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LCC元年、各社の明暗を分けたものとは?カギは関空、日本独特の市場環境への対応…

 日本はLCCが育ちにくい環境にある。LCCの利用者は国内線利用者の3%程度。欧米の20~30%に比べても見劣りする。東南アジアや南アジアでは50%以上がLCCだ。1つの座席を1キロメートル運ぶのに必要な費用を「ユニットコスト」というが、海外のLCCは2~3円。日本の大手航空会社は10円以上かかっているが、エアアジア・ジャパンでも6円。エアアジアのフェルナンデスCEOが「コストがかかりすぎる」と不満を募らせたのはこのためだ。LCCの機体を整備したり部品を管理する企業が海外では育っているが、日本にはこうした業務を外注できる企業がない。これがコストが下がらない一因になっている。

 JTB総合研究所は昨年以降、飛行機で旅行した18歳以上の関東・関西の居住者1万5000人に、6月下旬から7月上旬にインターネットで調査し、調査対象のうち11.5%がLCCを利用したことがあると回答した。地域別に見ると関西が18.8%だったのに対して、関東の居住者は8.3%にとどまった。関西の消費者のほうが価格(飛行機代)に敏感ということだろうか。

 会社別では関西居住者のピーチ利用率が14.5%とダントツだった。ジェットスターの利用率も関西が7.9%で関東を上回った。関東の居住者でLCCの利用率が最も高かったのはジェットスターの5.5%だった。エアアジアは関東、関西とも低迷した。

【国内線のLCC利用経験率】
         関東(%)  関西(%)
全体       8.3      18.8
ピーチ      2.9      14.5
ジェットスター  5.5       7.9
エアアジア    3.1       1.7

 関東は東京、神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木、茨城の7都県、関西は大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山の6府県。複数利用のケースがあるため、3社の合計と全体の数字は一致しない。

 8月に公表されたピーチの13年3月期決算は、売上高は143億円、最終損失は12億円の赤字だった。営業損益は9億円の赤字。12年3月の就航から1年で、想定より大幅に赤字を減らした。14年3月期の黒字化を目指す。12年3月~13年3月の平均搭乗率は78%で、1年目の目標(70~75%)を上回ったのが大きかった。

 10月にはピーチ初の首都圏と結ぶ、関空-成田線を開設する。9月には関空-韓国・釜山線、沖縄-台湾・台北線を新たに設ける。新路線の増設と搭乗率のアップに引き続き注力して、黒字化を急ぐ。

●元祖・格安航空会社、スカイマークの苦戦

 LCC参入で大打撃を受けたのは「元祖・格安航空会社」のスカイマークである。

 13年4~6月期(第1四半期)決算は、売上高が前年同期比3.5%減の184億円(前年同期は191億円)、営業損益は24億円の赤字(同5600万円の黒字)、当期損益も12億円(同10億円の赤字)の赤字決算となった。円安により航空機材費が前年同期比で31.5%増加したことや、燃油費の高騰で燃料関連費が4.9%増えたことなどが収益を圧迫した。

 ピーチが拠点にしている関空発着路線は、特に厳しかった。昨年3月に関空に就航したピーチは国内線で片道3000円台からという破格の安さを売りにして、多くの利用者を獲得した。

 これに対してスカイマークは1万円に抑えた特別割引運賃を設定して対抗したが、ピーチに競り負けた。競合する関空-新千歳線では搭乗率が一時30%台に落ち込んだ。このためスカイマークは、関西路線を神戸空港に集約。3月31日で関空から撤退した。昨年3月、関空発着の羽田、新千歳、那覇の3路線を就航させたばかりだったが羽田は早々に休止。新千歳、那覇の2路線も休止。1年で関空から撤退した。

 大手でもLCCでもない「第三の道」を模索するスカイマークは、4月からLCCが就航していない仙台と福岡や新千歳を結ぶ路線に進出した。主力の羽田-福岡路線を軸に14年3月期は売上高951億円(前期比10.7%増)、営業利益58億円(同24.1%増)、当期利益33億円(同12.7%減)と黒字転換を見込んでいる。

 防戦一方のスカイマークだが、国際線への進出で反転攻勢を狙う。14年中に成田-ニューヨーク線を就航させ、空飛ぶホテルといわれる超大型機の欧州エアバス「A380」で運航を始める計画。A380の運航は国内航空会社では初となる見通し。まずニューヨークのジョン・F・ケネディ空港へ飛ぶ路線に参入。その後、英国・ロンドン線の就航を目指す。

 起死回生策である国際線の参入まで、スカイマークは大手とLCCのはざまで我慢の経営が続く。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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