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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第77回

大新聞2社の社長不倫問題、暴露記事掲載の写真週刊誌を名誉毀損で提訴

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 土日など資料室に出勤しない日には、30分ほど散歩するのを“日課”にしているのだが、猛暑の時はさぼりがちだった。しかし、その日は曇天で、暑さも和らぎ、深井はさぼった分も取り戻そうと、少し遠出をした。40分ほど歩いて自宅マンション玄関に戻った時だった。珍しく携帯電話が鳴った。

 太郎丸会長含めジャナ研関係者が休日に電話してくることはまずない。「間違い電話じゃないか」と思いつつも、電話に出て、深井はびっくりした。声の主が吉須だったからだ。

「おい、休みの日に悪いな。吉須だよ。今、少し話してもいいか」
「構いませんけど、珍しいですね。何かあったんですか」

 これまで、深井の方が吉須に電話することはあっても、その反対はめったになかった。それもあって、深井は戸惑い気味に答えた。

「あのな。俺、辞めることにしたんだ。まあ、君には事前に話した方がいいかな、と思ってな」
「え、辞めるって? ジャナ研をですか」
「そうだ」
「いつですか」
「今月末さ」
「え、じゃあ、もう10日しかないじゃないですか」
「まあな。どうせ、ジャナ研も別に困りはしないさ。大体、碌な仕事をしているわけじゃないしね」
「それはそうですけど、9月末でもいいんじゃないんですか。まだ、会長にも話していないんでしょ」
「そうだけど、会長には話す必要はないさ。来週初めに事務局長に申し出るつもりだよ」
「来週、一度、会って教えてくださいよ。どうしてなのか…。辞めるのを申し出るのはそれからでいいじゃないですか」
「もう資料室に立ち寄る気はないよ。だから、多分、君と顔を合わせることもないよ」
「でも、資料室のデスクを片付ける必要はあるでしょう。それもしないのですか」
「ふむ。デスクの引き出しにカギもかかっていないし、必要なものはないから、受付の舞ちゃん(開高美舞)に頼んで、捨ててもらうつもりさ」
「それはそうかもしれませんけど、どこかで落ち合って一杯やるとかはできるじゃないですか。それも嫌なんですか」

 自宅マンションの玄関脇に立ち止まったままの、深井は小声で食い下がった。しかし、電話の向こうの吉須は頑なだった。

「君が気に入らないとか、嫌いだとかで、会わないと言うんじゃないよ。当分、新聞業界に関係する人とは会う気にならないだけなんだ。それでも、今度の(太郎丸)会長との一件で、君とはいろいろあったから、近々、手紙でなぜジャナ研を辞め、新聞業界とも縁を切ることにしたか、ちゃんと教えるよ」
「それはわかりましたけど、今、もう少し教えて下さいよ。会って話を聞くことは当分できないんでしょ。頼みますよ」

BusinessJournal編集部

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