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“ネットベンチャーの優等生”インデックス、なぜ粉飾容疑?隆盛から凋落までの軌跡

文=編集部
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“ネットベンチャーの優等生”インデックス、なぜ粉飾容疑?隆盛から凋落までの軌跡の画像1インデックスのHPに掲載されている「再生手続廃止決定及び保全管理命令のお知らせ」

 ジャスダックに上場していたゲーム制作会社、インデックスが粉飾決算をしていたとして、東京地検特捜部は5月28日、同社会長の落合正美氏と妻で社長の落合善美氏を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で逮捕した。

 同社は2012年8月期連結決算で、実際には経常利益が8600万円で純資産がマイナス4億1100万円の債務超過だったにもかかわらず、架空の売り上げを計上するなどして経常利益が9億1700万円、純資産が3億9800万円あるとする虚偽の有価証券報告書を提出した疑いがある。関係者によると同社は、商品の取引をしていないのに帳簿上は取引が繰り返されていたように見せかける循環取引の手法で売り上げ、利益を水増ししていたといわれている。

 一連の取引は正美氏ら経営陣が主導したとされており、特捜部は組織的な粉飾決算の可能性があるとみて、証券取引等監視委員会と連携して捜査を進める。正美氏は一部メディアの取材に対し「不正はしていない」と関与を否定。監視委の聴取にも同様の説明をした模様だ。正美氏がメールで粉飾を指示していた、との報道もある。

 インデックスは11年8月期まで5期連続の赤字となり、債務超過による上場廃止を免れるために粉飾決算に手を染めたとみられている。監視委が13年6月、同社を金融商品取引法違反容疑で強制調査。同社はその直後に東京地裁に民事再生法の適用を申請し、同年9月に主力のデジタルゲーム事業などをセガサミーホールディングスグループに売却している。しかし、14年4月、東京地裁は再生手続きの廃止を決定。今後、破産手続きに移行する見込みだ。

 正美氏と善美氏は日商岩井(現・双日)の出身で、日商岩井時代には上司と部下の関係だった。01年にジャスダックに上場し、総額700億円を投じ、M&A(合併・買収)路線を進めた。最盛期にはグループ企業137社を擁したが、買収した企業の7割が海外で、欧州や中国の子会社が思ったような業績を上げられず、資金繰りに行き詰まった。一時は「ネット企業の雄」と脚光を浴びた同社会長の正美氏と社長の善美氏は、逮捕される事態に陥った。

インデックス誕生

 正美氏は1983年、日商岩井に入社し、外国為替部、新素材部、経営企画部を経て、34歳で出向先のPOVアソシエイツの副社長に就任した。この頃の正美氏は、草創期のプロサッカー・Jリーグのイベントや大物タレントのコンサートを手がけるなど時流に乗り、マスコミから「社内ベンチャーの星」と評価された。

 だが、95年末、日商岩井社内で社長人事をめぐる抗争が勃発し、半年後の96年6月、社長レースに敗れた一派は社内から一掃された。その中に正美氏を引き立てた加藤彰恒氏(本社広報室長兼POV社長)がいたことがきっかけで、正美氏は退社に追い込まれ、インデックスを起業した。

 善美氏は1965年11月、東京都に生まれ、一橋大学法学部に進学。大学時代に入部した体育会テニス部の1年先輩で、主将を務めていたのが楽天社長の三木谷浩史氏である。89年に日商岩井に入社後は、93年にPOVアソシエイツに出向し、メディア事業本部長に就いた。だが、正美氏が日商岩井を退社すると、それを追うように善美氏はインデックスに転じた。

 NTTドコモが1999年2月にサービスを開始したのに伴い、同社はiモードに提供する占いのコンテンツ「恋愛の神様」を生み出し大ヒット。これが、インデックスが苦境から脱するきっかけとなった。その功績で、00年に善美氏は副社長に就任した。

 その後、インデックスは00年8月にフジテレビジョン、テレビ朝日、三菱商事など13社を引受先とする第三者割当増資を実施し、01年にジャスダックに上場を果した。善美氏は02年12月、社長に就任し、上場企業で最年少となる女性社長となり、第4回「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー」(日本経済新聞社主催)を受賞するなどして脚光を浴びた。のちに、正美氏は先妻と離婚し07年2月、善美氏と結婚した。正美氏は持ち株会社・インデックスHDの会長兼社長、善美氏は事業子会社・インデックスの社長として、インデックス・グループの成長を牽引した。ちなみにインデックスが上場し、正美氏は多額の上場益を得たが、昼食はコンビニ弁当で済ますなど生活は質素を貫いていたことでも知られている。

積極M&Aで急成長

 そんなインデックスの社名が広く知られるようになったのは、05年のことだった。「通信と放送の融合」を掲げてライブドアがニッポン放送買収を仕掛け、楽天がTBSに経営統合を迫った。そんな両社を尻目にテレビ局と敵対せずに、フジテレビやTBSと良好な関係を築いたインデックスは「大人の企業」と高く評価された。

 その後、インデックスは国内外での積極的なM&Aで急成長を遂げた。上場した年の01年8月期決算で38億円だった連結売上高は、07年同期には1298億円と約34倍に伸び、新興市場の「勝ち組」企業と見なされていた。

 インデックスは03年に学習研究社に資本参加(出資比率4.72%)してから、M&A戦略を加速させた。3カ月に2社のペースでM&Aを続け、04年8月には欧州最大(当時)の携帯コンテンツ会社・123マルチメディア社を150億円で買収したのに続き、仏プロサッカーチーム、グルノーブルを買収。05年3月には、中国最大(当時)の携帯コンテンツ会社・スカイインフォを80億円で買収するなどM&Aは広範に海外に及んだ。

 M&Aのハイライトが、老舗映画会社・日活の買収だった。日活は93年に会社更生法を申請して倒産し、経営再建を進める中で、97年にゲーム大手ナムコが30億円出資して子会社化し、ナムコオーナーの中村雅哉氏が日活社長に就任した。当初、日活の買収に乗り出したのが有線放送のUSENである。日活を買収すれば、日活が保有する約7000本の作品をインターネットで配信できる。ライバルのネット企業に先駆けて「通信と放送の融合」の一番乗りを果たすことができるはずだとUSENは考えた。

 しかし、日活労組がUSENによる買収に絶対反対の立場をとり、USENは日活買収を断念。その後、インデックスがナムコから日活を買収することで合意したのは、USENによる日活買収が破談になってからわずか1カ月後の05年9月7日のことだ。USENによる買収に反対した日活労組は、インデックスが映画・映像事業を中心に経営再建し、雇用と労働条件を守ると約束したことから、同社による買収に賛成するとの声明を出した。

 市場の可能性にいち早く着目した落合は、音楽、アニメ、映画、ビデオ、テレビなど、あらゆるコンテンツの強化に乗り出した。それがM&A、つまりコンテンツ企業への出資であり、買収であった。

テレビ局との“全方位外交”

 05年5月、玩具業界第2位のタカラと3位のトミーが合併で合意、06年3月にタカラトミーが誕生した。この合併を仕掛けたのはインデックスで、タカラトミーにインデックスは22%を出資して筆頭株主となり、総投資額は137億円に上った。キャラクターの配信などコンテンツビジネスの強化が狙いだった。さらにインデックスは05年6月、フジテレビ、TBS、日本テレビ、テレビ朝日の在京キー局4社などを引受先とする205億円の第三者割当増資を実施した。テレビ局との“全方位外交”によって、各テレビ局が保有する優良コンテンツを有料で配信し、収益を確保するという戦略だ。キー局各社がインデックスを選んだ理由は、経営陣を大手企業出身者が固めていることによる安心感があったからだ。

 こうしてネット企業の「通信と放送の融合」をめぐる覇権争いで、頭一つ抜け出たのがインデックスだった。グループ企業も80社を超えたが、この頃をピークとして成長が鈍化。その後、他社による携帯電話向けコンテンツ事業への参入が相次ぎ、同社は06年~11年8月期まで5期連続の赤字を計上。実質的な債務超過に陥り、上場廃止を免れるために決算を粉飾していたとみられている。

 かつて「ネット・ベンチャーの優等生」と呼ばれたインデックスの凋落は、ネット業界の熾烈な競争を物語っているといえよう。
(文=編集部)

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