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ゴルフ場最大手アコーディア、なぜ7割を売却?業界2位のTOBめぐる死闘を制した奇策

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●PGMとの攻防

 PGMはパチンコメーカー・平和の子会社である。平和は11年12月、PGMを米投資ファンドから500億円で買い取った。続いてPGMを使ってゴルフ場1位のアコーディアの買収に乗り出した。PGMは12年11月15日、アコーディア株のTOBを行うと発表。TOBに成功すれば、全国2400のゴルフ場の1割を保有するガリバー企業が誕生するはずだった。

 このPGMのTOBにアコーディアは猛反発し、両社は全面戦争に突入した。アコーディアは大和証券グループをフィナンシャルアドバイザーとして起用し、PGMのTOBの成立を阻止するために凄まじい情報戦を繰り広げた。

 TOBの買い付け期限の最終日である13年1月17日の正午過ぎ、米通信社のブルームバーグは、こう報じた。

「ゴルフ場運営大手のアコーディア・ゴルフが国内で保有している10のゴルフ場の売却を検討していることが17日までに明らかになった。同社は自社株買いの具体的な検討に着手、売却によって調達した資金は自社株買い付けの原資に充てる方針だ。事情に詳しい複数の関係者によれば、売却額は150億円規模に達する見通し。アコーディアは東京近郊や地方の複数のゴルフ場をパッケージにし、日本、米国、または英国の機関投資家に売却したい考えだ」

 アコーディアの株価は17日午前、8万1100円前後で推移していたが、この報道が伝わった直後に始まった同日午後の取引では一時、前日比3000円高となる8万3800円まで急伸。PGMが発表していたTOB価格1株8万1000円を大きく上回った。TOBに応募していた株主は、これを取り下げ、様子を見ていた株主も一様に応募しなかった。TOBが成立しなかった最大の理由は、この報道にあったといえる。

 これに対してPGM側は激怒。アコーディアの株主がTOBに応募するか否かなど態度を決める最終段階で株価を吊り上げる報道がなされたことが、TOBの成否に大きく影響したと判断した。「今回の公開買い付けの成立を妨害する目的で何者かが行った極めて悪質な情報操作」として、証券取引等監視委に金融商品取引法に違反する事実の有無を調査するよう求めたほどだ。

 市場関係者の間ではTOBは成立するとみられていたが、アコーディアは土俵際で体をかわしてTOBを阻止したのである。

●漁夫の利を得る旧村上ファンドのレノ

 また、両社の攻防の中にレノが割って入った。アコーディアの株式を買い占めていたレノは、(1)PGMのTOBが終了した時点でPGMと経営統合に向けた交渉の場に着くこと、(2)自社株を取得して株主に還元すること、の2点を要請する書簡をアコーディアに送り、TOB期限である13年1月17日の正午までに回答を求めた。この条件をのむのであればPGMのTOBに応募しないが、ノーならTOBに応募するとして、アコーディアののど元に刃を突きつけた格好だ。

 アコーディアの回答はイエス。それによってレノはTOBに応募せず、PGMのTOBを撃退できたが、レノに約束した「経営統合の交渉」と「自社株買い」への対応など、アコーディア側には重い課題が残った。

 そして、その課題の答えがゴルフ場切り離しという今回のスキームである。ゴルフ場の売却代で自社株買いを実施し、レノは自社株買いに応じて高値で売却ができる。その一方、ゴルフ場を切り離す焦土作戦で、PGMにはアコーディアとの経営統合を断念させることができる。一石二鳥の作戦だ。

 シナリオ通り進めば、一連のスキームを指南した大和証券グループの大手柄となるが、依然として予断を許さない状況が続く。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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