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経常赤字で国債消化が危機説は本当か?危機になる/ならないケースの判断材料とは

文=小黒一正/法政大学教授
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 理由は単純で、財政が行き詰まってくると、日本政府が「国債の戦略的デフォルト」を実施する誘因が存在するためである。国債を日本国内の銀行などが引き受けている場合、もし日本政府が国債をデフォルトすると、銀行などは金融危機に陥り経済が混乱するため、そのような戦略を取る誘因は極めて低い。その場合、国債利回りは海外の機関投資家が国債を引き受けるよりも低い状態を維持できるのである。

 つまり、日本経済が恒常的に経常赤字に陥ることには留意が必要だが、それで国債消化がすぐに危機的な状況に陥るとは限らない。むしろ、経常赤字の中身を十分に精査する必要がある。

 なお、余談であるが、【※】式からは色々なことがわかる。例えば、日本の政府純債務(対GDP比)は約130%だが、国債利回りを2%、経済成長率を1%とすると、日本政府には少なくともGDP比1.3%まで基礎的財政収支を黒字化する能力が求められる。

 もっとも、【※】式の基礎的財政収支の限界は、増税や歳出削減の限界ほか、政治の成熟度や民主主義の理解度の影響も受ける。GDP比1.3%の基礎的財政黒字の達成は、極めて強い政治のリーダーシップが必要となり、容易に達成できるハードルではない。このため、基礎的財政収支の限界をGDP比1%と予測した場合、【※】式の不等号を成立させる国債利回りの上限は1.8%となり、それを国債利回りが超えた場合、理論的には国債消化は危機的な状況に陥る可能性があることを示唆するのである。

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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Twitter:@DeficitGamble

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