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セブン&アイ、過去最高益の死角?オムニ戦略と進むコンビニ依存の弊害、裏戦略とは

 同社がいかにオムニ戦略に今後の成長を託しているかは、鈴木敏文会長の次男、康弘氏が、「オムニ戦略推進の司令塔」に位置付けられたセブン&アイ・ネットメディアの社長に3月1日付で就任した人事からもうかがえる。

 その康弘氏はオムニ戦略の具体像について、4月23日付東洋経済ONLINEのインタビュー記事で次のように語っている。

「グループ内にコンビニ、スーパー、百貨店、専門店と多様な業態を持ち、店舗数は約1.7万店と世界一。こうした特徴を最大限生かしたい。具体的には百貨店で扱う銘菓が近くのコンビニでいつでも受け取れる世界を実現する」

「これまでのセブン&アイは、店にある物しか売ってこなかった。(中略)そごう・西武は24店しかないが、グループ1.7万店で百貨店の商品も扱えるということは、百貨店数が1.7万店になることとも言える」

 つまり、オムニ戦略により流通事業各社に相乗効果を起こし、これまで停滞していたコンビニ以外の流通事業の成長を促すことで、コンビニ事業依存度を下げるシナリオを描いているわけだ。

 これに関して、前出とは別の流通業界関係者は「そう簡単にシナリオ通りにはいかないだろう。消費者がネットでイトーヨーカ堂、そごう・西武などの商品を検索してセブン-イレブンで商品を受け取るというサービス自体が、結果として『セブン-イレブン客の囲い込み』にほかならず、コンビニ事業と他の流通事業との相乗効果が生まれる可能性は低いのではないか。それどころか、このサービスがセブン-イレブン客に定着すれば、コンビニ以外の店頭がショールーミングの場と化し、コンビニ以外の流通事業がますます衰退する恐れがある」と疑問視する。

●“裏の”オムニ戦略

 業界内では、同社のオムニ戦略には「表の戦略」と「裏の戦略」があるといわれている。つまり、セブン-イレブン、イトーヨーカ堂、そごう・西武など流通事業各社の商品や在庫情報をオムニシステムで統合、ネット上でワンストップサービスを実現することで、グループ内の流通事業各社の売り上げ拡大を図るというのが表の戦略。

 裏の戦略は、ニッセン買収に代表されるM&Aだ。グループ外の流通事業取り込みによりネット通販の商品アイテムを拡充し、オムニサービスの背骨を支えようとの意図だが、こちらも難航が予想されている。

 この戦略について外資系証券アナリストは、「例えばニッセン買収は、情報・物流技術や人材の活用を狙ったものだが、業績低迷が長く続いているため、ネット通販に活用できる技術はアマゾン、楽天などのネット通販大手に比べ相対的に陳腐化しているし、優秀な人材もすでに多くが流出している。よって、そんな買収によるセブンとの相乗効果は疑わしい」と指摘する。

 高級衣料品店運営のバーニーズジャパン、雑貨専門店のフランフランを運営するバルスの買収も同様だ。いずれも業績不振などで仲介会社を通じて身売りしていた会社。セブンが中核に据えるオムニ戦略の買収先としては頼りない。

 一連の買収を決めたセブンの村田紀敏社長も、「何でも買っているわけではない。相乗効果を発揮できる案件に絞っている」「今ある姿の延長ではなく、グループの化学反応を起こすのが買収の狙い」(2月20日付日本経済新聞記事より)と語っているが、業界関係者は「仮にオムニ戦略が成功したとしても、あくまでコンビニ事業周辺に限定される『セブン-イレブン経済圏』という狭い領域にとどまる可能性が高い」と指摘する。

 果たしてセブンは、オムニ戦略により過度なコンビニ事業依存から脱却できるのか。その壮大な改革の行方に、業界内の注目が集まっている。
(文=福井晋/フリーライター)

BusinessJournal編集部

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