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勝ち組の象徴・日立、なぜ不安感?巨額赤字から最高益までの軌跡、1本柱依存脱却への課題

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 新世紀を迎えると、事態はさらに悪化した。最終損益は01年度と、06年度から09年度までの合計5年間にわたって赤字に転落。それ以外の年度でも辛うじて黒字を確保している状態だった。01年度は1174億円の営業赤字に加え、人員整理をはじめとするリストラ費の計上により最終赤字は5860億円に達した。また、06年度から09年度までの4年間の連続赤字転落中、最悪だった08年度には、08年9月に発生したリーマンショックの影響で最終損益の赤字は7873億円にまで上った。

 業績がV字回復したのは10年度だった。この年度、営業利益は前年度比2.2倍の4445億円に急上昇、最終利益も2388億円の史上最高益となった。新興国向けを中心とした建設機械事業、電子機器・自動車関連向けの高機能材料事業を中心に、全事業部門が営業黒字を達成したのがV字回復要因だった。

●市場にくすぶる不安感

 以降2年間、営業利益は4000億円台を確保し、これを踏み台に冒頭の過去最高益を実現している。したがって、過去3年間の業績推移からは、同社が掲げる「2年連続過去最高益更新」という目標は決して絵空事とは思えないが、それでも市場関係者の一部に不安感があるのはなぜなのか。

 前出アナリストは「収益を支える杭が1本しかないことからくる不安だ」と、次のように説明する。

 97年度から09年度までの構造的な業績不振からV字回復した現在の業績を支えている柱が、情報・通信システム部門。13年度の同部門の売上高は1兆9549億円、営業利益は1100億円で、共に10事業部門の中で最大(日立の事業組織は7事業グループ10事業部門制)。この稼ぎの花形が、ストレージ(外部記憶装置)事業だ。企業がコンピュータ処理する膨大なデータを保存・分析するためには不可欠の機器で、近年高まっているビッグデータ活用ニーズを背景に売り上げが順調に伸びている。「少なくとも今後5年は稼げる事業」(同)といえる。

 2本目の杭として期待されているのが、社会・産業システム部門。だが、13年度の同部門の売上高は1兆4466億円、営業利益は567億円。売上高は10事業部門中2位だが、営業利益は同5位。営業利益率は3.9%で、全体の5.5%と比べると収益性も見劣りする。加えて、稼ぎ頭の昇降機事業の売り上げ拡大先が中国市場。世界需要の60%を占めているとはいえ、中国では不動産バブル崩壊の懸念が指摘されており、「昇降機事業がいつ失速しても不思議ではない」(同)状況だ。

 さらに、同部門が海外事業として注力している鉄道ビジネスも不安要素が多い。日立は今年4月16日、英国運輸省と「英国都市間高速鉄道計画」向け車両の追加受注と27年半にわたる長期保守作業の契約を完了している。既存受注分を含めた受注総額は8800億円と推定されている巨額ビジネスであり、一見大きな期待ができる。

 だが、現在建設中の英国工場で車両生産が始まるのは16年から。車両出荷開始後もトラブル処理などリスク対策を固めるために、ある程度の時間はかかる。したがって、英国向け鉄道ビジネスが安定的な収益源に育つか否かを見極めるのは17年以降になる。英国以外ではブラジル、インドなど新興国での鉄道関連受注に努力しているが、新興国のカントリーリスクは予測不能。つまり「現時点で社会・産業システム部門を2本目の柱に数えるには未知数が多い」(同)といえる。

BusinessJournal編集部

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