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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第77回

大新聞2社の社長不倫問題、暴露記事掲載の写真週刊誌を名誉毀損で提訴

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 すり合わせの会食では、さすがに小山に任せるわけにはいかず、村尾本人がこの辺の経緯を説明して、恐る恐る、松野ら大都サイドの了解を求めた。説得にてこずった時は、日亜側の三人がうち揃って土下座して懇願する手はずだった。しかし、杞憂だった。

「よしゃ。それでええぞ。大体、大都と日亜の対応が全く同じというのはよくない。村尾君の説明のように日亜がするなら、うちとすりあわせているように誰も思わんじゃろ。絶対、極秘にせにゃならん合併の件があるからな。君らもそう思うだろ?」

 村尾の説明が終わると、烏山が即座に反応し、会食メンバーを見回した。両脇の松野と北川が異論を挟む余地はなく、一瞬のうちに一件落着となった。余談だが、銀座の『立ち飲みバー』で飲んでいた日本ジャーナリズム研究所首席研究員の深井宣光と吉須晃人二人が店を出て目撃したのは、鳩首協議で懸案が片付き、浮かれた調子で行きつけのカラオケバーに向かう松野らの姿だったのだ。

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 裁判は、刑事はもちろん、民事も公開が原則だ。法廷に行けば傍聴ができ、書面など閲覧もできるのが建前だ。もっとも、様々な制約があり、自由自在に閲覧できるわけではないが、訴訟提起自体を秘密にし続けることはできない。裁判が始まれば、マスコミに報道されなくとも、その気になれば誰でも知ることができる。まして、被告の東亜文芸社サイドには訴状が届くのだから、「対外的に表沙汰にならないようにする」などという合意は意味がない。

 いずれにせよ、由利菜が意図的にリークしなくても、時間が経てば情報が洩れると考えるべきなのだ。当然、村尾らもその辺の事情は承知していたが、人の噂も七十五日である。由利菜個人が訴訟を起こしたことが「深層キャッチ」以外の週刊誌記者らの知るところとなっても、その頃にはほとんど関心を持たれなくなっていると踏んだのだ。

 由利菜が東京地裁に訴状を出したのは7月26日、火曜日だった。日亜が提起した3日から3週間余り経っていた。日亜だけでなく、他の新聞も翌日の朝刊に記事を載せることはなかった。加えて、どの週刊誌も話題として取り上げることはなかった。大震災の余韻さめやらぬ社会状況も幸いしたのだろうが、日亜社内でこの情報を知る者は村尾ら、ごく少数の関係者に限られ、8月に入っても噂として流れることもなかった。

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 ジャナ研首席研究員の深井は大都出身である。由利菜が個人で訴訟を起こしたことなど、知る由もなかった。6月17日、金曜日の会食のあとは、会長の太郎丸嘉一から電話がかかってくることはなかった。もちろん、日亜出身の吉須からは音沙汰なしだった。日亜社内で噂にすらなっていない情報だし、情報過疎地の座敷牢に幽閉されているのに等しい深井の耳に入るはずもなかった。

 それでも、深井も新聞は一応、目を通していた。だから、大都と日亜両社が名誉棄損訴訟を起こし、吉須の見通し通りになっているな、と思っていた。大都は原告が会社だけなのに、日亜はなぜ村尾個人も一緒に原告になっているのか、疑問を抱いたが、理由を調べようというほど、インセンティブはなかった。秋になれば、太郎丸会長が何か言ってくるに違いないから、急いで知ることもあるまい、という気持ちが強かった。

 会長からアプローチがない以上、日本の新聞業界の歴史を調べるという、暇つぶしのような深井の日常が戻るだけだった。日を追うごとに、会長の不倫暴露作戦、そして、それに対抗する大都、日亜の名誉棄損訴訟への関心も薄れていった。8月に入ると、もはや記憶の片隅に残っている程度で、「どうなっているかな」という思いが過ぎることもなくなった。そんな8月20日、土曜日の昼下がりだった。

BusinessJournal編集部

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