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中国 賄賂大国の実態~断るとビジネス停止、常態化する巧妙な公務員の手口

文=編集部
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中国 賄賂大国の実態~断るとビジネス停止、常態化する巧妙な公務員の手口の画像1「Thinkstock」より
 去る9月11日、中国・広東省の政府幹部に、工場設備の届出違反を見逃してもらう見返りに賄賂を渡したとして、トヨタ自動車系自動車部品メーカーのフタバ産業の元専務が不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)容疑で愛知県警に逮捕された。

 だが、この賄賂の事件化が奇異に思えるほど、中国進出企業が現地政府幹部や担当官から賄賂を要求されることは、当たり前すぎる慣例だ。事件化しなければ、これは特別なシークレット情報ですらない。しかも、尖閣諸島問題が勃発して以降、賄賂の要求はますます増えつつあるという。

 日本企業のアジアなど海外でのマーケティング、ブランディングのコンサルティングを専門に行うブランド・コア社長の福留憲治氏は、中国の賄賂事情をこう説明する。

中国では、当然のごとく要求される賄賂

 「そもそも、中国では賄賂を受け取ることは、違法行為という認識はあるものの、広く行われすぎていて、政府幹部にも現場の担当官にも当然のこととして認識されている。だから、大規模なものでは外資企業の工場の誘致や設立から、小規模なものでは飲食店の開店に至るまで、事業規模に関係なく、日本企業にもあらゆる業種で賄賂の要求が蔓延しているようだ。特に尖閣諸島問題が起きてからは、日系企業への検査などが厳しくされることが多く、それに伴い、現場では実質的な賄賂要求が増えていると感じる」

 尖閣諸島問題が勃発して以降、日本からの製品輸入と現地日系工場からの製品輸出に対して、税関等での手続きや検査、監督省庁からの許認可などが、日系企業を狙い撃ちするように厳しくされたのだ。「ともかく許可が下りるまでの時間が異常に長くなった」と話す物流会社の幹部によると、その背景はこうだ。

 「中央政府から税関担当部門に向けて、日本企業の審査を厳しくするようにと文書で通達が出されている。目的は単なる日本への嫌がらせだ。その時間を正常に戻すには、実質的な賄賂を渡すしかないので、中央政府の担当官は足元を見て、賄賂の要求をそれとなくほのめかし、日本企業もむげに断りにくい状況に置かれている。もし、下手に要求を断ったら、いつまでたっても許可が下りず、ビジネスがストップしてしまう事態は目に見えている」

 あるアパレルメーカーは、中国の現地工場で製造した製品を日本に輸入しているが、「賄賂を渡さないと税関を通してもらえない」(社長)のが実態だ。この会社では、現地の中国系物流会社に通関業務を委託して税関と折衝させている。

 「きちんと税関を通して、こちらに商品が届いた時点で代金は支払う旨を伝えて、中国人同士で話をつけさせている」(同)。このアパレルメーカーの場合、賄賂という形式で
金銭を渡してはいない。だが、物流会社から同社への請求額に、実際には賄賂に該当する金額が含まれている可能性もある。

賄賂を盛り込んだ上での費用が請求されていることも

 「個々のケースについては、なんとも言えないが、一般的には日本企業側は当然ながら賄賂と認識して金銭を支払うことなどできない。そこで現地の物流会社などに、物流に伴う交渉と手続きを全て委託してしまうケースなどが多い。こうすることで、実際には物流コストの支払いの中に、実質的な賄賂の費用が含まれる手口が増えている。」(中国貿易の関係者)

 賄賂が渡されるまでのステップは、例えばこんな流れだ。日系企業が中国で、所轄の地方政府当局に許認可などの手続きに訪問すると、幹部が「こういう良い会社があるから取引を検討してみたらどうか」と物流会社や投資会社などを紹介してくる。

 その多くは幹部の親族などが経営する会社で、日系企業と取引しながら、裏では現地当局との交渉役を担っている。相場より高い金額を請求され、その過大な分が賄賂等に相当し、その取引先から政府幹部に賄賂が渡されていくケースが多くあるという。

 交渉役企業と日系企業との接点は、政府幹部からの紹介だけではない。現地法人の開設と同時に「政府幹部と豊富な人脈がある」との触れ込みで売り込んでくる会社もあれば、現地で癒着している“現地日本人コンサルタント”が紹介してくる場合もある。

 しかし、紹介された会社が、当局との交渉力を有しているとは限らない。交渉に失敗すると「いつもなら通るのだが、今回だけは難しかった」などと釈明して、報酬だけは受け取っていく。前出の福留氏は「特に日本人向けに売り込んでくる会社や、現地日本人などで『人脈がある』と売り込んでくる場合は、悪質なハッタリ屋が多いと感じる」という。

 ほかにも、恫喝まがいの賄賂で知られるのは、中国の大手テレビ局である。このテレビ局は、消費者の声を紹介する番組で、商品の性能などを紹介しているが、日系の大手企業に対して「商品へのクレームが多いので、番組で取り上げる予定だ」と連絡をした上で、番組へのスポンサー協力などを「よかったら検討してください」と“お願い”する。

 もし要求を拒否したら、どうなるのだろうか? 日系の家電メーカー販社幹部は「このテレビ局は専用のクレーマーグループを雇っていて、そのクレームがテレビで報道されてしまう」と実態を説明する。

対応に苦慮する日本企業

 こうして、賄賂への支出を強いられている日系企業にとって、その影響はいかばかりか? 賄賂は見えないコストであり、帳簿に出てこないので把握が難しい。しかし、深刻なコストの圧迫要因になっていると考えるべきだろう。

 福留氏は「日本企業は日本の法律だけでなく、欧米にもグループ会社などを持っている場合、欧米の法律でも処罰される。そうすると、アメリカの米国海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act:FCPA)やイギリスの英国反贈収賄法(UK Anti-Bribery Act:ABA)などによって、このような中国での行いも処罰されるように変化している。

 そんな中で実質的な賄賂を支払うことは、企業にとって危険が大きすぎる。リスクを根本的になくす取り組みを支援するように心がけている」と話す。

 いまや中国政府幹部や担当官への賄賂は、取引の中に仕組み化されているのである。日本本社が中国法人の賄賂を摘発しようにも立証は困難を極め、まして現地の捜査機関が、自らも懐に入れている賄賂を撲滅するために、日本側に協力することは現実的に考えられない。

 習近平政権が発足して以降、公務員の汚職摘発がたびたび報道されているが、対照的に日系企業からの賄賂なら好きなように引き出せる。政府公認のカモにされているのだ。これが中国の現実であり、日本企業は、その対策が求められている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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