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食の定番メニューは、いかにして“定番化”したのか?焼肉、中華まん…嘘だらけの歴史

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澁川 76年に井村屋の「カレーまん」、78年に山崎製パンの「ピザまん」が発売され、それ以降、ご存じのようにさまざまな種類の中華まんが発売されることになります。井村屋の例でもそうですが、非常時や危機などに食のイノベーションが起こることが多いんです。

●食の革新による長短

–関東大震災を機に普及した、ラーメンや牛丼のようにでしょうか?

澁川 そうですね。ほかにも軍隊の食事を通して、戦後に家庭に持ち込まれた肉じゃがやカレーもそうです。非常時は人が流動化しますし、物がない中でどうしようかと悩み、試行錯誤して、新しい食文化が生まれたりするのです。

–肉を使った饅頭が、まさか未来の日本でこんなにさまざまな種類の具材になっているとは当時の人は思いも寄らないと思いますが、いろんなバリエーションが出ることの良い面とはなんでしょうか?

澁川 正直、いろんなバリエーションが増えることが食の進化なのか、退化なのか、よくわからない部分があります。黎明期には、その国のレシピを忠実に再現していますが、その後簡略化されたり、日本人の舌に馴染むように変化し、普及したり、大衆化します。この段階でバリエーションが増えてくるんです。でもそこで、黎明期への揺り戻しが起き、例えば、本場の味を再現したような高級グルメバーガーやパスタのアルデンテなどが流行します。その背景には、昔なら流通の問題で手に入りにくかったものが、今の時代では入りやすく、より本場に近い味を再現できる環境が整ったことも関係していると思います。そうやってひとつの料理がグルグルと、元のレシピを忠実に再現したり、大衆化したり、日本風にローカライズされたりと巡っている感じがあります。

–逆に悪い面はありますか?

澁川 バリエーションは増えているにもかかわらず、大衆化によって「味が均一化」することでしょうか。また、バリエーションは一時的には増えますが、そのほとんどがブームとして消費されて、あっという間に消えてしまうことが挙げられます。

–実際にお店の人に取材をしないとはいえ、今回の本では、さまざまな元祖といわれるお店で実際に食べている様子が載っていますね。

澁川 行けるところへは、だいたい行っています。自腹なので限界がありますが。

–その中で、特に印象深い料理はありますか?

澁川 どれも印象深いですが、強いて挙げればとんかつですね。とんかつは、煉瓦亭(東京・銀座)と、ぽん多本家(東京・上野)で食べたのですが、両店はまったく別物の料理という感じがしました。煉瓦亭は薄い、いわゆる洋食のカツレツで、ぽん多本家はカツレツという名前ですが、いま私たちが食べているとんかつで、味が洗練され、上品でした。

–最後に、あえてこの本を一言で表してみてください。

澁川 ほかのところで「食探偵のミステリージャンル」と言われたのを拝借して、「食探偵ノンフィクション」と。探偵のようにいろいろと調べていくので、そういう探る楽しさみたいなものを感じてもらいつつ、一つひとつの話もそうですけど、日本の食文化の流れや、食からみえる日本人の特性に思いをはせてもらうのも楽しいのではないかと思います。
(構成=本多カツヒロ)

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(プロフィール)
澁川祐子(しぶかわ・ゆうこ) 1974年神奈川県生まれ。東京都立大学人文学部卒業後、フリーのライターとして活動。食や工芸・デザインを中心に読むこと、食べること、暮らすことをテーマとしたインタビューやルポ、書評を執筆。NHKラジオ第1「すっぴん!」の「新書ナビ」にコメンテーターとして出演中。

BusinessJournal編集部

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