ビジネスジャーナル > 経済ニュース > 工場、深刻化する安全・衛生軽視  > 2ページ目
NEW

日本の工場が危ない?スーパーの値下げ圧力で疲弊、深刻化する安全・衛生軽視

文=松井克明/CFP

“食品衛生”は食品テロと並び、食品工場を悩ませる2大問題だ。髪の毛や虫が食材に入り込めば、意図的ではないとはいえ、クレームに直結する。だが、中には衛生面の意識が足りない食品工場も見られる。

「ある工場の従業員が手を洗おうとせず、『手袋するのになぜ手を洗わなければならないのですか?』と質問してきた」従業員もいたという。「汚れた手で手袋をつかめば当然、手袋の表面に菌が付着する。その手袋で食品を触ったらどうなるのかの意識が薄い」(専門家)

 また、従業員が作業着を自宅に持ち帰り、洗濯をしているケースも多い。

「クリーニング業者を利用するとコストが上がるからだが、これでは衛生管理もテロ対策もできない」と別の専門家も嘆く。

 食品工場は慢性的な人材不足に陥っており、従業員の質を見極められない。正社員、派遣社員、パートといった雇用形態の多様化に加えて、外国人労働者も混在し、人の出入りが激しい。

「今、工場に必要なのは監視カメラなど『ハード』の対策に加えて、従業員が食品安全の意識を持ち、不満を抱きにくい環境をつくる『ソフト』面での対策だ(略)食品工場はまさにゼロから見直す時期に直面している」と東洋経済編集部はまとめる。

●スーパーから値下げ圧力がかかる冷凍食品

 しかし、食品メーカーも苦しい事情がある。スーパーからの値下げ圧力だ。スーパーにとって冷凍食品は、希望小売価格や参考価格がなきに等しい安売り商品。広告チラシでも集客の目玉に欠かせない特売品だ。売価が安くても賞味期限が約1年と長いことから、廃棄ロスが生じにくく、粗利益率は2割強と生鮮品並みのまずまずの利益が取れるのだ。

 最近急増中のイオンの都市型スーパー「まいばすけっと」では、広い売り場面積を割いて安価な冷凍食品が展開されているほどだ。「大手スーパー側は決して認めないものの、販売不振や価格競争を背景に特売時の値引き幅をアピールしようと値下げ圧力を強めている」という(特集記事『スーパーからの値下げ圧力も 冷凍食品、なぜ投げ売りされる?』)。

 食品メーカーにも、常にコスト削減をもせざるを得ない厳しい現状があるのだ。なお「週刊東洋経済」は3月より新編集長に替わった。今回の労働者視点も入った工場の大特集を見る限り、今後も期待が持てそうだ。
(文=松井克明/CFP)

松井克明/CFP

松井克明/CFP

青森明の星短期大学 子ども福祉未来学科コミュニティ福祉専攻 准教授、行政書士・1級FP技能士/CFP

日本の工場が危ない?スーパーの値下げ圧力で疲弊、深刻化する安全・衛生軽視のページです。ビジネスジャーナルは、経済、, の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!