている。

 LVMHがエルメスを乗っ取るのか、エルメスがLVMHを撃退するのか。世界の高級ブランド品業界の関心を集めている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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