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知ってるようで知らない……薬局の歩き方・クスリの選び方 第15回

間違いだらけのスキンケア~高額ニキビ洗顔料で肌荒れ、美白・シミ消し化粧品のウソ

文=へるどくたークラレ
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 まず、洗浄に関しては、先ほどの話とかぶるところもあるのですが、肌に合った洗浄剤を選ぶことが、シャンプー以上に大事です。とはいえ、大半の人がセッケンないしはグリセリンセッケンを使えば十分にきれいになり、アレルギーなどもめったに起きません。皮脂をスッパリ落とす洗顔剤はいらないのでしょうか? ニキビケア用の何千円もする洗顔料はいらないのでしょうか?

 結論からいうと、不要です。特に皮脂をサッパリ落とすような洗顔料は、シャンプーと同じくラウレス硫酸塩などの脱脂力が非常に強い洗浄成分で、10代などの若い間は、わりと効果てき面なのですが、20歳を過ぎても使うと、皮脂が落とされすぎて乾燥肌、または逆に皮脂過剰の肌を招きやすくなります。

 ニキビ用洗顔料については後述します。

 セッケンは1個100円程度の極めて普通のセッケンで十分です。どうしてもより良いものを使いたい人は、半透明のセッケンを探すとよいでしょう。半透明のセッケンはグリセリンセッケンといって、通常のセッケンの原材料が油脂であるのに対し、油脂を分解して得られる保湿成分のグリセリンをケン化してつくられたもので、洗い上がりは非常に保湿感が高く、化粧水のノリもよくなります。高いといっても数百円程度で、2~3カ月は使えますから経済的です。これでは洗顔料が売れないので、こんな記事は女性誌じゃ絶対に書けません。

 透明セッケンの中には、普通の油脂系セッケンに消泡剤的なアルコールやショ糖エステルなどを混ぜ込んで透明化されたものもあるので、グリセリンセッケンと間違えないようにしましょう。グリセリンセッケンは原材料のところに「グリセリン 水酸化Na」などと明記されています。

 次に紫外線対策です。こちらは以前の連載でお話しした通りで、季節を問わず、強すぎない対紫外線クリームを必ず朝、洗顔の後、塗るようにしましょう。

 タバコが体に悪いのは今さらいうまでもありませんが、末梢の血管をいじめるので栄養不良が随所で起きて、面皰(めんぽう)と呼ばれるニキビの準備段階のような、小さなモコっとしたものが肌にできやすくなります。これは喫煙者の女性に多く、顔が整っていてもモコモコした印象が肌に出てしまい、不健康な印象を与えてしまいます。美容を少しでも考えるのであれば、タバコは控えたほうがいいのはいうまでもありません。

 最後に保湿とシミ対策の話ですが、これは長くなるので、次回お話しします。

●ニキビ専用洗顔料は、ぼったくり

 本来ニキビというのは性ホルモンが活発な第2次性徴期、つまりは思春期にでき始め、遅くても25歳以降はあまりできなくなるものです。25歳を過ぎてからできるニキビは、まったく別の理由によるものです。

 あまり知られていませんが、これを無視した結果が、市販の高いニキビ洗顔料を使って肌荒れを起こすというパターンです。

 テレビや雑誌で、盛んにニキビ専用と大々的なコマーシャルをしている洗顔料も、特別な成分は何ひとつ入っていません。要するに、どれだけ会社の力が強かろうが、宣伝していようが、洗顔料として化粧品や医薬部外品として販売する以上、入れることができる薬品は決められており、特別高価で、ニキビに効く成分などないからです。

 ニキビ用として売られている洗顔料に配合されているものは、サリチル酸です。サリチル酸は強い殺菌作用と抗炎症作用を併せ持つ、古くても立派な成分で、ケミカルピーリングなどにも使われます。

 何千円もするニキビ洗顔料と、500円くらいのニキビ用と書かれた洗顔料の配合物は大差ありません。「そんな馬鹿な」と言われても、現実にそうなんだから仕方ないのです。

 きっと特別な配合比でもあるのでしょう、ということにしておきます。

 思春期のニキビは、成長に伴う体の変化に肌が耐えきれず、皮脂の過剰分泌になることが原因の大半です。そこにアクネ菌が増えるとさらにニキビができやすくなると悪循環が続きます。その場合に脱脂力の強い洗顔料と殺菌性と抗炎症作用のあるサリチル酸が見事にハマれば、ニキビを最小限に抑えることができます。

 サリチル酸配合の洗顔料は高価なものである必要はなく、薬局薬店などでもちゃんと売られており、わからない場合は薬剤師さんに「サリチル酸配合の洗顔料を探している」と言えばよいでしょう。

 ただし、サリチル酸は刺激性も強く、中にはサリチル酸アレルギーを持つ人もいるので、アトピー気味の人や肌がデリケートな人は、使わないほうがよいでしょう。

 対して25歳以上のニキビは、生活習慣に原因があります。体が老化してきているため、生命維持に必要とする以上の油脂、特に飽和脂肪酸を多く摂取するとニキビはできやすくなります。ストレスによって、ホルモンバランスが崩れて起きる場合もあります。また化粧品自体が肌に合っておらず、それが元でニキビの原因菌が元気になりやすい環境になっている場合などもあります。

 特に女性は、乾燥気味の肌なのにニキビができている場合が多く、これは角質機能の低下です。保湿を丹念にすることと、紫外線の刺激をできるだけ避けることが、まずは良くなるための第一歩です。

●困ったら皮膚科に行こう。今はこんな便利な薬がある

 さて、デリケートな肌の人や、生活習慣はなかなか変えられない、という人も多いでしょう。

 「それでもニキビや肌のトラブルは避けたい」ということであれば、医薬品に頼るしかありません。

 そもそも「化粧品」や「医薬部外品」というのは、薬効をうたってはいけないという法律があるとともに、強すぎる薬効があってはいけないという決まりがあります。

 つまりは、洗浄・保湿・対紫外線防御の3本柱以外の仕事は、本来してはいけないのです。それ以外の美白だの、シミ消しなどは医薬品の仕事で、コスメサロンの管轄ではなく皮膚科医の管轄です。

 そういわれると当たり前なのですが、これをいかに履き違えさせるかがCM戦線でして、原点回帰してしまうと身もふたもないのですが続けます。

 幸運なことに、ニキビに関しては相当優秀な薬が登場しています。ニキビは医学的には面皰や尋常性ざ瘡というのですが、似たような症状を示す他の病気もあり、その区別は皮膚科の専門医でも1回で当てることは難しかったりします。当然医者にも当たり外れがあるのですが、1回効かなかったからといって病院を変えるより、何回か行ってダメなら他の病院を当たるというのがよいでしょう。

 最近は、アクネ菌に強い殺菌作用のあるダラシンTゲル(グリンダマイシン)や、内服用の抗生剤を使用することで効果が出ることもあります。またニキビの発生するメカニズム自体を阻害し、ニキビを強く抑え込んできれいに治す(深いニキビにも使える)ディフェリンゲル(アダパレン)というものが使われています。

 またサリチル酸も、サリチル酸軟膏として処方してもらうこともでき、サリチル酸入りの洗顔料を使用するのではなく、洗顔後にこの軟膏をニキビにちょっと塗れば過敏症も起きにくいのです。

 いずれも皮膚科で処方を受ければ、高額なニキビ洗顔料よりはるかに安く済むので、面倒でもひどくなる前に専門家に診てもらうというのが、美肌への近道なのです。

 次回は、そうした美肌の超基本である「保湿」そして「シミ対策」について言及します。
(文=へるどくたークラレ)

【本記事は、サイエンス・ライターによる化学コラムです。薬を使用する際は、医師や薬剤師にご相談ください。】

へるどくたークラレ

へるどくたークラレ

覆面の不良科学屋。添加物を駆使した食欲の失せるカラフルな料理やら、露悪的で馬鹿げた実験を紹介していく、『アリエナイ理科ノ教科書』の著者、SFやミステリーの設定やトリックの監修も務める。こっそり大学でも教養課程で科学を教えていたりする。過去の連載をまとめた『薬局で買うべき薬、買ってはいけない薬』は好評発売中。公演やテレビ出演なども多数。無料のメールマガジンも配信している。

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