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「女装男子」が秘かなブーム?写真集『ゆりだんし』人気から透ける、市場拡大の可能性

文=萩原雄太
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「女装男子」が秘かなブーム?写真集『ゆりだんし』人気から透ける、市場拡大の可能性の画像1『ゆりだんし』(マイウェイ出版/立花奈央子)
 秋葉原の街を背景に、手をつなぎ合ったり、じゃれ合ったりする女の子たちの写真集。まったくと言っていいほど、違和感はないが、その表紙には「ゆりだんし」の文字が……。そう、ここに登場する9人は立派な「男性」なのだ。

 ここ数年、女装する男性が増えている。それも若者から中年まで。メンズスカートなるジャンルの専門店まである。10数年前にも、男性が女装する風潮は出てきたが、それはすぐに表舞台から消えた。しかし、いまや自分の女装姿をツイッターやフェイスブックなどのSNSやブログにアップして、堂々とそのかわいさをアピールする男性が増えている。

 そのような秘かなブームを受けてか、7月に写真集『ゆりだんし』(マイウェイ出版/立花奈央子)が発行された。これまでは、どちらかといえば「キワモノ」扱いされてきた女装だが、その受け入れられ方も、少しずつ変化の兆しが見られているようだ。だが、はたしてどのくらい需要があるのだろうか? 本書の編集を担当したマイウェイ出版編集部員・うめんこ氏に話を聞いた。

 「女装」といえば、なんとなくアブノーマルなイメージを持っている人も少なくないだろう。しかし、本書に登場する女装男子たちを見れば「本物の女性のような」もしくは「女性以上に女性的」という感想を持つのではないか。写真だけでは、ここに写っている人物が男性なのか女性なのかを区別することは難しい。

「彼らの多くはコスプレの流れをくみ、ファッションとして女装を楽しんでいます。ですから、『ゲイ』や『トランスジェンダー』といったセクシャルマイノリティではない人が多い。性の少数派が持つ暗さは、ほとんど感じられません」

 まるで女子高生のようにはしゃぎ回る彼らの姿を見ると、そこには微塵の暗さも感じられない。太陽の下で友達同士で大好きな女装をする彼らには、まるでディズニーランドにでもやってきたかのように生き生きとした明るさがある。

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「特に秋葉原界隈では、彼らはかなりの市民権を得ています。本書は、秋葉原の『男の娘カフェ&バー NEWTYPE』で働く店員さんや、趣味で女装を楽しんでいる人に協力してもらいましたが、女装の目的はお金稼ぎではなく、『好きだから』という人が圧倒的。自然体で女装を楽しんでいるんです。また、彼らはとても研究熱心で、特にメイクやポージングについては日々勉強しているから、完成度も高い。女性としては完全に負けていますね……(苦笑)」

 本物の女性が完敗を認めるほど女性的な彼ら。その心理は「女性の格好」をしたいのではなく、「女性と同じ美しい外見」を獲得したいのかもしれない。本書を見ていると、その女性らしさに性的魅力を感じてしまうことがある。普段、何気なく線引きしている男女の区別が揺らいでしまう瞬間だ。

 では、いったい、どのような層が『ゆりだんし』を読んでいるのだろうか?

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「女装に興味があるけど、やり方がわからないという男性や、コスプレ市場界隈の女性層の読者も少なからずいるみたいです。重点的に売れるのは、やはり秋葉原ですね。近年、バラエティ番組でも女装企画が多くなりました。その波を受け、一般的にも女装に対する反応が“引く”ことから“驚き”へと変わっているように感じます」

 従来型のゲイというセクシャリティを基にした女装と、また別の流れとしての、秋葉原界隈で盛り上がるファッションとしての女装。その2つが入り乱れる女装シーンを指して、うめんこ氏は「過渡期」と表現する。

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「個人的には新宿二丁目や湯島などを中心としたセクシャリティによる女装の世界も好きなんですが、今回はセクシャリティを前面に出さず、ファッションとしての女装をメインにしました。正直、同じ女装でも、従来のニューハーフもののようにアダルトの方向にしたほうが、売り上げを見込めるのは確か。けれども、それではこれまでと同じことをしているにすぎません。『生き方として女装という選択肢もある』という提案をすることで、新たな女装の可能性を提示していきたいんです」

「女装カフェ」「女装サロン」「男性用のコスメ」など、女装を取り巻くサービスは急激に増えつつある。一時期のブームに終わるのか、それとも定着して一般化へと向かうのか? うめんこ氏はシーンの流れをこう読む。

「女装男子」が秘かなブーム?写真集『ゆりだんし』人気から透ける、市場拡大の可能性の画像7合コンシェルジュ・絵音

「女装の市場規模としては、どんどん広がっていくと思います。女装男子は、男性からも女性からも親近感を得やすいので、バラエティ番組などにも出演させやすい。けれども、まだ、ファッションとして女装を楽しんでいる人たちをカテゴライズするための、明確な『言葉』がありません。『女装』というと、一般的にはどうしてもゲイ寄りのセクシャルマイノリティを思い浮かべてしまいます。そうではないキャッチーな名称が定まれば、今よりもさらに一般的に普及していくのではないでしょうか」

 日本では、昔から「稚児」や「女形」と呼ばれる女装の風習が存在している。現在は「女装男子」「女装子」「男の娘」など、さまざまな名称が乱立し、定義も曖昧な彼ら。ネーミングが統一され、わかりやすいカテゴライズがなされれば、その市場も急拡大するポテンシャルを秘めているだろう。
(文=萩原雄太)

『ゆりだんし』 BLでも百合でもない「男の娘×男の娘」カップリングが、 セクシャリティーに縛られた世の中を切り拓く amazon_associate_logo.jpg

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