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日産、業績低迷で加速するゴーン社長の孤立~コミットメント経営の弊害、社内外で不満高まる

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 また、市場関係者のひとりは「日産は必達目標を重視するあまり、利益が出にくい体質になっている」と次のように説明する。

「13年上期(4-9月期)連結ベースで、販売台数が前年同期比3%増えたが、車1台当たりの営業利益は逆に5.2%減少した。『パワー88』はシェアと売上高営業利益率を8%に引き上げる経営計画だったはずだが、『シェア追求優先、利益追求後回し』になっているようだ。ちなみに、14年3月期の同社業績予想でも売上高営業利益率は4.8%にとどまっている。ゴーン社長が『パワー88』の見直しをせず、今のコミットメント経営を続ければ、日産の業績低迷は昔のように常態化する可能性がある」

●ゴーン社長のダブルスタンダード

 今の日産にとって、コミットメント経営以上に悩ましいのがゴーン社長の「ダブルスタンダード」といえるかもしれない。

 今年2月下旬、日産と取引している部品メーカーが一堂に集まった場で、日産の13年度国内生産計画が提示され、会場がどよめいた。日産はそれまで、部品メーカーに対して「国内100万台生産体制は死守する」と、当時の志賀COOがことあるごとに言明してきたにもかかわらず、日産がその日に示した計画は95万台だったからだ。円高による国内生産コストの上昇抑制が目的だったが、部品メーカーの間には日産への不信感と、「いつ調達を減らされるかわからない」の不安感が広まった。

 このように日産では常に「合理的経営判断」を行うゴーン社長であるが、ルノーに対してはまったく対照的な“やさしい”姿を見せている。

 ゴーン社長が05年、日産兼任でルノーのトップに就任して策定した中期経営計画「コミットメント2009」では、世界販売台数をそれまでの年間250万台から330万台へ引き上げる目標が打ち出されているが、労働時間増になるとの労組の反対などで頓挫した。11年に策定し直した中計では、13年に世界販売台数を300万台とする緩い目標に修正したが、12年の販売実績は255万台で、過去10年間「250万台ペース」はほとんど変わっていない。

 こうしたゴーン社長の経営の下、欧州経済危機の影響もあってルノーの業績は低迷、12年度決算で自動車部門は2500万ユーロの営業赤字に転落した。13年1-6月期もルノーは1億ユーロの純利益を確保したが、これは日産から約8億ユーロの収入があったからと見られている。

 かつてはゴーン社長を送り込むなど日産の救世主であり、親会社同然のルノーが今では日産の重荷になっている。それにもかかわらず、「コミットメント経営を振り回して日産には厳しく、ルノーにはリストラひとつ断行できないゴーン社長のダブルスタンダードに対し、日産社内では冷めた空気が広がっている」と業界関係者は指摘する。

 そんな中での志賀COO解任劇。別の業界関係者は「近年は『不在社長』のゴーン社長をけなげに補佐し、実質的に経営を切り盛りしていた志賀さんの職務を分担することになった3名の副社長は、いずれも部下の能力を引き出せない減点主義者やゴーン社長の顔色うかがいに熱心な平目役員たち。志賀さんに代わってゴーン社長を補佐できる器ではない」と評する。

 一方、経営コンサルタントの大前研一氏は、今のゴーン社長は「外交官活動」にうつつを抜かしていると指摘し、その一端を13年11月13日付「nikkei BPnet」記事で次のように書いている。

「モロッコでは国賓級の扱いを受け、現地に部品メーカーがないのにタンジールに工場を建設している。ブラジルではすでにルノーの工場があるのに、リオデジャネイロにマーチとヴァーサのために新工場を建設している。ブラジル育ちというゴーン社長の『個人的地元恩返しではないか』と揶揄される所以である」。

 側近であった志賀COOを切り捨て、社内の求心力が低下するゴーン社長。「バリュークリエーターの資質がないゴーン社長に率いられている日産は、商品戦略面でもトヨタ・ホンダと差別化できる新車開発力や技術力はない。このままでは存在感が薄れていた元の日産に先祖返りするしかないだろう」(業界関係者)との見方もある中、志賀氏解任の代償は高くつきそうだ。

 そんなゴーン社長が経営の舵取りを担う日産は、業績的に「大手自動車メーカーの中でひとり負け」ともいわれる苦境から、脱却を果たすことができるのか、業界内の注目が集まっている。
(文=福井晋/フリーライター)

BusinessJournal編集部

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